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『べっぴんさん』7週 春の風に世界は素晴らしい

2016-11-19 14:39:23 | 朝ドラの感想
2016年後期BK朝ドラ『べっぴんさん』の第7週「未来」のネタバレ感想まとめ。


じんわり、じんわり……



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●すみれ


第7週「未来」はすみれに焦点が当たる週です。
ここまで君枝ちゃんや良子ちゃんなど「周りの人の幸せ」のために、脇に徹してきた主人公らしくなかったすみれ。
彼女の心情に焦点が当てられます。


先週の6週終わり、すみれの元に紀夫の両親が訪ねてきて、紀夫の戦死の可能性を伝えました。

「どうか、紀夫に縛られないでください」
「すみれさん、あなたには未来があるのよ」


とはいうものの、そう簡単に受け入れられるものではなく。

すみれと紀夫。
2人の新婚生活の描写は決して長いものではありませんでしたが、とても印象に残っています。

 
『べっぴんさん』2週

すみれとの生活を心から幸せに思っていた紀夫。
誕生するさくらに会わずして出征した紀夫。

その紀夫が帰ってこない。


周りの人たち励ましてくれるけど、紀夫が帰ってこない。
生きているのか死んでいるのかもわからない。

涙が堪え切れない。




すみれの暗い表情から何かを察知した明美ちゃんがハンカチ渡すシーンの構図。
これまでストーリーから外れていた、ある意味主役らしくなかったすみれ。
少しずつ中央よりになって、物語の真ん中に入ってくる。

明美ちゃんは「淡々としとき」と言ってくれるけれど。
それはわかっているのだけれど。


「さくら…あなたのお父さんは、あなたがこの世に誕生したと知ったとき、空に向かって叫ぶほど喜んでくれたのよ」
「会いたいねえ…会いたいね…」


ナレの「淡々と、淡々と」の寂しそうな響き。
桜の蕾、焼け跡の街。
無音。

すみれの涙。
静かに入るBGM。
木々を揺らす風。


全部噛み合った感じでよかったです。
劇的な感動というよりも、じんわりしみる感動。


 

ドラマ中、ここに紀夫の回想シーンは入りません。
芳根さんの涙をアップで長回し。
演者の力を信頼しきってる覚悟の演出に思わずうなります。

それだけでも十分凄いのですが、すみれ役・芳根京子さんのブログ『芳根京子のキョウコノゴロ』で、撮影秘話が明かされました。


このシーンは演出のもじりさんのご配慮で、
テストでの力の抜き方が下手で、
さらに台本に「泣く」と書いてあるお芝居が苦手な私のために、
一発本番でやらせてくださいました。

『芳根京子のキョウコノゴロ』より)

今日のあの神長回し、本番一発撮りかよ…!




●花売りの少女




落ち込むすみれを励ました人物の一人が明美ちゃん。
若くして身寄りを亡くした彼女は、「淡々としていたらいい」と支えます。

その明美ちゃんの優しさを演出したのが花売りの少女。



道端に座るその様子は、かつての明美ちゃんでした。
そんな少女から花を購入する明美ちゃんの優しさがありました。

 

さりげなく飾られる花。

家族を亡くした少女と、同じように家族を亡くした明美ちゃんが知っている不安や孤独。
それを知っているから、今人に優しくすることができる。

淡々とした時間の中にも、温かいものを感じます。



「あんたの旦那が死んどるか生きとるか、あんたが決めたらええ。決めたら楽やで」

決めることはとてもつらいことだけれど、誰がすみれを責められるはずがない。
そうやって生きていくしかないんだ。

「淡々と、淡々と」
そうして生きてきた明美ちゃんの言葉が、心に染み入ります。



●優しい青年


すみれを支えた人はもうひとり。
栄輔でした。



闇市で偶然見つけたオシャレな傘。
それは岩佐家で作っていた傘でした。


「きっと栄輔さんの思いが引き寄せたんやね」
「すみれさんもきっとやで。強う思うてたら願いはかなうもんや。頑張りや。」


傘というのが何ともな。
雨の日にしか使わないけれど、冷たい雨から守ってくれる優しい傘。




栄輔がすみれのことを想っているのは確かなのですが、ここにきて問題が一つ。
さくらが栄輔になつき過ぎてしまっている。



笑顔を取り戻してくれるのはいいことなのだけれど、栄輔になつき過ぎてしまっている。

父親が不在のさくら。
淋しさのあまりか、ある日栄輔が帰ろうとすると「いやだ」と引き留めてしまいます。
成り行きもあって、すみれ・さくら・喜代さんの暮らすバラックに一泊することになった栄輔。



お風呂上り、縁側で。
懐かしく思い出を語るように自分の家族のことを話し始めました。

笑いの絶えない家だった。
みんなが仲良かった。
洋裁が好きな可愛い妹がいた。

そんな栄輔にさくらは「お父さん」と。


戦地から帰ったら、守りたいものはもう何もなかった。
潔に拾われてすみれたちと出会って、また新たに守りたいものが出来た。


「3人で一緒に見ような」

とても幸せそうに見えるから余計に切なかったですね…
見ている側としては、初回のアバンで紀夫が帰ってくることはわかっているわけです。
そこに栄輔がいないことも。

栄輔が去っていくとき、カメラの動きがゆっくりになり、この人はこのまま姿を消してしまうのではないかという予感が脳裏をよぎりました。



●坂東家を守る


そんな栄輔を近くで見ている潔。
忠さんに言われてやっと、栄輔とすみれの関係に勘付きました。(鈍いな!


(まさか忠さんが女子力高いおっさん枠だったとは)

「おまえ、すみれちゃんに惚れてるんやないか」


自分らはあくまで坂東家に仕える身なんだ。
彼女たちを守らなければいけないんだ。

しかし栄輔も言い返す。

「そういう考えやからゆりさんに遠慮しとんのか」
「どっか上っ面でほんまに思てること言うてない」


番頭の精神が抜けていないから、だからゆりにも五十八にも何か煮え切らない態度なんだ。


「わしは自分の生きたいように生きますわ」

そう言い切った栄輔は、すみれを前にしているときの優しい栄輔とは違う人物でした。



●未来へ


少しずつですが確実に時代が変わっていきます。

 
「ここが安心できる場所やと言われるように自警団を作ろうとおもうんや」
「時代は変わるんや。変えなあかんのや」




靴磨きの少年にお客さんがやってきた。
革靴の手入れが必要な人が増えている。



ゆりの背中を見て潔が動いた。



ベビーショップあさやも、新しい店舗に移転。


未来が少しずつ動き出します。




●光の射す方へ


降りしきる雨の中。


ひとり、動けなかったのがすみれでした。
栄輔が泊まっていった夜、紀夫のことを強く思い出したのでしょう。
栄輔は確かに優しい。
でも会いたいのは紀夫だ、と。

五十八はすみれに「前を見ろ」と言うも。


「前…?前ってどこですか?」
「紀夫さんのことを考えることは、後ろを見ていることやと、お父さまはそうおっしゃるんですか」


雨の中、飛び出してしまったすみれ。
すみれを慌てて追いかけた栄輔は、あの傘を渡します。

紀夫がいない未来も考えろと言う。
明美ちゃんが励ましたものの、悲しみは募るばかり。

翌朝、栄輔がやってきて──


「心配しとった。一人でどんだけ辛い思いしとるんやろ思て」
「わしで…わしでよかったら…」


すみれに思いを告げようとしたそのときでした。
紀夫からの手紙が届きました。

「すみれ。すみれが無事でいることを信じています。桜の咲くころ帰ります。早くすみれに会いたいです。坂東紀夫」



ずっと、ずっと待っていた。
やっと、やっと。


すみれの暗闇に光が射した瞬間でした。



●やがて春が来て


刻々と時間が近づきます。

 

ゆりと潔は、近江と大阪に分かれ、かつて五十八とはながやっていたように商いをしていくことに決めました。



花売りの少女の花が売れ出した。



なのに。
すみれの心がやっと晴れてきたのに、今度は自分の心が辛い。



●桜の花の咲く季節に


桜の花の咲くころ。



紀夫が帰ってきました。

喜びを爆発させる紀夫。
涙を流すすみれ。
突然現れた復員兵が誰なのか分かっていない様子のさくら。

でも、生きて帰ってきた。
よかったね、すみれ。






今週、劇的な展開というのはラストの紀夫復員以外はさほどなかったのですが(栄輔宿泊もある意味驚いた)。
じんわりじんわりと、対比構造でえぐられるものがありました。

特に栄輔。
これまであまりクローズアップされた人物ではありませんでした。
「トンチキだな」くらい。
すみれに惚れてるとはいえ、どの程度でどの角度で惚れているのか。

その心境をうまいこと対比で表していたなと思います。

 

 

花売りの少女が明美ちゃんを象徴していたように、靴磨き少年は栄輔を印象付けていました。

そしてこれ。
去っていく栄輔と、帰ってきた紀夫がほぼ同じ構図。


 

栄輔がおバカだったり本当にトンチキだったりしたらまだ笑える要素があるものの。
普通に普通のいい人だし、すみれへの恋愛感情というより家族へのなつかしさがガンガンに溢れてるいい人だから、余計に辛い。




●おまけ








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