tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『メコンホテル』

2014-01-30 22:12:07 | 映画-ま行
 アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の、『メコンホテル』を観た。

 ラスト・シーンは、いつまでも見ていたかった。たぶん飽きないと思う。まだまだ見ていたかった。
 メコン川を斜め上から遠景に映したシーンで、黄土色の大きな川が緑に縁どられてゆったりと流れている。ほとんど動きはないけれど、小さな船が動いていて、幾人かの小さな小さな人が、水上バイク(たぶん)に乗って水面を行き来している。

 一つ一つのシーンは、物語の緩やかさに比べて、絵画の構成のように秩序立っている印象。

 それまでの物語がなければ(物語があればだけど)、ラスト・シーンはこういうシーンにはならなかったはずだし、こんなに惹かれることもなかったんだろう。クリント・イーストウッド監督の『グラン・トリノ』(2008年)も同じく、ラスト・シーンをいつまでも見ていたかった。こちらも斜め上からの情景。物語に終わりがない。ただし『グラン・トリノ』の余韻に比べて、こちらは余韻でもない。唐突に現われるのだ。ずっと流れていたし、ずっと流れている川が映っているのにすぎない。唐突に現われて、時間の流れを示唆する。

 カンヌ映画祭のパルム・ドールを受賞した『ブンミおじさんの森』(2010年)と同じように(この2本しか観ていないけれど)、双方とも登場人物の語りがとても穏やかで、風通しが良くて心地良かった。


 タイ・イギリス・フランス、2012年。

  ブンミおじさんの森 スペシャル・エディション [DVD]

『選挙2』

2014-01-23 23:25:19 | 映画-さ行
 想田和弘監督の『選挙2』を観に行った。

 会話、会話。今回は「山さん」こと山内和彦さんのトークに聞きほれる。聞きほれると言うより、なんだか面白いったらありゃしない。周囲からも、くすくす笑い声がもれてくる。元々明晰な頭脳の人なんだろうけれど、人柄の良さがそれを上回ってるな。人柄の良さというか、距離感というか。

 流れるように、スクリーンの中で人々が喋り続ける。東国原英夫も喋る。落語家みたいだ。経営破たんした豆腐の野口屋の、引き屋のお兄ちゃんも喋る。舞台俳優さんだと言う。山さんも喋る。奥さんのさゆりさんも喋る。息子さんも喋る。監督も喋る。大家の奥さんも喋る。

 震災からまだ、ひと月も経っていなくて、山さんの怒りほど、沈着冷静な怒りがあるだろうか。とも思った。


 今回も「猫マスター」(町で猫が寄ってくる人を勝手にそう呼んでいるんだけど)が映っていて、猫がすりすりしていた。尻尾を上げてすりすりしながら歩く猫は、一直線に走って行く犬に比べて、ダンサブル。

 
 2013年、日本。


 

『恋するリベラーチェ』

2014-01-20 23:14:20 | 映画-か行
 マイケル・ダグラスに釘付け。マット・デイモンは、美形か?と言ったら美形ではないと思うけれど、それがまたなかなか。

 太ったり、痩せたり、整形したり(あれどうなってるの??)、大変です。

 トップ・エンターテイナー(ピアニスト)のリベラーチェには、登場のコンサートシーンから、惹きつけられる。「本当はマイケル・ダグラス」だとは、とても思えない。
 ゲイであること、かつらを被っていることをひた隠しにしながら、常に人目にさらされ、常に人を楽しませつづける人気者。想像するだに大変そうです。リベラーチェという人のことは、初めて知った。

 ソファにちょこんと座るマイケル・ダグラスの太ももに、マット・デイモンが脚を投げ出すシーンが良かったな。


 「わたしの醜さに目をつぶってくれる」「わたしを称賛してくれる」「わたしの善良さを信じてくれる」…  

 あ、ちょっと字幕と違うな。でもそういうことでした、リベラーチェにとっての愛は。

 泣かせるじゃないですか。

 
 スティーブン・ソダーバーグ監督、2013年、アメリカ。

 

 

 

『永遠のこどもたち』

2014-01-15 19:11:46 | 映画-あ行
 『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ監督は「結構いい映画作ってるんだよ」とある筋(?)の人が言うのを聞き、DVDを借りて観た。
 特殊メイクや特撮のプロみたいで、ファンタジーでは「ホビット」シリーズなどを撮っている、その筋(?!)の人なら知ってて当然の有名人みたいだ。知らなかった。

 『永遠のこどもたち』は監督ではなく、製作総指揮ということ。監督はJ・A・バヨナ。しかし画面にはギレルモの名前がばーんと出ていた。有名なんだ…!と打ち震える(それは嘘)。ギレルモ…、というかデル・トロ…。

 
 ホラーだった。

 普段ゾンビ以外のホラー映画はほとんど観ない。日本のホラーは絶対に観ない。あまりにも怖いから。なぜゾンビはいいのかと言うと、身近にいる気があんまりしないので気楽に観られるし、後を引かないのがいい。じゃあ日本のお化けは身近なのかと言うと、一度も見たことないし霊感ゼロなんだけど、でもやっぱり怖い。「もしかしたら!」「トイレとか」「棚の上とか」「テレビとか」「うしろ」…。うきゃ~!

 でもこれはホラーと言ってもちょっと違っていた。
 怖いのは、すべてがそれなりに現実につながっているというか、説明がつくことというか。そして謎が解かれた時に、その解のあまりに現実的で散文的な、無愛想さに人はもっとも耐え難いものを感じるのではないか…、ということ。

 怨念はまだいいのかもしれない。

 もっと、もっと、取るに足らないような、無味乾燥な日々の小さな出来事に人は苦しめられている…。


 (という映画ではなかったかも知れない…汗)


 面白かったです。
 
 J・A・バヨナ監督、ギレルモ・デル・トロ製作総指揮、2007年、スペイン・メキシコ。


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 実は『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督と、ギレルモ・デル・トロ監督を、取り違えておりました。
 冒頭「『ゼロ・グラビティ』のギレルモ・デル・トロ監督は、…」を、「『パシフィック・リム』の…」と書き直したのですが、わたくし『パシフィック・リム』を観ていないばかりか、「いい映画を作ってるんだよ」と言われたのは、実はキュアロン監督だった可能性が高く、かと言ってギレルモを貶めるようなことも(「違った」と否定するのも)心ならず、…。
 苦い。
 人の話をよく聞くように。そして『パシフィック・リム』を観よう。


 
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