約8年ぶりに群馬の四万温泉へ。
四万を訪れたのは22歳の誕生日。
学生時代最後の誕生日を、一度行ってみたかった四万温泉で迎えることにした。
もともと温泉巡りが好きで青春18きっぷを使っては日本各地の温泉地を訪ねていた大学時代だったのだが、その集大成の場に四万を選んだ。
・〈07夏、四万温泉バースデイ〉~追憶~
・〈07夏、四万温泉バースデイ〉~自然~
・〈07夏、四万温泉バースデイ〉~旅~
あれから8年。
社会人となり働く中で、世間の荒波にのみこまれた。
何が正しくて何が間違っているのかわからなくなったこともあった。
『疲れた』『辛い』『無理』などの言葉たちをぐっと飲み込んでは、こみあげる胃痛を堪えていた。
そんな20代を振り返ると、惨めで情けない自分が少し悲しくなる。
中学時代からの友人を誘って今回出かけたのは、そんな自分にケリをつけたいという思いもあった。
<老舗を通り越して文化財の宿>
今回泊まったのはこちら。
積善館 本館です。
元禄4年に建てられた、日本最古の木造湯宿建築。
築年数300年!
老舗を通り越して文化財です。(実際に群馬県の指定文化財にも登録されています)
8年前に四万を訪れたときも、似たような感想を抱いていました。
当時宿泊したのは四万温泉でも奥のほうのひなたみ地区の旅館だったのですが、温泉街を通り抜けるときに見かけていました。
──積善館。四万温泉、老舗中の老舗旅館。
──紅い橋と江戸時代からの建物が、千と千尋の神隠しを彷彿させる。
『一度は泊まってみたい』と思っていた宿に今回宿泊することになったのですが、
江戸時代に建てられた湯宿という重みが斜め上をきました。
ノスタルジーを超えた物理的な怖さとジャパニーズホラーの真髄がありました。
「ここって文化財なんだよね」
「泊まっていいの?文化財って泊まれるものなの?」
とチェックインギリギリまで言ってましたが、無事に泊まれました。
<『千と千尋の神隠し』の世界>
こちらの積善館さんは、スタジオジブリ作品『千と千尋の神隠し』に登場する油屋のモデルになったのではないかとされています。
見比べてみると本当に似てますね。
たとえばこの浪漫のトンネル。
本館から山荘に行くまでに通るのですが。
このトンネルが一人で通るにはなかなか怖かったです。
トンネルは山肌を貫くように作ってあるので、たかだか100mあるかないかくらいなのですが足音がとても響きます。
地下なので地下水の音なんかも響いてきて、『仄暗い水の底から』という映画を思い出してしまいました。
まあ慣れたら一人でも歩けたんですけどね。
『千と千尋』の時空トンネルのモデルになったといわれています。
夕方には館長さん主催の館内歴史ツアーがあるのですが、非常に興味深いものでした。
まず明治期の積善館の写真。
それ以前からも上毛と越後の交易路の宿場町として栄えていましたが、明治期に中之条からの道が整備され、より一層の繁栄を迎えたそうです。
写真の中に映る140年前の人たちがどんな思いで湯につかっていたのか。
思わず浪漫を馳せてしまいます。
話が少し前後しますが、先ほどの『千と千尋の神隠し』のモデルになったのではないかという噂。
他にも道後温泉や雅叙園など様々な温泉や建物が「これモデル?」と噂されていますが、四万温泉もそのひとつ。
→千と千尋の神隠し、舞台になった神秘的な温泉旅館まとめ
これに関しても館長さんからの説明がありました。
宮崎駿監督は実際に積善館に泊まりに来ていたそうです、がそれは『千と千尋』の制作公開よりずっと前の話。
スタジオジブリ・レイアウト展がはじまった2008年にも積善館さんは取材を受けたそうですが、
このことに関して「原風景を集めたらこうなった」と宮崎駿監督は話していたそうです。
特定の舞台があるわけではなく心の中の原風景が舞台である、そっちのほうがなんか素敵ですね。
とにかく歴史的にも文化的にも、NHKスペシャルを見ているような感覚になりました。
個人的には『花子とアン』の白蓮さんの歌もあってそっちでも発狂。
<四万沢渡は草津の仕上げ湯>
お風呂がまたよかったです。
撮影禁止なので公式ホームページからお借りしました。
これは元禄の湯。
何かに雰囲気が似てるねえ、と友人と話しながら入っていたのですが。
東京駅の丸の内口に似てると。
やはり同時代の建築は趣が似てくるんでしょうか。
そんな「昔ながら」を飛び越えた「重要文化財の風呂」ですが、泉質もお肌がしっとりしました。
草津の強酸性の湯だと肌荒れしてしまう私なのですが、四万の湯は優しいし長湯できました。
実際に『四万沢渡は草津の仕上げ湯』ともされてるんですね。
前述の館長さんの説明で、これを「草津=クレンジング、洗顔」と「四万沢渡=化粧水」に例えられてて面白かったです。
<旅の終わりに喫茶店>
8年前に訪れたときにとあるカフェに行っていました。
──旅の終わりはいつも喫茶店。照明は暗めで、ドアベルが風情ある店がいい。
──ケーキセットがあって、本棚がある。
──今回の四万温泉中央通りに面する喫茶店は満点をつけたいくらいの店だった。
今回も、バスの中から
「ここ来たことある」
と見つけて、やってきたのが【四万温泉柏屋カフェ】。
最近では都内でもなかなか見かけないですよね、こういう喫茶店。
昔ながらといえばいいのでしょうか。
ほのかに塩っけのあるカプチーノは四万温泉の湯(飲泉可)を使ってるのかしら。
友人たちと他愛もないおしゃべりを楽しみました。
<ひとには教えたくない温泉>
――ひとには教えたくない温泉があります。
8年前にも同じことを思っていました。
少し違うのは、この1文を追加したいこと。
――大切な人に教えたい、私だけの四万。
気心の知れた15年以上前からの友達。
高校生になって大学生になって社会で働いて、それでもくだらないことで笑いあえる友達。
お互いに支え合いながら生きてきて、今の私があります。
「とっておきの温泉を教えたい大切な人」には彼女たちがぴったりだったのかもしれません。
この先300年後にもまた訪れたいな、と思いました。
10年ぶりに群馬の四万温泉へ。グンマーのソウルフード・焼きまんじゅうの美味さは中毒になりそうだったし、思い出しただけで脳内飯テロ旋風。グンマー、恐るべし。 pic.twitter.com/G8GThQ5Ego
— yuzz0905 (@yuzu0905) 2015, 2月 11
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