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人生はネタだらけ、と書き続けてはや20年以上が経ちました。

『べっぴんさん』2週 魔法にかけられて

2016-10-15 12:35:15 | 朝ドラの感想
2016年後期BK朝ドラ『べっぴんさん』の第2週のネタバレ感想。


大事な人がいて大切なものがある、そんな「しあわせ」



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●朝ドラ「ゆり姉ちゃん」


昭和9年の様子が描かれた第1週、夢から醒めて昭和17年。
日米は既に開戦しているこの年。


「こんな世の中だからこそやりたいことやるべきやと思うんです」

ゆり姉ちゃんのあくなき朝ドラヒロイン力よ。
(蓮佛さん、いかにも朝ドラ出てそうなのですが、これが初出演)

お見合いなんて嫌だ!
このまま家庭に入るなんて嫌だ!
坂東営業部を継ぐために、英語も経営学も勉強したんだから!
やりたいこと好きなよう自由にできる夢だ!人生は紙飛行機だ!(それ去年の)



経済学の論文を英語で書いてきたんダー!。
お父様は今や貴族院議員だけど、とりあえず現在の社長である正蔵おじさんに見てほしいんダー!
おじさんタイ語じゃなくてごめんネー!(ナパ・チャット・ワンチャイじゃない)

仕事中に乱入するゆり姉ちゃん、当然五十八パパは「常識がない」と叱るのですが。
その高学歴グイグイ力に好感触の人が1人。


ひとりだけ作画の違うイケメン潔のハートに、ゆり姉ちゃんの行動力がクリーンヒット。



●軽やかさと重厚さと


ところで、潔に惚れてるヒロインはどこに行ったのかと言うと。
良子ちゃん、君枝ちゃんとあさや靴店でイケオジ靴職人の淹れる高級シナモンティーを嗜んでおられました。


「甘くてちょっと刺激があって、まるで恋の味やわ。」
「やっぱりオートバイの君が頭に浮かぶわあ」


そこに潔がやってきたものだから「直視できない!」と乙女たちの妄想が膨らむ膨らむ、のですが。
潔の用件はもっとヘビイなものでした。


「来たのか」
「ああ、来てもうた。麻田さんとも会えるうち会っとこう思うて」
「おめでとう」


先週届いた召集令状。
戦地に赴かなければならないその前に、潔は麻田さんの元に挨拶に訪れたのでした。



うーん照明さんが絶品。
手芸クラブ3人組が軽やかに、潔と麻田さんは重々しく。
同じセット内のシーンながら「空気が変わった」のを感じます。




●ああ愛しのオートバイの君


あさやさんからお屋敷までの帰り道、潔のオートバイに揺られるすみれ。


「こじょうちゃんはこれからどないするんや」

ゆりは『ゆりさん』って呼ばれるのに自分は『こじょうちゃん』。
なんだかちょっと切ない。
でもドキドキが止まらない、何だこの子可愛いぞ。


「これからは夢見るどころか生きてくだけでも大変な日々になるかもしれへん」

ゆりについて『おもろいお嬢さん』と話題にする潔にすみれはちょっと複雑。

それにしても。
『あさが来た』のときもそうだったんですが。
秋の連休の平日休みの朝に、これぶち込んでくるのBKあざといぞ。(いいぞもっとやれ)

なおその『あさが来た』、シルバーウィーク・ハッピーマンデーの朝は、あさちゃんと新次郎さんが初夜と見せかけて思いっきり投げられてた回でした。
『あさが来た』3週



●まだまだ「ゆり姉ちゃん」


さてその『おもろいお嬢さん』。
まだまだ朝ドラヒロイン力を発揮。
潔はお仕事関係で坂東のお屋敷に来たのですが、「仕事の話なら私も混ぜろや」とグイッと乱入。


「このご時世やからこそ、私は今の自分に正直になりたいと思います。私は自分の愛する人と結婚したいと思うてます」

愛する人?それは誰の話だ?と。


「潔さんです」

「(えっ?)」

「(えっえっ?)」

「(おいこらどういうことだ)」

パパ落ち着いてwww
松竹新喜劇風味が漂っちゃうwww


しかし、ゆり姉ちゃんハッタリかましたわけではありませんでした。



ゆり姉ちゃん、潔を全くの純然たる片思いとして『愛している』と。
なのでこの機会に潔に気持ちを受け止めてほしい、将来を考えてほしいというものでした。

姉の告白、激怒する父、土下座する野上親子。
一体何が起こっているんだ、と立ち見のすみれ。



●お手紙




外出禁止令、ゆり姉ちゃん。
転がる執事・忠さんの追っ手を振り払うことができず、仕方なくすみれに潔へのお手紙を届けてほしいと頼みました。

そのお手紙の中身がこちら。


「先日は驚かせてしまい本当にすみませんでした。私は潔さんに自分と同じ匂いを感じています。
一生を共に過ごすならあなただと私の本能が告げていたと思います。男と女以上に同じ志を持つ相手だと」


またなかなかグイグイ攻めるお手紙である。

最初はギョッとしていた潔でしたが。


「わしはゆりさんに惚れた。せやけどゆりお嬢様とは、ないな」

『ゆりさん』はOKだけど、『ゆりお嬢様』はNGの理由。
すみれがあさやさんからそれは「潔君、養子やからな」と聞いているころ、ゆりも五十八パパから聞いていました。
血は繋がっていなくとも実の子同然に大事に大事に育ててきた息子を、なぜ婿に出さなければならないのか。
(名倉と高良健吾、東南アジアみがよく似てると思ったが養子だったか……)



その野上親子、正蔵と潔の腹を割った話。

ゆりに惹かれてるのなら正直になれ、と正蔵は促します。
しかし潔をこれから待ち受けているのは、出征という現実。
どうなるかもわからないし、生きていられるかもわからない。


「だからこそやろ。だからこそ見えることもあるんやないか」

イケメンだけどやや辛気臭い潔。
その背中を正蔵がポンと押しました。
どうなるかわからない、そんなご時世だからこそ自分に正直になれ。



●親の思い


 
「どんなことがあろうとこれからも親子であることは変わりません」
「好いてくれる人が待っててくれるやなんて幸せな事やおもいます」


「わしはゆりさんに惚れてます。こないな人と一緒におったら幸せやおもいます」



決意を固めた野上親子に、五十八は思いがけないことを言いだしました。


「ゆり、お前が嫁に行け」

「お国のために立派に働いてきてくれ。ただし生きて帰ってこい」
「どないなことがあっても必ず生きてゆりのもとに帰ってこい」

激怒していたわりに、あっさりとゆりの結婚を許す五十八パパなのですが。

五十八パパは確かに過保護だけれども、『娘の幸せ』を何より大事に思っている優しい人だということ。
野上に心からの信頼を置いていること。
それからもう一つ。
戦時下だからこそ嫁ぎ遅れないように嫁がせ送れないように。
3つの意味がうまくく込められていたと思います。

「ゆりを、すみれを頼みます」とはなから託された愛娘。
実子同然に育て上げた一人息子。
五十八と正蔵、親の心は複雑だけれども、必ず生きて帰ってこい。
それが男親ふたりにとっての幸せ。




●お嫁に行くその前に


とんとん拍子で進むゆり姉ちゃんの祝言が明日に迫っていました。

最後の夜なのだから、と一緒の布団に入る姉妹。

ゆりは、はなが亡くなったときのことを思い出します。
悲しかった。
何でか分からないけど悲しかった。


「あのときとことん考えた。何で人は悲しくなるんやろって。今になって何となく分かるような気がする。」
「なくすのが悲しくなるほど…大事な人や大切なものがあるいうのを、『幸せ』いうんかなって」


ゆりが語る『幸せ』。
じゃあすみれにとっての『幸せ』は──。


背景が意図的にぼかされ、なんとも印象的なシーン。



●ゆり姉ちゃんの祝言


戦時下なのでささやかに、それでも十分すぎるほどハイソに披露宴。
坂東本家のおばあさま・おじさまもやってきました。


なんとも顔面の印象が濃いい坂東家の家系よ。

 

天の声も祝福。
すみれだけじゃなくてゆりの幸せも祈るお母様。

 
「こじょうちゃん、これからは義妹やな」
「お姉ちゃんを幸せにしてね」


絶対にいなくなったりしないでね、帰ってきてね。
お姉ちゃんを悲しませないでね。

大切なものだからこそ、大事なものだからこそ。
失いたくない、なくしたくない。


この先数年間、潔やゆり、すみれを待ち受ける現実は悲しいものだけれど、それでも大事にしたいものがある。
今を生きる潔とゆりの選択を温かく見守ることがすみれの幸せ、初恋の終わりの形だったのかもしれません。



●ダメ押しのノ―リー


お祝いムードのお屋敷に怪しい男が1人。


「紀夫さん……何を?」
「高さを揃えて……気になって……」


勝手に部屋に入って勝手に本を並び替えてるんだけど、いや何してんのwww
おまえは何をしているんだwww



「昔、4人でよく遊びましたよn」
「失恋ですか?」
「潔君のこと思ってたんやないですか?」
「子どもの頃の話やと思っていたら今もなんですね。お姉さんの結婚相手やのに……僕にはわかります



「(おまえは何を言っているんだ)」


コミュ障ノ―リーのド直球の爆弾炸裂。
感動を返せ、ばかやろうwww



●ファミリーヒストリー


そんなトンチキノ―リーは置いておくとして。

披露宴の夜、すみれは祖父・トク子と話をしていました。
トク子が語るのは五十八と兄・長太郎の確執。

近江商人で名を成した坂東本家。
その次男坊・五十八は、分家に出されるも、商才を発揮して大阪で販路を開拓します。



そのころ長男・長太郎の相続した本家は傾いていました。
理不尽ながらも本家を守るため、自分が拓いたお得意先を泣く泣く兄に譲る五十八。



長太郎も五十八もどちらが悪いわけでもない。
トク子ばあちゃんの複雑そうな表情。



それでも五十八にははながついていました。
はなが近江から送った品を五十八が大阪で売る。
そんな2人の頑張りが築き上げた坂東家。



「そんな風にしてやってきたさかい、夫婦二人で築いたものをどうしても引き継いでもらいたいいう気持ちは人一倍強かったと思うで」

はなが亡くなる回、五十八ははなに「全部はなのおかげだ」とお礼を言っていました。
なるほど納得、そんな坂東家のファミリーヒストリー。

潔を実の子同然に大切に育ててきた正蔵。
はなから託された娘の幸せを第一に考えた五十八。
兄弟の確執を抱えつつも、五十八と孫の成長を喜ぶトク子。

共鳴し合う親たちの『幸せ』がとても素敵。
ならばすみれの幸せとは何だ。




●明けて、お正月




ゆりの祝言から半年、昭和18年のお正月。



除夜の鐘は供出されてるけど、坂東家はまだ質素ながらおせちがある。
晴れ着を着ていられる。
そんな上流階級。

ところで、女学校では。



悦子様は通常運転なのですが、浮かない表情なのが良子ちゃん。
それには理由がありました。


「縁談が来てるの。15も上のおじさんなの」
「私の年でなんで15も上の人と結婚しないといけないんよ……」


※良子ちゃんの中の人はアイドル。

(タグのTLにいくつか倒れてるモノノフを確認した)

ところでその話絶対に麻田さんにするなよおまえら。



●この家を守る


良子ちゃんの発言に衝撃を受けるすみれ。
自身にも衝撃的なことが降りかかってくることに。

縁談を提案されたすみれ。
が、すみれの決意はもう固まっていました。
写真を見るまでもなく、「坂東家に婿に入ってくれるならば結婚する」と即答。


「おばあ様に聞きました。体の弱かったお母様も一生懸命働いてお父様を支えてその頑張りがこの家の土台やと…」
「お父様とお母様のためだけやなく、自分のためにも、この家を継ぎたい思うてます」


ほとんど黙ってたすみれがグイグイしゃべると一気に存在感を発揮。
ここまでセリフが必要最小限に抑えられていた効果が抜群に出ているような気がします。

長女には自由に恋愛結婚させておいて…と五十八パパも多少なりとも罪悪感を感じていたことでしょう。
ましてや自分の実家は長男優遇、次男の自分は苦労をすることになった経緯もあって複雑。
そんなときにすみれが
「自分のためにもこの家を継ぎたい、婿を取りたい、父の選んだ人なら間違いない」
と言ってくれたこと、嬉しかったんだろうなと思います。


いやまあお父様の持ってきた人なら誰でもいいとは言うけど、一応気になる相手の男性。
写真を見てみると。

 
「(おまえがなぜここにいる)」

すみれwww顔、顔www




●魔法をかけられて


時は昭和18年。
今のうちに急げ急げと物語がどんどん進んでいきます。

 

すみれに一瞬のとまどいはあったものの、紀夫とサクサク結納。
それでも少し不安の残るすみれを励ましたのはあさやさんでした。


「大丈夫、奥様が見守ってくださってます」
「すみれお嬢様はみんなの思いを持って幸せになられるんです」


はなと約束した嫁入り支度の靴。
きっと五十八がすみれのために特別に手に入れたであろうストッキングに包まれた足先。
みんなの幸せに「ありがとう」と。


お母様の形見のウエディングドレス。

お母様はそばにいるように。

特別な靴の魔法。
夢のような時間。


もうひとり魔法をかけられている人がいました。

 
「(俺の嫁……まぶしい)」
 
「堪忍してください。あのときはつい…言い過ぎました」
き…き…き…きれいです」


紀夫よく言ったぁ!!!

すみれも、これでにっこり。



全体写真に坂東本家の方々はいらしていないせいか、ゆりの祝言の時よりも人数が少なく感じます。
「このご時世に西洋式の結婚式なんて何を考えているんだ」と長太郎叔父さんは怒ってるのかもしれませんし、「まあまあ」とトク子ばあちゃんはなだめているのかもしれません。
坂東本家の描写はわずかながらも、行間を捕捉するに過不足ない描写。




●歓喜の歌


坂東営業部に入社した紀夫。
すみれ奥様はお寝坊さんながらも、毎朝頑張っている様子。
ある朝。


「赤ちゃんができました」
「……(マジで?)」


(しばし沈黙)

ガタッ、窓バアン!
突然叫び出す紀夫。



「どうしたの?」とすみれが聞くと。
なんっとまあ清々しい笑顔で。

「僕は喜んでいるのです!!」



『よくわからない』と言われていた紀夫。
この人はただ単に言葉で表現するのが苦手な人なのだ、と2人の仲の微妙なわだかまりがほどけていきました。

それにしてもすみれ以上に喋らなかったこの紀夫(というか出番自体もさほど多くない)
子役時代を含めても数えられる程度なのですが、それだけに一つ一つのシーンが印象深く仕上がってる。

すみれの変わりように驚いていた子役紀夫。
「フラれたんだね」っていう失言。
それから「(俺の嫁超かわいい眩しくて見てられない)」のこれだけで人柄を掴ませるのが本当にすごい。











●懐中時計は時を刻み続ける


しかし時代は戦時下。
潔に淡い恋心を抱いていた良子ちゃんは、おそらくお家のために「15も年上のおじさん」と結婚。
山手に暮らす外国人たちは本国への帰国を余儀なくされる時代。

魔法が少しずつ解けていく。



シンデレラの魔法が解けたことを告げるような重い鐘の音。
時を刻み続ける懐中時計の針。
結婚、妊娠と幸せに流れていた新婚夫婦の時の流れが一瞬で残酷なものになりました。

出征が決まった紀夫。
避けては通れない現実。
せめて戦地で困らないよう、すみれは紀夫に小さい裁縫キットを渡しました。

お腹の中の赤ちゃん。
この子が生まれるころに自分はもうここにはいないけれど。

女の子だったら『さくら』と名付けてほしい。
それは幼い頃からずっとすみれのことを一途に思っていた紀夫の告白でした。

 
「幼い頃から君を想っていたけれど、桜の花びらが舞う中を歩く君に、僕は、僕は心を奪われたんだ。」

「母であるすみれのように、そしてすみれのお母さんのように、花を咲かす人生を送ってほしい。今が一番幸せや」

「僕の子を……僕とすみれの子を頼みます」


ラブラブか!!
ラブラブじゃねえか!!
しかもこれはなさんが五十八パパに言った言葉じゃないか!!



懐中時計は時を刻み続ける。
今の幸せを刻み続ける。


でもそれは永遠じゃない。
カウントダウンが終わった。



無音、引いた映像、泣き崩れる紀夫の母。
置いていかれたままの懐中時計。


もし自分が帰ってこないことがあっても、君は今という時を生きてほしい。
そんな紀夫の言葉にはしない願いがこめられていたのかもしれません。



●新しい命


それからまた時は経ち昭和19年6月。
すみれは臨月を迎えました。


出産シーン恒例の男性陣立ち聞き。

生まれたのは女の子。


「さくらちゃん、こんにちは」
「昭和19年6月、すみれは…私の娘は、母になりました」


天の声もなんだか嬉しそう。


紀夫からの手紙も届いて。
短い言葉ながらも、そこには愛がたっぷりで。





しかし現実は甘いものではありませんでした。
物資が少なくなる昭和19年、ミルク不足に苦しむすみれ。
帰国を迫られるご近所の外国人。





そこにいたのは明美ちゃん。
ベビーナースとして、神戸に住む外国人に育児指導をしていました。
(明美ちゃんの中の人、谷村美月さんが大変苦労したっていう英語の看護指導シーン)

すみれは多分気づいていない様子。
この明美ちゃん、いい感じのスパイスになりそうです。




●神戸にしばしの別れを告げて


1945年、昭和20年。
激化する本土無差別爆撃。




まだ幼いさくらを抱いて逃げ惑うすみれ。
神戸大空襲は『火垂るの墓』や『少年H』などで知られていますが、こののち神戸の町は壊滅的な被害を浮けることになります。


紀夫からの便りも絶えてしまい、不安に襲われるすみれにさらに追い打ちをかける知らせ。
父と母が愛情込めて育て上げてきた『坂東営業部』が、国策により吸収合併されることとなりました。
ゆりは、潔が帰ったら「必ず取り戻す」と悔しそうに。



五十八が提案したのは本家のある近江への疎開。
美しいお屋敷と思い出にしばしの別れを告げて。



●田舎あるある


しかし坂東本家との間には確執が……。


「こないな田舎料理、ハイカラな皆さんのお口には合わへんのとちゃうか?」

うっわあああ、やっぱりお兄ちゃん僻んでる!

ゆりの祝言の時に語られた坂東家のファミリーヒストリー。
本家の長太郎は、本家を出ていった身ながらも会社経営に成功している五十八のことを妬んでいる様子。

元々閉鎖的な田舎社会。
時期が時期なだけに戦争という現実。
そこにやってきた不仲の弟一家。
画面奥で背中を曲げるおばあちゃんしか歓迎してないこの近江……これは匂う。

夜泣きが激しいさくらに対し、坂東本家長男の嫁・BK常連の三倉茉奈がまたスパーク


「あんたらのせいで寝不足や」
「なあ。あんなに泣くやなんてちょっとおかしいやないかて思うんやけど。うちの子あんなふうには泣かんかったで」


ひえええええ、出た出た。
世の新米ママさんを奈落の底に突き落とす「ちょっとおかしい」。
しかもそれを自分が言われてきたからどれだけの威力を持っているか知ってる先輩ママさん。


さすが『ファーストクラス』の脚本家さんだ。
いびりが生ぬるくない……




●玉音放送


その日。
五十八とすみれは空を見上げていました。


鳴り響くサイレン。


赤ちゃんの泣き声。


逃げる人たちの足音。


爆撃音が響く。


そして無音。


時期的に疎開を決意させた空襲は3月17日。
五十八が神戸で遭遇した空襲は6月5日のものと考えられます。
いずれにしろ神戸の町は大きな被害を浮けました。

そして1945年8月15日。


玉音放送が流れ、終戦の日を迎えました。



●初回アバンに帰る




焼け跡の様子を見に来たのでしょう、すみれ。
焦土と化した街並みに涙をこぼします。

しかし印象は第1週アバンのそれとは異なります。
2週間ていう短さとはいえ、この間に描かれたいろんな幸せ、それが一瞬で奪われた。
すみれの目に浮かぶのは、悲しみだけじゃない強さもある。



残っていたのは屋敷の壁の一部と、疎開するときに荷物になるからと置いてきたウエディングドレスでした。

戦争は終わった。
赤ん坊は泣き続ける。
水は流れ続ける。



守らなければならないものがある。
待たなければならない人がいる。



「本当に大変なのはここからなのです。それでもすみれは母として前に進んでいくのです」

母としの決意を固めたすみれ。
みんなから守られていたこじょうちゃん、童話のようなお嬢様時代はもう終わり。

「なくすのが悲しくなるほど…大事な人や大切なものがあるいうのを、『幸せ』いうんかなって」

今週序盤、ゆりが祝言の前の晩にすみれに話していた言葉。
大切な人を失った昭和9年、あれから何年か経ちまた大切なものをうしなった昭和20年。
それでも、すみれは『しあわせの形』に気付いた10年間。

ここからスクラップアンドビルドの物語がはじまっていく。
『べっぴんさん』はそんな物語なのかなあと思います。
すみれが『しあわせ』を取り戻していく。
刺繍を一針一針縫うように、また作り上げていく。

すみれ、がんばれ。負けるな。




●2週を振り返って


まあ早い早い。特に週後半が怒濤の展開。

木曜日の回では、結納・結婚・妊娠・召集令状。
金曜日の回では、出征・出産・育児・空襲。
土曜の回では、倒産・疎開・空襲・終戦。

2週目の第12回で初回アバンに戻ってきました。

『〇〇年後』のワープ処理やいわゆる『ナレ処理』は観たことあるものの。
ここまでポンポンポ―ンと進行する物語は斬新です。

描きたいことがあるんだ。
だからそこまではテンポよく進めるんだ。
「朝ドラってこういうの好きだよね」に甘えることのない、野心的な姿勢に素直に期待できます。


というのも、時系列は非常に性急ながらも、ひとつひとつが丁寧に描かれているからです。

1.人物造形

1週目の大半を演じた子役さんたちからの吸い上げがすごい。
しっかりもののゆり姉ちゃん、口数少ないすみれ。
イケメン力を発揮する潔、何を考えているのかよくわからない紀夫。
子役俳優さんたちが演じた4人の姿に、蓮佛力・芳根力・高良力・永山力をそれぞれ注ぎ足したという印象。

『てるてる家族』で描かれた「子役→本役」の姿にも言えることでしたが、それを短期間でやるのもお見事。

また大人キャストになってから、みなさん表情がお見事。
特に芳根さん。
主人公、ヒロインのわりにセリフが極端に少ない。しかも高速展開。
しかし表情で語る心象がとても印象に残ります。

セリフはなくともひとつひとつの表情で物語るのがとにかくうまい。




2.時代性、地域性

時代性や地域性もきっちりふまえられていたと思います。
それもわかりやすさのひとつの要因。

第1週、『戦時下とはいえど富裕層』と追記しましたが。
第2週後半、『富裕層とはいえど戦時下』でした。



たとえば、坂東家のお屋敷の近くに住む外国人・クリスティーナ。
彼女は「いろいろとやりづらい」「もうすぐ国に帰る」と話しています。

神戸という外国人が多く住まう地域、長引く戦争を物語るワンシーン。

クリスティーナまわりでもう一つ。
ゆりと明美ちゃんは英語ペラペラですが、すみれは「何を言っているんだろう」とポカーンとしています(大意は伝わっている様子)
ゆりと明美ちゃんは専門に勉強していたからなのですが、すみれが英語を喋れない理由はおそらく女学校で英語の授業がなかったためでしょう。

なんてことのないやりとり、ワンシーンに時代と地域を感じます。

3.人が生きている

たとえば疎開したすみれたちを迎えた坂東本家のシーン。
奥で中村玉緒さん演じるトク子が1人複雑そうな表情。
長太郎兄さんと節子さん、静子さんらの対応におばあちゃんは胸を痛めているんだなあと。
その前のファミリーヒストリーをすみれに話すシーンと相まって、坂東本家の事情を察することができます。



もうひとつ、焼け跡の神戸にやってきたすみれと女中・喜世さん。
決意を固めるすみれの横で、焼けたウエディングドレスに涙を流しそうな様子が描かれていました。

セリフがあるわけじゃない。
でも画面の中に登場人物がしっかり生きている。

4.演出

童話のワンシーンのようなカット。
映画のような15分。

「照明さんもカメラさんも音響さんも、みなさんいい仕事する!」
何度もそんな感想を持ちました。

慌ただしい時系列ながら、演出によってつくられる立体的な登場人物と、間。
立体的な人物造形。

セリフがなくても光の変化で、音の変化で、カメラの動きの変化で語られる登場人物の心象。

 

新年、元旦の朝。
忠さんはすがすがしい気持ちで扉を開けているのでしょう。

それから数日経った午後か夕方でしょうか。
帰宅するすみれは、結婚とは何ぞやと考えこんでいるのでしょう。

「頭おかしいよBK」と言いたくなるのが見事過ぎる劇伴。
音を巧みに使い、緊張感・恐怖感を煽ってきます。



紀夫が「僕は喜んでいるのです!」と叫ぶシーンではSEが大活躍。
静かだった屋敷の中から外に出ると、鳥たちの鳴き声や風の音が一斉に聴こえだす。

「本気出しやがって」
『真田丸』や『夏目漱石の妻』で感じる「エネッチケーのの本気」が、登場人物を立体的に仕上げ、ストーリーの中の『間』を作っているのを感じます。




2週の時系列の速さは、意図的に仕上げられたものでしょう。
このあとに描きたいことがある。
モデルとなっているファミリアの系譜から見ても、焦点を当てるべきは戦後。

真の第1週、本編は来週の第3週なのかもしれません。
1週と2週はあくまでもプロローグ。


ただ難点がいくつか。
目を離せませんでした。
ながら見が出来そうにない。


視聴率が前作に及ぶことはなくても。
視聴率ではなく、そのまま本気出して作ってほしいなあと思う次第です。



●ちょいと気になる。


前述の通りすみれやゆりたちは『持つ者』として描かれました。
君枝ちゃんや良子ちゃん、潔や紀夫も同じく『持つ者』でしょう。

しかしその対極にいるのが坂東本家の長太郎おじさんと明美ちゃん。

長太郎おじさんはさっくり描かれましたが、弟・五十八に対しての何らかのコンプレックスを抱いている。

明美ちゃんも第1週のクッキージェノサイドで登場していました。
すみれや坂東のお屋敷に対して何らかの思いを抱いている。

少しずれますがイチオシの悦子様。
悦子様は戦時中の不満を口にしていて、それをすみれたち手芸クラブが諌めるという関係性なのですが。
普通朝ドラだとこれ不満を口にするのはヒロインサイドのほう。
なかなか画期的なキャラクターだなと感じます。

長太郎おじさん、明美ちゃん、悦子様。
この3名がどう描かれるのか注目したいです。






●さて次週は



恒例の闇市!

ゆり姉ちゃんのご入浴!

シャロやん!!!



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