チベット高原は空に近く大気が澄んでいるので、星の数がハンパなく多くて星座のバリエーションも豊富です。
そこから「12星座」という物語が生まれ、これは輪廻転生による成長物語として信仰の域にまで高められました。
人の一生は、果てしない星々の世界に比べると余りにチッポケですが、輪廻の信仰を持つコトで人は星々と自分の存在を近づけられました。
そして、天には特別に輝く星座がある様に、地上にも特別な転生があると信じられる様になり、トゥルク(転生活仏)制度が誕生しました。
トゥルクは地上で苦しむ人々を救済する為に天から遣わされた存在とされ、実際に地上を統治して人々に「救い」をもたらして来ました。
「Say - ヒマラヤの女王」では、このトゥルク制度を生んだ最初の「初転法輪」を描くのがテーマです。
この仏教用語はブッタの生涯に用いられるのが一般的ですが、彼自身が前世はヒマラヤで衆生を救済する修行を積んで来たと語っており、その際に女性として生きたコトもあったと告白しています。
ヒンドゥー教でも神々は地上に転生すると信じられ、それは「マハーバーラタ(偉大なるインド)」という紀元前の聖なる物語を生んでいます。
これは「知の神」ガネーシャによって書かれたとされますが、「聖書」と同じく実際には人の手で書かれており(私は一応大学で印度哲学を専攻しました)、その中で今でも多くの人に読み継がれているギーター(神の詩)を次回紹介します。
今回は「サラスワティーの肖像」というコトで締めますと、この「教育の女神」の姿は、無数の星々が観られるチベット高原の夜空をひたすら眺めると、信仰心を持つ人々の目に浮かび上がって来ます。