今回から「魔法の添削」と題して、応募書類に関するお話をして行きます。
この時期から応募書類の話題を始めることにしたのは、既にエントリーシートや履歴書を悪戦苦闘しつつも何とか書き上げて提出しても、書類選考で落とされたという苦い経験をした人が多い時期だからです。
つまり、何の苦労も感じることなく書けて、選考を通過している人にはどうでもよい情報となりますので、これ以上読む必要はないと思います。
ここから先は、書類を書くのがどうも苦手だという人、またはこれから応募書類を書き始めるという人に絞っての情報となります。
これから述べる事は、単に書類選考を前提とした攻略法ではありません。
書類選考があろうとなかろうと、就職活動をする上で書類作成は避けて通れない行為であり、自分を他者に理解してもらうために書くのが応募書類です。
つまり、これから述べる事は「自分を文章や言葉で表現する力を伸ばすための攻略法」です。
基礎知識1
履歴書・エントリーシートの役割
履歴書やエントリーシートなどの応募書類は、貴方の事を何も知らない相手に、貴方を分かってもらうために作成します。それを読む企業の採用担当者は、まだ何も知らない貴方を想像、理解、判断するために読みます。貴方自身よりも先に相手に届き、貴方の分身となるのが、応募書類の大きな役割です。
また、応募書類は単に書類選考のために必要なものではなく、その後に予定されている面接での質問の参考になるという役割もあります。従って、応募書類を書くには、面接まで意識して伝えたい内容を精査し、言葉で伝えるのか、書いて伝えるのかを区別する事から始まります。
応募書類の種類
一口に応募書類と言っても、その種類や様式は様々あり、企業によって求めるものが違います。
エントリーシートの他、履歴書(学校発行、市販のもの)・面接シート・応募者登録シートなどがあります。また、企業によっては成績証明書や卒業見込証明書を要求したり、資格が必要な仕事の場合は資格証明書や資格取得見込証明書なども求められます。
応募書類は、企業が応募者に求める全書類の総称です。どの企業にどの書類が必要かをしっかり整理し、期日に間に合うよう準備しておきましょう。
添え状とは・・・(送り状・送付状とも言います)
添え状は、応募書類ではありませんが、応募書類を郵送する時には一番上に重ねて入れるのが常識です。
添え状とは、送った相手に対して貴方の代わりとなって「挨拶」をする役割を担う、重要な書類です。
添え状の書き方は、ハローワークや大学の就職課に具体例が紹介されているので、それを手本として自分のスタイルを決め、パソコンで作成すると良いでしょう。
エントリーシートには意図がある
応募書類の中でも、企業の特徴が現れるのがエントリーシート(以下ESと書きます)です。
ESには、企業側の意図が必ずあります。質問内容は勿論、様式や文字数制限、提出期限、さらに書かせるタイミングに至るまで、応募者から得たい情報を、出来るだけ分かりやすく整理でき、なお且つ適正な判断ができるよう工夫されています。また、企業側の意思が及ばない履歴書や、自由な表現を求める自己PR書でも、その内容から何を得ようとするのかを、採用担当者は予め明確に決めています。
読む方は目的を持って真剣に読みます。なので、書く方も真剣に書かなくては理解されません。
最も理想的なのは、企業側の意図を理解し、それに沿った回答をする事ですが、現実はそう簡単に行きません。しかし、分析や推測をする事はできます。企業研究や先輩に聞くなどの情報収集は勿論、会社説明会などに積極的に参加して、企業の担当者の話しを直接聞く事が重要です。
提出期限から推測できる企業側の意図
応募書類には必ず提出期限がありますが、その期間設定にも企業の意図が現れます。
単に提出期限が遅いからゆっくり書けるとか、期限が早いから書き難いというような、書く側の都合だけで捉えては危険です。また、「早く提出する程良い。」というのも短絡的です。一番に届こうが最後になろうが、採用担当者にとっては、早さよりもその内容の方が重要です。(但し期限を過ぎる事は論外です)
期間設定は会社の都合ですが、単に日程上の問題だけではなく、「これくらいの期間でないとしっかりした回答は得られない。」「短い期間だが、この程度なら答えてくれるだろう。」など、欲しい情報に見合う期間や、応募者への期待値などを考慮して決めます。早く出す事だけにこだわり、内容が不十分なままでは、結局相手には何も届かない事になります。
対策としては、提出期限内に相手の手元に確実に届ける為には、遅くても何月何日何時までに発送すればよいかという期限を予め逆算しておく事です。そして、例えば2日かかる見込みであれば、その1日前つまり3日前には発送するよう心掛けましょう。
ケース1:説明会などで、応募希望者にその場で書かせて直ぐに提出を求める場合(または1週間以内に提出)
意図「就職意識の高さ、動機の強さを伺う」
しっかり書けている人=意識・意欲・準備力が高いと評価される
表層的にしか書けていない人=意識・意欲が低く、準備が不十分と見られる(とりあえず来ましたという感じ)
ケース2:配布後2週間以上の期限を設定している場合(WEBエントリーも同じ)
意図「研究意欲や準備力、さらに志望度の高さを伺う」
しっかり具体的に書けている人=よく調べて準備力があり志望度が高い人
そうでない人(パッとしない内容)=準備力も志望度も低い・ついでの応募?
※「準備力」とは、今後起こりうる事を予測し、事前に計画性を持って適切な準備ができる能力の事で、仕事においては重要な要素と言えます。
応募書類を書くには、ある程度の準備が必要です。その二本柱は「自己分析」と「企業研究」ですが、一般的には早い段階でそれらに取り組んでいる人は、就職に対する意欲が強いと判断されます。
しかし、単に早くすれば良いというものではなく、そこに「主体性」があるかが最も重要なので、まずは自分に真摯に向き合う覚悟が要ります。
周囲の雰囲気に呑まれて、何となく活動していると感じる人は、直ちに良き相談者を探してください。
文字数制限と文字の大きさ
文字数制限は、単に企業側の都合だけではなく、その人の「伝達力」も判断されるものと捉えましょう。
また、応募書類の中には、履歴書の様に枠のみが指定されていて、文字数制限のないものもあります。
いずれにしても、限られた条件で的確に伝達する能力を判断されると捉えた方が良いでしょう。
文字数制限から垣間見える能力 ※文字数は句読点も含みます(あくまでも目安です)
30以下:短いフレーズや言葉で物事の核心を表現できる「発信力」
300程度:発信力+伝えたい情報を的確かつ簡潔に伝える「まとめ力」
600程度:発信力+まとめ力+伝えたい情報に信憑性を与える「ストーリー力」
600以上:発信力+まとめ力+ストーリー力+価値観・情景・背景など世界観を感じささる「演出力」
一般論として、短文は結論→説明→総括の順に書くと良いと言われますが、長文は起承転結が基本です。
但し、小論文や企画書、プレゼン資料などは、それぞれのノウハウを研究して下さい。
point
まず確認すべきは、自分の文章力と癖です。書くのが苦手な人ほど早く練習に入りましょう。
ここでいう癖とは、自分が長文の方が得意か短文の方が書きやすいか、または文章より箇条書きが好きかなどを、自らが分析・確認しておく事です。(授業中に使っているノートにそのヒントが隠れています)
長文が好きな人は、要点をまとめ、短い言葉で言い換える(書き換える)練習をすると良いでしょう。
短文や箇条書きの方が好きな人は、登場人物や状況説明を意識して書く練習をすると良いでしょう。
文章が苦手な人は、無理しても本や新聞を読む事や、日記を書く習慣をつける事をお勧めします。
応募書類無くして就職はあり得ません。書く事を敬遠し遠ざけようとする人は論外です。
文字数制限がなく、枠だけが指定されている場合
(文字の大きさと文字数の割り出し方)
1:まずは、あまり考えず、いつもの調子で何か思い当たる文章を書いてみます。
2:書いた書類(紙)を、自分の手で持ち、一番離した状態でしっかり読めるかチェックします。
この時点でよく見えなくなる文字がある場合は、貴方の書いた文字は小さすぎです。(書き直し)
3:自己チェックが終わったら、身近な人に見せて大きさをチェックしてもらいます。
重要な事は、単に見えるか否かではなく、詳細に見てもらい貴方の「癖」を探してもらう事です。
句読点だけがやたら大きいとか、「し」や「い」だけやたら細いとか、具体的な指摘をしてもらう事。
4:自他のチェックが終わったら、それが貴方だけの文字数計算の基礎となる大きさです。
適切な大きさが決まれば、一行分の文字数と、記載可能な行数から最大文字数を計算します。
5:文字数が決まれば、パソコンで作文すると文字数の確認や、書き直しが簡単に出来ます。
文字制限があり、枠が指定されている場合
(枠に合わせた文字の大きさを決める)
※通常は、指定された文字数が十分に入るであろう枠の大きさになっています。
1:まずは、指定の文字数となるよう升状の罫線を引きます。※後で消すので薄く
2:複数の枠がある場合は面倒でも全部引いて、その中で一番小さな文字となる枠の文字を選びます。
枠や文字数によって、字の大きさが大きく変わると、書類全体の見栄えが悪くなります。
3:字以数に指定がある場合は、最低でもその8割は書きましょう。また、指定数を超えては駄目です。
文字にも表情がある
「字は体を表す。」と言うように、手書きの文字は書いた人の人柄を想像させる力を持っています。
相手を思いやっているか、やる気があるか、几帳面か、落ち着きがあるかなど、書いた文字には自分では気付かない自分が表現されているものです。また、応募書類は読む人が分かって書く手紙とは違い、誰が読むか、何人が目にするか、全く分からずに書くのが普通です。従って、「気持ちが入りにくい書類」となりがちです。特に手書きの場合は書類全体を見た時の印象が、読む時の理解度に影響を与える事もあるので、思いを込めて書く事が必須条件です。
手書きではない書類の場合(印刷文字やWEB応募の場合)
手書き程ではなくとも、人の書いた文章はその文面から人柄や性格などが想像できます。
身近な例として、メールでのやり取りを思い浮かべて下さい。普段の自分の書き方や表現力を、メールの履歴を辿りながら分析するのも、立派な自己分析です。例えば、用件だけをズバリ書くだけの非常に短い文章を書いている、または絵文字などを駆使して読んでいる人を楽しませようとしている、さらには要件よりも他の情報が満載で結局何を伝えたいかが分からなくなっているなど、人にはそれぞれ癖があるものです。自分の癖を把握し、どのような表現法が自分らしいのかを考える事が重要です。
point
応募書類を書く時は、「落ち着いて、気持ちを込めて、丁寧に。」が基本です。
具体的には、下書きをする事です。下書きは文字の位置や誤字などを予めチェックするためだけではなく、文字を書く事に集中できる状態にするという重要な役目があります。
「一字入魂」とまでは行かなくとも、せめて「一文入魂」「一紙入魂」の精神が必要です。
また、綺麗で華麗な文字よりも、貴方の一番丁寧な文字を書いて下さい。
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