筑紫文化財研究所

筑紫における歴史的文化の探求と漫遊

破損した三好系人形の修復5

2011-05-29 22:12:07 | 人形

接合は最終的に上下であわせることとして
表面を優先して仕上げていきます。


先にセメダインでつないだ個所も
本体に継いだ裏側から不織布の補強材を充て
角度を調整しながら組み上げていきます。


石膏が乾かないうちに仮に上下で合わせてみます。
かならず歪みが来ていて合わないようになっています。
(この製品は焼成されていないために、割れて砕けた破片が
時間が経つうちに湿気を吸ってしまい、
それぞれの破片一つ一つの持つ曲面が広がって
平面化してしまって接合すると大きく歪みがありました。)

石膏が柔らかいうちに接合できる形状に修正し、
半乾きの状態で上下を接合します。

破損した三好系人形の修復4

2011-05-25 21:12:33 | 人形
何よりの問題はクラックの破面の土が
砕けてしまっている個所の接合です。
バインダーという樹脂を染み込ませて
土自体を固化させる方法も考えましたが、
彩色の色に影響が及ぶため別の方法を模索し、

不織布を接合剤として用いることにしました。
不織布がない場合は、包帯やガーゼを重ねる方法もあります。
布を幅1cmほどのテープ状にして切り、
使用する部位に合わせて両端をカットします。



きめの細かな歯科用石膏をラバーボウルに
やや弛めに溶かして撹拌し不織布を浸します。


そうして接合すべき個所に乗せて
その周辺にゆるい石膏をパテや筆で盛りつけます。
石膏は見る間に固化しますので手早さと注意が必要です。
たくさん作り置きせず、作業単位に合わせて少量を溶きます。


この時に接合する角度に注意します。
支持するベースを作っておき
その上に接合すべき破片を乗せて作業することもあります。

(つづく)

破損した三好系人形の修復3

2011-05-25 06:23:44 | 人形



まず最初に、破損して持ちこまれた破片を
ジグソーパズルのようにもとの位置関係を
裏表の各部位ごとに復元します。
そしてセメダインを使って接合します。

裏面を見てわかったのは、この人形は
一部分が以前にも破損しており
その際に紙粘土を水で溶いたものを使い
接合が試みられていたようです。
この三次系人形は焼いていない生の
土に紙などの繊維を混ぜた素材のため
染み込む接着剤は不適です。


接合はセメダインがある程度固化するまで
洗濯バサミなどの添え具で固定します。

(つづく)

破損した三好系人形の修復2

2011-05-23 22:19:41 | 人形

書きかけになっていた記事を書きなおしましょう。
広島県の三次周辺で作られた桜持ちの人形がありました。
この三次の人形は江戸期に草創が遡る古い生産地で
宮ノ峡が本流で明治期に十日市に脇窯が営まれ、
山陰系統と博多系統とオリジナルの三系統の作品が残されています。

この人形は「桜持ち」と呼ばれており、
現在でも三次本通りにある松本玩具店で販売されているようです。

http://www.mhst.jp/matsumoto_toy_web/sakuramochimusume_tokudai.htm

今のものはどうなのかわかりませんが、
三次の源流に山陰の長浜とのつながりがあることからか、
作品の中に非焼成のものがあるようです。
胎土には紙や糸くずなどが入っていました。


そのためなのか破損してしまうと
焼成したものとは異なる割れ方で割れてしまいます。
クラックは線状を成すものだけでなく
砕けたようになった個所もあります。

それを修復してみました。

(つづく)