NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』、まとめ。
雁助さん名場面編。
影の立役者、雁助さんのあのシーンこのシーンをまとめてみました。
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・朝ドラ感想記事のまとめ。
他民放ドラマ、NHKスペシャルはこちら。
・少々真面目で結構ゲスいテレビっ子の備忘録まとめ。
「猫ちゃんの継はってもろて…ああかいらしい」
猫ちゃん!猫ちゃん!!
せっかくの商家で働きたいのに働かしてもらえないあさ。
最初にした仕事は、雁助さんの羽織に猫ちゃんの継を縫い付けることでした。
「かいらしい」って言ってる雁助さんがかいらしい。
そんな裏工作の甲斐あって、雁助さんにいろいろ教えてもらってる様子がこれ。
台詞の中で語られる時代に、思わず感動した序盤です。
[→3週、その1、その2]
「な…『何だす何だすって何でだす?』ってそないに全部若奥さんに説明していたら、それだけで日が暮れてしまいますがな」
雁助さんに「何で」「何で」と聞いて、あさは早くも加野屋の商売の内情を把握した様子。
そして徳川の世が終わりました。
御一新を迎えるわけですが、新政府から「10万両を用立てしろ」と伝えられた加野屋はそれどころではなく。
「それでもその新政府いうのが戦して新しい時代はじめるのやさかい、しょうがおまへんがや」
柔軟性がなければ生き残れなかったご一新。
あさの活躍があったことはもちろんですが、加野屋と山王寺屋が対照的に描かれた場面でした。
そして取り付け騒ぎに初動対応したのは雁助さん。
「わてが代わりを務めさせてもらいます」
「つけあがってしもて。ええ加減にしさらせ!」
雁助さん、営業スマイルからの劇的ビフォーアフター。
[→4週]
寄合所。あさに付き添ったのは珍しく雁助さん。
「なんで若奥さん、こんなとこでそんなことしてはんのだす?」
寄合所で針仕事をしているあさにツッコミかかさない。
(これが後々の伏線になったりする)
そこで五代さんの「大阪を世界に知られる町にすることがこれからの私の使命」という言葉を耳にします。
正吉さんに伝えた雁助さん。
「そこまで大阪のこと思てくれはるのに、こっちが何もせんというわけにはいきまへんな」
五代さんが大阪を想う気持ち。
それがまず伝わったのが雁助さんと正吉さん、というのが大阪復興への第一歩だったのかもしれません。
ここで繰り広げられた番頭コントで発覚したのは、
・雁助さん、バツイチ子持ち
・亀助さん、独身
という情報。
[→5週]
あさと亀助さんが炭坑に向かいます。
そのころ雁助さんは…
仁王像の顔マネww
[→6週]
7週、惣兵衛帰還、ピストルあさ、九州場所…とありましたが。
「すんまへん」
「いやいやこっちゃこそ堪忍やで」
雁うめフラグはここで立ちました。
雁助さんと正吉さんが「働かない新次郎の秘密」を話していた場面を、偶然立ち聞きしてしまったうめ。
出合い頭に雁助さんとぶつかってお茶をこぼしてしまい…手が触れあって…のシーン。
オフィスラブじゃねえか。
そんな雁助さんがうめに新次郎の秘密を話します。
「息子さんと奥さん残してどっか行ってしまいはった」
「それにわては旦さんの下でずっと働かしてもらいたいんだす」
この『息子さんと奥さん』ってのはおいおい出てくるのですが。
雁助さんは「加野屋で働きたい」のではなく「旦さんの下で働きたい」。
ていうかどっちのフラグもこんなに早くから。
[→7週]
8週、京都のおじいちゃんが旅立つ週です。
「うちか番頭はんにいいなはれ」
ふゆの涙の手紙と新次郎で、ふたりの不穏フラグ(妾問題)がたった場面なのですが。
うめが信頼するのは雁助、というフラグがしっかり立っている。
で、その番頭さんはというと
「加野炭坑」の看板に渋い顔。
「雁助はんはこのお店に誇り持ってはんのだすなあ」
「当然だす。この店の大番頭任されて誇り持たへんはずがあれへんがな」
雁助さんの不穏を回収。
不穏というよりも大店の大番頭としてのプロフェッショナル精神。
[→8週]
9週、炭坑事業で本業の両替事業のほうも回復の兆しをみせます。
でもなぜか不機嫌なのが雁助さん。
このときのうめさんの絶妙な存在感が効いてます。
ていうかガッツリ視線で追ってますがな。
残業中の雁助さんを見つめるうめさん(もうオフィスラブじゃん!)
でこの週の週タイトルは『炭坑の光』で、炭坑で奮闘するあさに親分たちが理解を示す…という週だったのですが。
光が届いてなさそうな何人かの一人が雁助さんでした。
正吉さんからの重大発表は、引退宣言。
何か放心状態のような、あるいは決意を固めたような雁助さんの表情。
雁助さんがリスペクトしてるのは大旦那様だから、大旦那様の決断は雁助の人生に関わること。
[→9週その1、その2]
10週、8代目加野屋久右衛門(榮三郎)の襲名披露が行われるんですが…
雁助さんは表情も心情も複雑。
榮三郎を支えてくれと大旦那様から頼まれることもまた大旦那様に尽くすことなんだよなあ。
まあそんな心持はともかくとして、準備中の一コマ。
普通に隣に座ってる雁うめ。
「当たり前だす。大事な大事な襲名披露の案内状を汚い字ぃで書くわけにはいかしまへん。」
亀助さんの恋バナに盛り上がる面々だけど。
うめさんってば雁助さんの手先に魅入っちゃってる件。
さあいよいよ襲名披露の当日。
番頭コンビもピシッと決めます。
で、この週後半、和歌山へ出立直前のはつと藍之助が加野屋に泊まりに来ました。
涙の別れの後、あさの妊娠が発覚します。
ふゆがしょんぼりしているのを見かけたうめが、裏で雁助さんと…
「なるほど、あんたにもあったみたいだすなぁ。熱病にかかったことだす」
「そらもったいないこっちゃ」
雁助さん、試しにいじってみたが照れてしまったし。
うめさんも照れてボケ切れず。
なんていじらしい大人のオフィスラブの図。
[→10週その1、その2]
11週、加野屋の両替部門が赤字状態、というか儲けも何もゼロに近いことが正吉さんから明かされました。
「そらまあお前たちの判断だすな」
榮三郎、新次郎、あさ、雁助に加野屋の行く末を任せる大旦那様。
「これからはおまえたちで決めなさい」と聞いた雁助さんの表情が複雑過ぎてな。
「せやけど銀行が志のあるものに金貸すなんて誰がそないな怪しい話信じます?」
「加野屋も無理して変わらんで、今のままでもっとええ術探したらええんやないかて」
雁助さんの慎重な台詞と頷く榮三郎。
メタな見方だと雁助さんたち保守的にも見えなくもないけど。
当時からしてみれば2人の考え方のほうが自然だろうし、大阪商人の本音でもあるのかもしれません。
で、さっぱりしました。
「こないなわてに愛想尽かして、実家のある伊予のほうに帰ってしもたさかい」
「そ…そないな顔せんといってぇな。昔々の話だすがな。もういっこも気にしてません」
「いや、そうやのうて…」
旦那様たち夫婦の話から、自分が離縁に至った経緯を明かす雁介と、複雑な表情のうめ。
雁助さんもうめさんももっそいナチュラルに告白してるじゃん!
本人たちが気づいてないだけじゃん!
「わてはこの加野屋に生涯尽くすて決めてます」
「それやったらうちかて同じだす」
うめさんをガン見する雁助さん。
雁助さんをガン見するうめさん。
うめさんと雁助さんをガン見するふゆ。
娘さんの件に軽くショックを受け、自分自身のその気持ちに気づいて、でも話してくれたことの嬉しさもある。
そんな熟女・うめの淡い恋心の機微がもう素敵。
でも覗き見するふゆがあさに見つかり……
亀助さんからのお手紙をふゆが既読スルーしていた件を話している横で、このまぁた複雑な表情の中年2人。
ってラブラブの話ばかりではなく、喫煙所のビジネストークもありました。
「若旦さんは銀行には乗り気やないんだすのやろ?」
これに対し、榮三郎が「今のわての力でお姉さんの意見に勝てますかいな」と。
付け加えて「お前だけはこれからもわての味方でいてくれますな」
「へぇ……もちろんだす」 と雁助さん。
「あさにこんなに仕事させて大丈夫なの?」
という不安は、『あさをスーパーウーマンに描くのはやめてほしい』というものでしたが。
まさか『榮三郎への影響』という形で露呈した瞬間。
のんびり過ぎていた日々でしたが。
ついに炭坑で落盤事故が発生。
あさと五代さんが駆けつけて、行方不明だった親分の無事も確認し一安心…といいたいところですが。
「あの山を守れるのは、立ち直せるのはあんただけだす」
これから炭坑の復旧が急がれる。
それを正吉さんから頼まれたのが雁助さんでした。
「私の…最後の頼みや」
「もしあんたが私の死に目にあわれへんかったとしても…それでも私はあんたに行ってほしいのや」
それは事実上、正吉さんから雁助さんに託された遺言でした。
炭坑へ向かうことを決めた雁助さんは、うめにあることを頼みます。
「うめさん、あんたに頼みがありますんや」
言葉少なく、ただ大旦那様に何かあったら連絡してほしい、と話して。
「そうや、頼んだで」
雁助さんの表情に決意があると共に、どこか悲壮感のようなものを感じてしまう。
雁助さんがたとえうめさんから手紙をもらったとしても、しっかりもののうめさんがどんなに迅速に対応しても。
もしかしたら雁助さんは間に合わないかもしれない。
でも、それを、知りたい。
榮三郎でもなく新次郎でもなく、うめの言葉で知りたい。
いよいよ雁助が出立する日の朝。
雁助が抜擢された理由が明らかになりました。
落盤事故が事件かもしれないと見抜いた五代さん。
新次郎が懸念していた幼馴染。
その顔と名前を知っているのは、新次郎本人と正吉さん、雁助さんの3人でした。
久しぶりの番頭コンビの再会も手短かに。
「わてや、あのころ手代だった雁助や」
「さあ、昔話でもしまひょか」
正吉さんの言葉、うめさんに頼んだこと。
そして、炭坑に到着してサトシへのこのひと言。
視聴者も見たことのなかった怯えるサトシの様子。
様々な局面で雁助さんを育て上げて、今ここに輝かせる。
雁助さん名場面のひとつです。
[→11週その1、その2]
12週、雁助さんは加野屋不在ながら活躍。
炭坑を手放すことなく、サトシ事件が解決します。
サトシは因縁の幼馴染・松造でした。
その松造を「ひっ捕らえてやりたい」と雁助さん。
改めて炭坑に雁助さんを向かわせた正吉さんが名探偵。
「遠く北九州の地より」
「おいしいなぁ、これ」
うめさんのおにぎりを思い出しているような雁助さん。
そのころうめさんは…
亀助さんが席を立って空になった番頭台と雁助さんの文字を見つめるうめさん、切ない。
それからしばらくして、七代目加野屋久右衛門・白岡正吉が旅立ちました。
声を出さずに目尻にわずかな涙を浮かべている雁助さん。
手ぬぐいひとつ、目をふせれば思い出す、7代目加野屋久右衛門か。
故人に別れを告げたら歩き出す加野屋の皆々。
なんですが、ここに乙女が一人。
雁助さんからうめ宛てのお手紙届いた。
足ブラブラしてる姿にめちゃくちゃキューーーーン。
[→12週その1、その2]
年が明けて14週。
ふゆに「いけず!」と言われてしまい、へこむ亀助に対してうめさんのこの言葉。
「やっぱりよう働く男が好きやさかい」
雁助への思慕もつのらせつつ、亀助のまだ見ぬ前途も励ますうめの好プレーでした。
亀助夫婦は見事にゴールイン。
そのとき、雁助もお祝いにかけつけました。
この直前、うめはふゆに「自分に色恋はもう無縁だ」と言っていますが。
直後に雁助さんとこの笑顔で再会なんて、嬉しいんだけど切ない。
で、早速雁助さんは仕事の話。
銀行を推し進めたいあさと、銀行反対の雁助さん。
雁助さんがついていくのは大旦那様、守りたいのは加野屋。
溝が深まっていきます。
[→14週]
■榮三郎の成長
15週、五代さんをめぐる官有物払い下げ事件が描かれます。
が、そんなことは露知らず。
にらめっこ対決のふたり。
怖いよwww
そんなあさについて雁助さん。
「止まっとくことのでけへんお方やさかい」
今井家と正吉さんが不在となって存在感を増す大番頭さん。
うめから正吉の訃報が届いたとき、本当は加野屋を辞めようと思っていた雁助さん。
訃報を受け取ったときの手拭いを見つめていた雁助さんの描写を思えば、
雁助さんの手拭いには大旦那様への思慕や恩義が詰まってたとか改めて涙目。
このときのふたりの手元の描写が、近づきたくても近づけない2人のもどかしさを現しているようで、切なかったです。
雁助さんとあさの対立は続きます。
買い足しても爆発させても構わない。ただし自分は炭坑には関わらない。
炭坑事故の片付けとサトシの追及をしたのが雁助さんで、黒糖饅頭を知らない雁助さんだからこそなのでしょう。
雁助が臣従しているのは大旦那様。
多分榮三郎が炭坑に行けと命じても応じないんだろうな。
揺るがない雁助さんの思いにグッと来た瞬間でした。
世間では五代さんのスキャンダル発覚。
ですが、うめは日々の疲れでついにバテてしまいます。
おまえら付き合えよ!て言いたくなるくらいのじれったさ。
「たまには自分を大事にし。まあわてもやけどな」
こんなこと言われたら惚れるだろうが!
……いや、もう惚れてるか
それにしても「たまには自分を大事にし」って台詞。
字面通りうめさんにも雁助さん自身にも、物語全体にもかかってるのがすごい。
このあと、商法会議所であさ・新次郎・榮三郎が、五代さんの大阪商人への信用を取り戻します。
榮三郎の活躍がまあ見事なこと。
つまりもう、雁助さんは不要なのかもしれない。
そんなことが過ったりもしました。
[→15週、その1、その2]
■雁助さんのプロポーズ
16週、五代さんとの別れの週ですが……
(客に対して)「早帰っとくれやす!」
(榮三郎に対して)「元気出しとくれやす」
普段冷静であまり我を出さない人だからこそ、強い気持ちの表出はグッとくるものがある。
榮三郎が敵わないと思っていたあさに褒められるシーン。
その会話を聞く雁助さん。
変わっていく加野屋の中で、雁助さんが年季をかけて培ってきたものが段々と必要とされなくなっていく。
支えたい守りたいと思った人物も、気が付いたら一人でしっかり歩き始めている。
人生をささげようと思った場所がなくなっていくのは辛いものがある。
そして榮三郎が雁助に尋ねます。
「今でも店は銀行にせぇへんほうがいいて思てはるか?」
大阪財界に250年の重きをおく老舗加野屋。
改革を進めていくあさ、それを受け入れる榮三郎。
ベテラン大番頭・雁助さんが感じる「潮時」と独立話。
「ここがわての潮時だすのやろな…大旦さん」
「わても今は榮三郎さんの言うとおりやと思います」
雁助さんが思い出すのは、幼いころから臣従していた亡き大旦那様。
あさの「お家を守ること」と、雁助さんの「のれんを守ること」がイコールになればいい。
そうして盛り上がる雁助さんの思いと、それをずっと見つめてきたうめの思い。
ここでピークを迎えます。
「大奥様も新次郎様もおあささまも、みーんな雁助さんにいてほしいて思てはります」
「うめも」
うめが「自分も雁助さんにいてほしいと思っている」と伝えたそのとき。
「なぁうめ。わてと一緒にこの家出ぇへんか?」
「大店」「両替商」加野屋の「奉公人」として、幼い頃から今に至るまで「滅私」してきた雁助さん。
師とも父とも仰いだであろう大旦那様が旅立ち、支えるべき存在だった榮三郎も一人で立っている。
守りたかったのれんも支えたかった当主もそこにはもういない。
雁助さんは時代の流れに乗り損ねているわけではない。
ただ雁助さんは、自分の人生が「両替商の奉公人」にあるものだと思って生きてきたのかもしれない。
だとすれば銀行へ変わることは、アイデンティティの喪失に等しいわけで。
そんなとき、この気持ちを理解してくる女中と共に「一緒にこの家出ぇへんか?」と。
かまどドン、お湯バッシャーン
雁助さんの強い想い溢れて、水が沸いて噴きだすように雁助さん自身の心が火傷。
またジリジリ切ないなあ。
「うそや…うそだす」
「ほな、どこにも行かはりまへんな?」
渾身のプロポーズを「嘘です」、と明らかに嘘じゃない風に否定するのが雁助さん。
雁助さんの本音と「嘘」をわかったうえでの、最大限の気持ちだったのでしょう。
7週からずっと、ジワジワと描かれてきた2人の描写。
その答えは多分これ。
火傷を冷やしながら桶の中で手を握る。
熱病のようなほろ苦い恋での火傷、それをお互いに冷ますように手を握る。
あさとはつの姉妹や新次郎夫婦。
変わらない絆を手を握る描写で描かれてきたから、うめと雁助も心はそばにいられるものだと信じたい。
そして銀行開業の日。
どこか清々しい顔をしている雁助を新次郎が呼び止めて、「出ていくつもりだろう?」と尋ねます。
「やっぱりわては石やのうて、銭、金いう目に見えるようで、えたいの知れんもんを扱うのが好きなんだすわ」
明治に入って20年弱の間、雁助さんが目の当たりにした『時代の変化』は想像を絶するものだったんだろう。
その流れを真正面から受けて、居場所に迷う雁助さん。
そんな雁助さんに対する新次郎の誠実な姿勢に、心が動かされた2人のシーンでした。
そしてこの週後半、五代さんが旅立ちました。
[→16週その1、その2]
17週、週タイトル「最後のご奉公」。
「よしよしよしよし、賢いなあ。」
猫!猫!!
3週の猫案件回収!!
早朝の静寂の中で「騒がしくなる前に外に出さないと」と話す二人。
雁助さんは猫を追い出せないのか、それとも「騒がしくなる前に」外に出られない猫なのか。
あさが東京に行ってきた話で盛り上がる加野屋。
明治の偉人が次々と話題にあがるのですが……
「その前に伊藤様て…内閣総理大臣の伊藤博文閣下だすか?」
「さすがおあさ様や」
呟くように言う雁助さんが少し寂しそうに思えた。
生まれからしてまず違う。敵うはずもない。
この人から大事な人を取り上げちゃいけない、っていろんなこと考えてそう。
一方うめは、あさから「うめが大好きや」と言葉をかけられます。
「うめはあなた様といてんのが幸せなんでございます」
うめ自身が「ようよう考えて進んだ道」。
あさに『奉公』することがうめにとっての幸せで、アイデンティティ。
そんなうめのアイデンティティーを雁助さんがわからないはずがない。
雁助さんとうめさんの恋はきっと成熟したんだと。
中年のふたりのどこか切ないイノセントな家出計画。
娘が病気であり、看病のため愛媛へ向かうことを榮三郎に告げた雁助さん。
うめもその言葉を聞いていました。
「番頭さんが冗談でもいっぺんでも、うちに一緒に行けへんかて言うてくれはった…その思い出あったらうちはもう一生一人で生きていけます」
雁助さんの告白と、火傷を冷やしながら握った手。
そのときに2人の恋は成就していた。
「あんたはどうか、ずっとおあさ様のそばで頑張っとくれやすな」
「へぇ任しとくなはれ」
雁助さんは、うめにとってあさが娘以上の存在だってこと知ってるから。
だから自分と同じ思いをさせたくなかったのかもしれないな。
涙を流さずたたずむうめに、あさは相撲をもちかけます。
うめからこぼれる涙に、嫁入り前のあさの「何でどす」が重なる。
何で雁助さん元嫁のところに帰ってしまうんだす?
何でプロポーズしたんだす?
何で同じこと考えるんだす?って。
多分それはうめも答えをわかっていて。
でも口にしちゃいけない分別もついていて。
そして明治21年、両替屋・加野屋を母体に加野銀行が誕生。
あさが洋装を披露したハレの日の朝。
雁助さんが千代に言葉をかけました。
「わてなぁ苦手だしたわ。もうずーっと苦手だした。そやのにどっか楽しゅうてたまりまへんだしたんやな」
「お母様の働いてはる背中、よーう見ときなはれや」
雁助さんがあさと共に、大旦那様や新次郎、榮三郎と共に見てきたのは激動の時代。
しっかり立っていなければ振り落とされてしまいかねない時代。
それも全部「楽しかった」と振り返る雁助さんの強さにじんわりきた。
裏口から出て、正面で一礼してるのが雁助さんらしい。
歩いていく。大番頭の誇りを背に去っていく。
[→17週]
軌道に乗る銀行、動き出す女子大学校設立計画。
あさ自身も重傷を負い、何人かの登場人物が旅立つ中。
加野屋に届いたのは、雁助さんが大怪我を負ったという知らせでした。
榮三郎、新次郎、亀助、それからあさに促されたうめが神戸へ向かいます。
「せやけど見とくなはれ、この顔。今にも起き上がって『何してますのや』言うてしゃべりだしそうで」
こういうときに代わりにワンワン泣いてくれる亀助さんがいるから、うめの悲しさとか辛さとかも緩和されるのかなとか。
「お願いだす。お願いやさかい。もういっぺん目ぇ覚ましておくれやす。声聞かしとくれやす」
うめさんが雁助さんの手を取ろうとしたとき、あさがやってきました。
……と、あさちゃんが雁助さんの手を握るという。
あさちゃんwww
おまえやないwww
とめるうめにあさが話したのは
「自分が倒れたとき意識を戻せたのは話しかけてくれた新次郎やマッサージしてくれた千代のおかげだったから」と、自分が死にかけたときの話。
手を握ってもいい、触れていい、と。
あのとき、焦げた恋心を冷ますために握ったふたりの手が、今度は雁助さんの目を覚ますために握られる。
そんな刺激が引き金になったのかどうかはわかりませんが、雁助さん意識を取り戻しました。
「え?うめ?…何でや?何で?うめが……?ん…まあええか」
「よろし…よろしおました」
うめの「何でだす?」の答えを雁助さんが出したのかな「まあいいか」でまとまることもある。
生きていれば、それでよろしい、と。
それからしばらくして。
「雁助さんや!」
猫の鳴き声とは粋な演出。
一番はしゃいで駆け寄って、叩くなって言われてスリスリ撫でてる亀助さんかわいい。
毎回衝突しては仁王像のようににらみ合っていたのに。
こうやって「にっ」と笑いあえるようになったのなんだか感慨深い。
あさの成長を振り返るのが雁助さんってのが肝なのかもわからないな。
穏やかに笑いあうふたりの距離感がいい。
新次郎とあさのはからいで、うめと2人きりになった雁助さん。
雁助さんは「もう惚れた腫れたはない」と、なんだか男らしくない言い訳をしますが、それもまたリアルなんでしょうね。
でもうめさんはきっぱりと。
「シェッハン致しまへんか?異国では友情の証やそうだす」
思い余ってうめを引き寄せる雁助さん。
雁助さんの気持ちもうめさんの気持ちもお互いわかってて、でも添い遂げることは出来なくて。
「もういつ死んでもおかしくない歳だ、これが最後だろうから、最後だけ」なのかな。
添い遂げることはできないけれど、思い遂げることはできる。
強く生きようとするうめを包み込む、大番頭の手のひらの大きさよ。
「さよなら」
「へぇ、さいなら」
別れを告げてるのにどこか清々しい二人の表情。
かつてのあさとはつみたいにお手手つないで駆け落ちしましょ、って言いだしてもおかしくなかったふたり。
離れることになるけれど、心はどこかで繋がってる。
[→23週]
新次郎の見舞いにやってきた雁助さん。
妻に先立たれ、自身も隠居生活を送っているとのこと。
そんなとき、うめと2人きりになり…
「こないしてお互い生きてるかどうかくらい時々文でも書いて確かめ合おうな」
普段は何も思うことはなくても、その文字を見るだけで相手を思う気持ちになれる。
生きているということに希望を持てる。
シェッハン&ハグに、さらにこの結末にたどり着くというのが、『熟年たちのイノセントな恋』の成就としてとてもよかった。
[→26週]
何歳になっても恋は出来る、だなんて恋愛ドラマの宣伝文句のようだけれども。
新次郎とあさ、惣兵衛とはつに負けないくらいの甘酸っぱい雁助さんとうめさんの恋。
どちらもいい大人。(雁助さんに至っては結婚歴あり娘あり)
どちらも大切にしてきた仕事がある。
守りたい、支えたい人がいる。
特に雁助さん。
両替屋時代からの大番頭を通して、描かれる成長していくあさや、変わっていく時代。
そこに生きる人々の息遣いを感じます。
スピンオフのような、サイドストーリーのような。
大きな川の横の小さな支流のような、そんな雁助さんやうめさんの人物がとてもすてきでした。
こちらのまとめにぶつかりまして、少ーし気持ちを静めることができました。
更新大変だと思いますが、これからも楽しみにしております。
願わくば、白髪混じりになろうとも、うめの肩に回せなかった手の回収をしに、雁助には戻ってきてほしいと、切に願っております。
千代ちゃんが新聞を持つ後ろで、『あとやっぱりお隣?向かいのお店の暖簾の絵が気になる。星食べよを咥えてる裸のお姉さんに見えちゃうんだよなあ。』
細かい所を良くご覧になっていますね。目の錯覚で本当にそんな感じに見えますね。いろいろ調べてみたら、「浮線花菱(ふせんはなびし)」という家紋のようですね。実際にこの家紋の店が近所にあったのでしょうかね。
どうもありがとうございます。
名シーン多い中、雁助さんのシーンは1番2番くらいに食い込んでくるものだと私も思ってます。
うめとどこかで再会してほしいですね!
みどりんさん>
ありがとうございます。
そうなんです、星食べよのお姉さんに見えてしまって……笑
浮線花菱という家紋なんですね、ありがたいです、勉強になります。
雁助さんとうめさんがとにかく好きだった私。
なんという素敵なまとめでしょうか!
読みながら雁助さん、うめさん、ほかの皆さんの声が頭の中で再生されました。
途中から涙涙で、これはコメントせずにはいられない、とコメントを書きながらまた涙。
ついこの間見ていた気がするのにもう8年近く経つんですね。
いやあ、読み終えて大満足です、ありがとうございました。