筑紫文化財研究所

筑紫における歴史的文化の探求と漫遊

2022ヤマ褒め 16番山笠 ソラリア

2022-07-10 12:03:32 | 山笠

16番山笠 ソラリア 表 
「剣撃大蛇素戔嗚尊誉」
人形師 置鮎正弘、下川貴士

大蛇の迫力がお見事。
絵画と同様に山笠ではオロチは龍頭で表現されてきた。
置鮎流の江戸から近代の生き人形風のガラスの玉眼を使用した顔が白眉。
クシナダヒメはやや男っぽく歌舞伎風に仕上げる。
山小屋の制約がないため大きく飾られる。
コロナ退治のイメージと重なりタイムリー。


16番山笠 ソラリア 見送り
「一飄風造御笠森」 
人形師 小島慎二

日本書紀の神功皇后譚「御笠の森」は山笠初の標題。
風に飛ばされた笠を中心に人形が配置され
最上部に御笠の森が置かれる。
屋形と人形の台が大振りで余白が少なくなっている。
森には笠が引っ掛かり、異時同図のつくりとなる。

博多祇園山笠ことしも洒落で櫛田入り

2021-07-15 05:56:47 | 山笠

コロナ禍自粛で舁きヤマが昨年に続き自粛された中、
今年も7月15日早暁の4:59に西流有志が騎馬戦スタイルで櫛田入りしました。
直前に能舞台が開けられ、阿部宮司が洒落で登場し清道に自然参集した約200名の山笠関係者は大盛り上がり。
太鼓は恵比須流の有志の方が叩かれたようです。
明日への活力を頂きました。

関連ニュース映像(FBS福岡放送さん)
https://www.youtube.com/watch?v=_WDxmuuN6EM

博多の山笠の装飾_岩

2021-07-12 21:10:09 | 山笠

ヤマの人形の背景には「波」「波花(華)」「岩瘤」「道」「雑木」「牡丹」などが用いられます。
形状や表現は人形師によって様々ですが、元は日本画の岩の立体表現です。


「岩こぶ」などは竹ひごを曲げて組み合わせた骨に紙を幾重か重ねて貼り、彩色されています。
表面が紙で芯が竹のため、飾るときにヤマ大工が人形師の指示を受け
収まりの良い位置で針金を裏から通して固定できるものです。
重ねて隙間なく飾る必要があるため、根元が団扇のような形になっています。


人形師;小嶋慎二氏

人形師;置鮎正弘氏

尖頭に金紙を用いるのが伝統的な手法で、沈んだ背景の中に煌びやかさを演出します。

人形師;白水英章氏


人形師;田中勇氏


人形師;中村信喬氏

彩色や表現は人形師それぞれで異なり、ヤマの味や風格の要素となっています。
「ヤマほめ」(様々な山笠の見学)の際に改めてご覧になってはいかがでしょう。



びっくりしてがっかりした信喬さんの山笠

2021-07-11 08:06:32 | 山笠

山笠の飾りに変化が見えています。
今年びっくりしたのは中村信喬さんの天神一丁目の山笠です。


飾り山の装飾である「岩こぶ」がデジタルで作画され、
厚紙に印刷された立体組み立て式のパーツとなり、
これもまた印刷された「川」「波花」「雑木」「雲」「道」
と組み合わせたモジュールとして演示されていました。
2012年頃から天神一丁目や中州、櫛田神社の飾り山で、
砕け散る波頭を表現した「波花」に印刷もののような
同じ意匠のパーツがあり気になていましたが
今年ついに背景がほぼ印刷ものになってしましまいた。
造形の揺らぎがなく手仕事の良さが全否定された感があり、がっかりしました。
ヤマに違和感を感じた方は少なくないと思います。
真摯な手仕事にこそ神が宿るのではないでしょうか?
デジタル出力でよいなら人形師でなくイベント会社でも安価で請け負えると言われそうです。

コロナでなくてもクライアントさん達は売り上げが減る中で山笠に出資をできなくなりつつあり
協賛を取りやめる判断をしたり、出資を減らしたりする中で今年のヤマが成り立っています。
今年、上川端ではデジタル3Dのヤマが演示され注目されています。
新しい流れは必要ですが、手仕事を捨てた先の
人形師(伝統工芸士)の立場が危うくなることを強く心配します。
博多のヤマ好きの間で大いに論議してほしいものです。


2011年の天神一丁目「尊氏多々良浜誉」中村信喬作
まだ迫力と立体感のあった頃の信喬さんのヤマの飾り