前回は「良い会社とは」という内容でしたが、今回はブラック企業について私が普段考えていることを少し書きます。
私は今、ハローワークに所属していることもあって、たまに学生や学校関係者から、「ブラック企業のリストってありませんか?」などと聞かれますが、そんなものは存在しません。(少なくとも私は知りません)
有るとするなら、法的な根拠に基づいた処分対象(営業停止命令など)のデータですが、そんなものは容易に外部に出せるはずもありません。
しかし、現場で感じていることは、確実にブラック企業の定義付けを明確化しているように思う対策が多いということです。
その一つに、求人票記載の条件と、実際に入社した後の条件が違った場合の対応が、以前よりも厳格になったという点が挙げられます。
以前から、あまりにも違う場合や悪質な場合は一定の行動指針のようなものがあり「事業所への指導」という形で是正を促していましたが、今では少しの違いでも、まずは詳細に聴き取り、本人の意思によって事実確認をするようにしています。
だからと言って、直ぐに法的措置が取られる訳ではないし、実際現場では相談に訪れた本人も「会社には言わないで欲しい」というケースが圧倒的に多いのも事実です。
また、求人票を受理する際に、問題になりそうな点はないか、今までは良かったが今後はどうか?という疑問点を改めて確認するよう努めています。(場所によってその度合いは違うようですが)
一般的なブラック企業の定義(のようなもの)は、残業や休日労働があまりにも多く、その残業代も支払われない、代休も与えないといったケースがエース級で、続いてセクハラ・パワハラ・社内のいじめ問題・高すぎるノルマ・自腹戦略など、いろいろな定義付けがなされているように思います。
しかし、私がいつも感じているのは、それは結果であって、原因はどこにあるのか?ということと、そもそもブラック企業はコンプライアンス以外に定義付けできるのか?ということです。
いわゆるブラック企業と揶揄され、ネット上で色々書き込みされているような会社でも、現実には法に抵触することなく、しっかりとした利益を上げ、経営者もごく普通?の生活を送っている会社など山ほどあります。
偽装や詐欺行為など違法行為や社会的な問題を起こした会社が、よく調べると実はブラック企業だったというケースも多いと思いますが、だからと言ってブラック企業のすべてが法を犯すことにはならないのも事実です。
私は、誤解を恐れず言うと「ブラック企業は社員が作っている」と思っています。少なくとも、創業者はその会社を起こす場面において「将来はブラック企業と言われるような会社にしよう」などと考えるはずがないからです。
しかし、全ては経営者の責任です。なので、あえて言うなら、常に初心に戻り社員の声に耳を傾けて欲しい、それが難しいなら信頼ある言動を示して欲しいと思います。
私が言いたいのは、ブラック企業は社長だけが作っていくものではなく、社員もその手助けをする、または社員がその種を蒔いて育てるというケースさえあるということです。
力関係の中では、そう簡単に上司に、ましてや社長に進言できないということも、社長や上司が、自分の考えや思いがなかなか社員に浸透しないことも百も承知ですが、会社の業績を上げる原動力の一員としての自覚があるなら、会社をブラックにする原動力の一員でもあることを分かって欲しいと思います。
ブラック企業は一職員でも新人社員でも、パートやアルバイトでも、すぐに作ることが出来ます。
だからこそ、定義付けが難しいのではないか?と私は思います。
自分の会社を良くするも、悪くするも、自分の責任において可能です。
これから社会人を目指す方。既に社会人になっている若者には特に、「会社は社員が創ってゆくもの」という気概をもって欲しいものです。
自分の会社はブラック企業だから…と思っているなら、まず自分のできる事から脱ブラック活動を開始して欲しいと思います。
それは、法的にどう考えても違法だと思うような行為を、勇気をもって然るべき機関に発信することと、法的には問題はないけど、人としてどうかな?というケースの時は自分で抱え込まず、信頼のおける人に相談することです。
自分ではよく分からない、判断できないというケースも多いと思いますが、できることなら常に仕事上での相談相手を作っておくことをお勧めします。
私は、この世からブラック企業を根絶したいと思っている一人ですが、それには普通に働いている普通の人たちの、普通の言動のほんの一部を変える事が必要だと考えています。それは「意識の変化」です。
ブラック企業は社員が作る。良い企業も同じく社員が作るのです。どうせなら、良い会社作りに貢献したいと思いませんか?