小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

自由学園2

2008-12-29 16:31:48 | 考察文
自由学園

完全出席

自由学園に入った時、こりゃ、とんでもない所に入ったものだと思った。自由学園では完全出席というのをやってて、その月、全員一度も休まないと、女子部との合同礼拝の時、完全出席といって手をたたいて誉めるのである。学園には体育の時間に4.5キロのマラソンがあって、全員やらなくてはならないのである。私は、これを初めてやらされた時、終わり頃に喘息が起こり、チアノーゼになり、足はガクガクし、意識が朦朧としてきた。それで、次回からは、そのマラソンは休む事にした。
そうしたら、クラスの剛のヤツがやって来て、
「それじゃあ、俺達のクラスは完全出席できないじゃないか」
と言って、襟首をつかんで何度もビンタした。私は、大変な学校に入ってしまったと驚いた。
「この学校じゃ病気になっても休むことも許されないのか」
そして、この学校でしてる唯一の卒業式である大学部の卒業式の時にも、この完全出席を、今度は個人に対して誉めるのである。初等部(小学校)や幼稚部から大学部卒業まで一度も休んだ事のない生徒が、素晴らしいと言って誉めるのである。
こんなのはショーだ。
その生徒は、自分が誉められるためか、学校のおかしな教育方針を守るため、風邪をひいても他の生徒に移す迷惑もおかまいなく出席したのであろう。
病気の時には、無理をせず休むのが物事の本道であるはずだ。

この学校では、よく無断借用という事が問題になる。人の物を無断で使用する上級生が多いのだ。よくサンダルの無断借用が多い。まあ法的にいえば、これは使用窃盗、といって、窃盗罪になるのだが。それでも、使った後、元の所に戻しておくならまだいいだろう。しかし、ほとんどのヤツは、使いっぱなしでほったらかし、なのである。これでは、所有者の手に戻らない。こんなのは借用とは言えない。無神経なヤツが多いのだ。

寮では毎日、掃除が日課だが、時には、丁寧にワックスを塗る事もある。そして、きれいにワックスがけして、まだ乾いてない床を土足で歩くヤツの気が知れない。

夕食のかたずけ、皿洗い、は生徒の仕事である。だが、この学校は金持ちの莫迦息子が多いため、寮の飯はまずい、と言って街に出て飲食店で何か食ってくるのである。私は寮の食事が美味くて美味くてしかたがなかった。上級生になると、寮の夕食を食わないヤツが出てくるのである。そうなると、皿洗いが、いなくなるから、食事の係りが順番にいる人の名前を言っていく。誰もいないので、結局、私となる。私は人の何倍も皿洗いをさせられた。呼ばれる度に、またか、と嫌気がさした。

この学校に入ると、一年(中学)は、まず、「出来がいい」か「出来がわるい」かの生徒に分類される。そして、「出来の悪い」生徒はいじめられるのである。

学校も偉そうなこと言ってても、足し算、引き算も満足に出来ないような生徒を、その親が日本を代表する権威ある学者だから、といって入学させてるのはおかしい。

私の時は、この学校に入るのは、学力ではなかった。学園長の鶴の一声だった。
一番、有利なのは、この学校とつながりがある事である。私の場合、母親が卒業生で母の弟は男子部の卒業生だった。学園長は私の母親をよく覚えていて、私と合うと、「山田(仮名)さんですね」と、微笑んだ。「山田」は母の結婚前の苗字である。私も丁寧にお辞儀した。しかし私が生まれてるって事は、結婚したからであって、結婚すると女は苗字が変わる、という簡単な事がわからないのだろうか、と疑問に思った。

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