雲上楼閣 砂造宮殿

気ままに自分勝手なブログ。徒然に書いたり、暇潰してみたり、創作してみたり・・・

TREE1

2014-05-03 21:23:10 | 東方神起とか
昔むかし、はるかな昔、一対の美しく気まぐれな精霊がいた。
精霊は、一枚の葉の上に世界を作ることにした。
木を創り、己の分身を創り、家を創った。
それから道を創り、街を創った。
太陽と月と星を創り、朝と昼と夜を創った。
そうして街は都市になった。
そうして気まぐれな精霊は創造主になり、それぞれ気に入った一本の樹に住み着いた。
かたや都市の中で人と街を見守るように。かたや緑豊かな地で、風と戯れ、はしゃぐ声を楽しむように。

そして、幾年も時間が流れ、この地を創ったことさえ忘れていたのだった。

都市に住む創造主の木は、街の中心に立っていた。
ある日、創造主は己の木になる紅い実を欲しがる子供にあった。
彼女の背では紅い実に足りなくて腕を精一杯伸ばして、跳び跳ねた。それでも届かないけれど、彼女は何度も何度も挑んでいた。
そばで見守る老人は優しい笑みを浮かべていた。
創造主はそれを見ていた。
諦めない子供と、彼女を信頼し、根気よく待つ老人に、少しだけ褒美をやろうと思った。
創造主はその長い指で、求める紅い実を落としてやったのだった。
子供は歓喜の声とともに老人に駆け寄った。老人はその腕に抱くと、より一層その年経た顔の皺を深くしたのだった。
その平和な風景に、創造主も笑みを深くするのだった。

野原に住まう創造主の周りには、自然のなかで暮らす人々が集い、笑いが絶えなかった。
集うなかに、4人の家族がいた。
年長の子が、創造主の樹に駆け寄った。
樹の一番太い枝には、一つだけブランコが作られていた。
年長の子は楽しそうに、そのブランコに腰かけた。
けれど、ブランコは揺れなかった。
彼女の背では、少し足りなかったのだ。
それを見た創造主は、子供の背中を押してみた。
創造主の見えない手に背中を押された子が乗ったブランコは、優しく揺れた。
それを見た子供の親が笑い、その子が笑うと、創造主も優しく微笑んだのだった。


突然だった。
昏い葉を纏った風が吹き、街に野原に、人にも創造主にも吹き付けた。
湿った気味の悪い風は雲を呼び、雷鳴を轟かせ、野山に街に人々に、恐怖を感じさせたのだった。