すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ロシアW杯最終予選】サウジ戦に用意したハリルのシナリオを深読みする

2016-11-19 07:16:31 | サッカー日本代表
ハリルの狡猾な深謀遠慮が見えてきた

 サウジ戦の映像を何度も繰り返し見直しているうちに、あの試合で起こったことはひょっとしたらすべてハリルのシナリオ通りだったのではないかと思えてきた。ハリルは試合に先立ち対戦相手を入念にスカウティングし、緻密にゲームプランを立て、ディティールまで詰めた上で本番に臨む監督だからだ。そこで今回は、あのサウジ戦に隠されたハリルの意図を深読みしてみる。

【深読み1】サウジのビルドアップを殺すためハイプレスを採用した

 ハリルは相手のよさを徹底的に消そうとするタイプの監督だ。彼は事前のスカウティングで、サウジはグラウンダーのボールを転がしてビルドアップしてくると知っていた。ならば最終ラインからのビルドアップの1本目のパスを狙うには、ハイプレスがもってこいだ(逆に最終ラインからロングボールを放り込まれるとハイプレスは空振りする)。で、ハリルは試合の入りをハイプレスにし、試合開始から相手のよさを消すことを狙った。

【深読み2】初めからハイプレスで先行逃げ切りするシナリオだった

 ハイプレスは運動量がいるため長時間は続かない。そこで事前のシナリオでハイプレスは前半だけとした。つまり試合冒頭から激しくハイプレスをかけて先に点を取り、先行逃げ切り型のゲームプランを組んだ。前半で先制点、追加点を取り、後半はそのリードを生かしゾーンを低くして守備的に戦うこともあらかじめ決めてあった。

【深読み3】若手を使ったスタメンには「意味」があった

 試合の入りをハイプレスで行くとすれば、コンディションの悪い本田では持たない。そこで若い久保が選ばれた。またハイプレスでファースト・ディフェンダーになるワントップとトップ下にも若くカラダが切れている大迫、清武を抜擢した。とすれば大迫、清武、久保の起用はあくまで「サウジ戦に最適なメンバー」を選んだだけであり、実は必ずしも「世代交代」うんぬんとは関係ない。

【深読み4】後半の頭から本田を投入した狙いとは?

 本田はタメを作り、試合を落ち着かせ、時間をうまく使うプレイ(遅攻)が得意だ。つまり前半で点を取り先行逃げ切りを図るなら、本田の持ち味はむしろ後半に生きる。そこで本田をあえてスタメンから外して前半のハイプレスを免除し、ゲームプラン的に彼がより機能するはずの後半頭から投入した。

【深読み5】香川の後半起用にも「意味」があった

 香川は(代表チームの中では珍しく)ゾーンディフェンスを完全に理解している。それはオーストラリア戦における守備対応でも実証されている。とすれば前半に点を取り後半は守備的にして逃げ切るゲームプラン上、ゾーンディフェンスを知っている香川は後半投入にもってこいの駒だった。特に自陣に4-4-2のブロックを敷き、相手を待ち受ける守備をやる場合、オーストラリア戦で見られたように香川は理想のファースト・ディフェンダーとして機能する。最前線でパスコースを切りディレイをかける仕事を、香川は完璧にこなすことができる。よってそのタスクを与えるため、ハリルは香川を後半に投入した。

【深読み6】じゃあ岡崎の投入は?

 ぶっちゃけ大迫は前半でかなりバテていた。ハイプレスに奔走したのだから当然だ。ゆえに本当はもっと早く岡崎を投入してもよかった。だがオマーン戦とサウジ戦の大迫のとんでもないデキを見て、ハリルは彼に強くひと目惚れしたはず。で、ハリルは大迫への強い執着から、大迫をあそこまで引っ張った。つまり「点を取ってくれ」ってことだ。

【まとめ】なんて用意周到な監督なんだ

 今回、考察した深読み1~6により、すべてはハリルのシナリオ通りに進んでいたことが判明した。本田・香川・岡崎の途中投入にまで意味があったとは。「みんなで勝ち取った勝利だ!」てなクサい演出をするためか? などとうがった見方をしていたが、実はすべてに戦術的な意味があった(ハリルごめん)。いやはや、なんて用意周到な監督なんだろう。

 参りました、ハイ。

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