志望動機・自己PR・趣味・特技などはよく登場しますが、一味違うアピールをしたいなら、あえて飾らず媚びず、素の自分を開示することをお勧めします。
(1)志望動機に関する固定観念を捨てよう
「企業理念」は的外れ
ほとんど全ての企業が様々な表現で志望動機を尋ね、多くの人がその回答に悪戦苦闘します。
それは、志望動機が、その答えによって採否を左右する程の重要な質問である事を誰もが認識しているからです。
しかし、多くの人が志望動機に「企業理念」を取り入れており、採用担当者をガッカリさせている事を知りません。
実は、志望動機に企業理念を取り入れるのは的外れだからです。
では、どのように攻略すべきかを紹介します。
そもそも、企業はなぜ志望動機を尋ねるのか?志望動機とは何なのか?との問いに明快な答えを持っている人はほとんどいません。
単に「志望動機は重要だ!」と思うだけでなく、なぜ重要なのかを考える事が、攻略のカギなのです。
では、志望動機について説明して行きます。
まず”志望”とは「望みを持って志す事」ですが、言い換えると「自分はこうなりたい(こうしたい)」という意味です。
そして”動機”とは「行動を起こす直接の原因または目的」ですが、言い換えると「なぜなりたいの?(なぜしたいの)」という意味になります。
この二つを合わせると「自分は○○になりたい、なぜなら○○だからです。」となります。
つまり、志望動機は貴方の未来を尋ねるための質問なので、貴方が応募するに至った経緯(過去の出来事)ではなく、入社後の貴方は何がしたいか、どうなりたいかを尋ねる質問だという事です。
多くの人が「貴社の○○という経営理念に感銘し・・・」という旨の回答を書きますが、実はこのフレーズは的外れな回答という事になります。企業理念は多くの人が感銘するような語句で書かれているので、それを伝えるだけでは、貴方の未来姿は分からないので、結局何も届かないのと同じ事になります。
ほとんど全ての企業は、貴方が思った「この会社を受けよう。」という”過去の思い”より、「この会社に入社して○○がしたい、○○になりたい。」という”未来への思い”の方を重要視します。
従って、企業が志望動機を尋ねるのは、「貴方はちゃんと先の事を考えて当社に入りたいと思っている人なのですね。」という確認をしたいからです。
言い換えると、「一時的な衝動で応募した人かも知れない。」または「とりあえず内定が欲しいからという理由だけで応募した人かもしれない。」だから、志望動機を尋ねて本気なのか確認しよう、という意図があるのです。
但し、質問の中には「貴方が当社を志望した”きっかけ”は何ですか。」「貴方が当社を知った経緯を教えてください。」などという明らかに過去を問う質問もありますが、この場合は質問に従って、過去の思いを回答すれば良いのです。しかし、企業理念は出来るだけ避けた方が良いでしょう。
または、「貴方は将来どんな仕事がしたいですか。」「10年後の貴方はどうなっていますか。」などという、明らかに未来を問う質問には、そのまま未来への思いを回答します。
しかし、分かりにくいのは、「貴方はなぜ当社を志望するのですか。」あるいは単に「志望動機」という場合ですが、この場合もやはり未来への思いを回答すべきです。
本来、動機とはこれから行動を起こすという未来に向かっての方向性を意味する言葉でもあるからです。
志望動機は「立派」でなくても良い
志望動機においてもう一つ重要な事は、志望動機は必ずしも立派でなくても良いという事です。
また、単純明快な程、他者に理解され易いという事です。どんなに立派で高尚な志望動機でも、その説明が難解で相手に理解されなければ、単なる宣言や標語になってしまいます。ましてや、志望動機が立派過ぎて実現できないとなれば本末転倒です。
志望動機には立派さや高尚さよりも、実現性や期待性の方が重要です。
言い換えると志望動機は思想や夢ではなく、実行・実現だからです。
従って、貴方がしたい事(なりたい自分)、なぜそうなのかを純粋に表現する事だけで良いのです。
未来に向けた、実際の貴方の姿を示し、相手に期待させるために書くのが志望動機です。
志望動機には「手法と期限」が必需品
最後に、志望動機にはどのようにしてそれを実現するのかという手法(手段)と、それを何時までに実現するのかという計画性が必要不可欠です。
前述の通り「自分は○○になりたい、それは○○だからです。」と言うのが志望動機ですが、どの様にして何時までにという説明がなければ、単なる”意気込み”に過ぎないからです。
どんな質問もそうですが、まず相手に理解されて初めて判断材料となります。
採用担当者は単なる意気込みだけでは判断できないので、それが意気込みだけではなく、実現可能な未来図だと知ってもらうために「手法と期限」を入れて伝えるのです。
以上をまとめると、志望動機には、①単純明快な表現②具体的な目標や期日③手法(手段)の3つの観点が必要となります。
(2)自己PRで「宣伝」すべき事
自己PRの意味
自己PRは志望動機と同じく、ほとんど全ての企業が様々な尋ね方をします。また、企業にとっても、貴方にとっても、大変重要な質問と言えます。PRとは、単に宣伝(広告)と訳されます。
従って自己PRは「自分を宣伝する事」と言う意味となります。
しかし、多くの人は自分の宣伝をする時に「自分の実績や誇りとなる出来事」あるいは「自分の強み」などを探します。確かにそれはそれで間違いではありませんが、採用担当者の多くが知りたがっているのは「貴方が周囲の人々に、それについてどの様な評価を受け、どんな印象を与えている人か。」です。
本来、PRとは「Public Relations」の略語で、直訳すると「公的な関係性」という意味になります。
つまり、自己PRとは「自他共に認める(公の)自分を開示する」という意味になります。
人は誰でも、普段の人付合いの中で、互いに影響し合います。そして、様々な印象や評価を受けます。
“実績”や”誇りとなる出来事”や”強み”などは、そのほんの一部に過ぎません。
ましてや、自己PRは自慢でもなければ、謙遜でもありません。さらに言及すると、人に誇れる実績だけが、自己PRのネタではなく「自分が人にどの様に評価され、どんな印象を与えているのか。」を表明する事が主題でなければなりません。そして、実際に周囲の人に聞いてみて下さい。
人に確認し、自分でも振り返り、自他共に認め知っている自分を探す事が自己PRの攻略法です。
これから関わりを持つ人々に、貴方がどんな影響を与えて行きたいのかがアピールすべき内容です。
長所と短所の答えは自分の外にある
自己PRには、長所・短所を先に尋ねた上でPRさせる方法や、単に長所・短所だけを尋ねる場合、さらには、そのどちらか一方だけを尋ねて、長所なら仕事に活かせる場面を、短所なら改善努力などを尋ねる方法もあります。いずれにしても、この質問は「自分の価値」を問われていると捉えましょう。
実は、長所・短所というのは「誰にとっての・・・」という視点が重要です。
ほとんど全ての人が「自分にとっての」長所・短所を考えてしまい、結果的に「好きな自分が長所、嫌いな自分が短所」というような判断をしがちですが、それは半分間違いです。
先述に“自分の価値”と大袈裟に表現したのは、単なる「好き・嫌い」で決めて欲しくないためです。
この質問で、採用担当者が本当に得たいのは、「周囲の人にとって・・・」という視点に立った情報です。
貴方の本当の長所・短所は、貴方の周囲の人が既に気づき、知っています。
本来、人の価値は他者が決めるものです。
勿論、自分を客観的に見るのは大切ですが、他者が貴方を必要とするか否かは、貴方が他者にそうするように、貴方と関わりを持つ人が決めるのです。
つまり、自分の長所・短所は自分だけでなく、周囲の人がそう思っているのかが重要なのです。
前述の「公の自分」をさらに分類し、良い影響を与えている部分が長所、何も与えていないか、迷惑となる部分が短所という解釈をしてみて下さい。やはり、実際に人に聞いて確認するべき質問です。
そして、周囲に良い影響を与える部分の長所を、今後さらに磨きをかけて成長する自分を魅力としてアピールし、短所は課題意識を持って改善に向けて努力している自分をアピールすれば良いのです。
自己PRに大切な方向性
これまで、自己PRは「公の自分」という視点で説明して来ましたが、もう一つ大切な視点があります。
それは、「未来の自分(だれも知らない自分)」の創造という視点です。
「今の自分が将来どんな自分になっていたいか。」あるいは「将来自分はどうあるべきか。」という未知の領域を想像し、実現させるプロセスを考えなくてはなりません。
応募書類に書く未来なので、単なる夢や希望ではなく現実的でなければ相手に理解されません。
自己PRの回答で、貴方が最も力を注ぐべき宣伝要素は「期待感」だと言えます。将来の自分の価値を企業に期待させる事が「宣伝する」という事です。
そして、期待感を伝えるために必要なのが、準備作業です。ただ単に「○○になります。」と書くより、
「卒業までに○○の資格を取得します。」「既に○○を始めています。」など、○○になるための、未来に向けた準備行動を示して期待感を与えることが、宣伝の要です。
この点は、志望動機と同じです。単に表明するだけなら誰にでも出来ますが、何時までに何をするのかを明確に書く事で強い意志や熱意が伝わりやすくなります。
(3)趣味・特技・資格は自己PRの補足と捉えよう
趣味を尋ねる意図
企業の多くが趣味を尋ねますが、それには2つの理由があります。
1つ目は、貴方の価値観・興味嗜好・交友関係・知識レベル・行動範囲・運動能力・性格などの、内面的な人柄や普段の貴方を探るのに非常に都合の良い質問だからです。
2つ目は、ストレス発散や、気分転換の方法や環境を持っているか否かの確認です。
一方、回答する方は「素の自分」を表現できるメリットがあると捉える方が良いでしょう。
自己PRでは、どうしても”仕事をする自分”という観点になりますが、趣味なら、自分の交友関係や熱中している物などを通して、自分の感性などの内面的な部分を知ってもらう事が出来るからです。
また、どんな仕事にも、ある程度の身体的、精神的負荷がかかるものですが、それを自分でリセットできる手法や環境を持っている、心身の管理能力という点でもアピールが出来るからです。
特技は”自慢”にあらず
趣味と同様に、特技を尋ねる質問にも、貴方の内面的な部分を知りたいという意図がありますが、さらに付け加えると、貴方の自信の源、または努力の証しなどを問う質問です。
特技は?と聞かれて、即座に答えるには、ある程度の自信が必要です。また、その特技が時間をかけて努力して習得したものなら、なおさら貴方の自信や誇りとなっている事でしょう。
しかし、企業が本当に知りたがっているのは貴方の自慢話ではありません。
特技を尋ねるのは「自分らしさを表現する手段」「自分の好きな能力の一部」を持っているか否か、またそれを、他者に言えるのか、という事です。
単に、人と比較し、競い合った結果、優れているから、勝るから特技とする。という考えは間違いではありませんが、それだけでは”浅い”という事です。
特技とは、技術的に優れているものだけではなく、個性の表現に役立つものという見方もあるからです。
例えば「ものまね」などが良い例です。決して上手ではなくとも「ものまねが特技です。」と言えば、ものまねで自分の個性を発揮し、周囲を和ませる人として、自分を宣伝できます。
問題は「どんな事を書けば良いか。」「特に際立った特技などない。」などと思っている人です。
先に言いますが「特にありません。」は書いてはいけません。
例えば、「漢検1級を目指して勉強中」「習字の猛特訓中」など、現在特技を習得中という情報や、「人の顔を覚えるのが得意」「臭いだけで誰だか分かる」などの”本能的な特技”でも良いのです。
さらには、これから身に付けたいと思っている特技を書くのも良いでしょう。
ここで分かって欲しいのは、特技=自慢ではないと言う事です。
「資格があれば安心」は迷信
多くの人が勘違するのが、資格を尋ねる質問への回答です。
「たくさんある方が良い。」「無いよりあった方が良い。」「資格がないのでどうしよう。」などと考えている人は、もう既に勘違いモードに入っているので、魅力的な回答が書けません。
資格の回答が重要な意味を持つ場合は下記の2つしかありません。
1:有資格者しか従事出来ない専門業務に応募する場合。(保育士・看護師・薬剤師・栄養士など)
2:企業が有資格者を求めている場合。(運転免許・簿記・医療事務・TOEIC・MOSなど)
企業は、単に貴方の資格の有無や数を知りたいのではなく、やってもらいたい仕事に必要な要件を満たす人か否かを確認したいので、資格を尋ねているのです。
上記1の場合は当然ですが、2の場合は企業の求めている資格を持っている事を明確に伝えるだけで回答となります。この場合はクローズクエスチョンと同じという事です。
問題は、求人情報には資格不問と書かれているのに、資格を書く時です。(履歴書など)
この場合はオープンクエスチョンなので、自己PRの補足として自分の興味のある事や、これから勉強したいと思っている事などを書くと良いでしょう。
または、自分の勉強方法や物事を記憶する手法などを紹介して”学習に対する姿勢”という観点で自分を宣伝するという手もあります。
勿論、企業は求めていなくても、自分自身が仕事に必要だと思う資格を有していれば、それを書くのも良いでしょう。
しかし、その場合はどんな場面で役立つと思っているかまで書ければ尚良いでしょう。
多くの資格を持つ人の宣伝法
前述の通り、資格は単なる数の問題ではありませんが、多くの資格を持つ人、中でもその資格を懸命に勉強して取得した経験のある人なら、尚更アピールしたいところとなるでしょう。
企業側が何も求めていなくても、資格の回答欄に書ききれない程の資格名を記入している人は多くいますが、実は単に列記しただけの資格情報は、読む側に取ってはそれほど重要な意味を持ちません。
いかに多くの資格を持っていても、職務上(実践で)使えるかどうかの方が大切だからです。
ではどのようにすれば、上手くアピール出来るのかを紹介します。
前述のように、資格も自己PRの補足であり、自分の内面的な部分を表現しやすい項目でもあります。
例えば、資格の多さに的を絞って、勤勉さや好奇心旺盛な部分を強調する手法、難易度の高い資格取得に的を絞り、その勉強法を披露するなど、資格名よりも、その資格の取得に至った経緯を軸に自分をアピールする手法、さらに資格取得のために日々の努力が実った一つの成功例としてアピールする手法などが挙げられます。
または、資格取得の実績を、物事に取り組んできた「証し」と捉えて”成果にこだわる自分”をアピールする事も有効な表現法と言えます。多くの資格を持つ人は、単に書き連ねるだけでなく、自己PRの一部として上手く用いる事をお勧めします。但し、どの程度で多いと判断されるのかは、人によって違いますので、周囲の人に相談すると良いでしょう。
次回は、印象をアップさせるテクニックについて書きます。