この物語は架空の話です。
登場人物は実在しますが、
あくまで推測です。
だから、楽しく読んで下さい。
もし、異論があれば、
すぐにやめます。
カープ関係者の皆様…
架空ですから
誤解のないように
してくださいね。
永田は、通訳のジョー古川の言葉に驚いた。
「監督は、前田の打撃技術には、一目置いている。
しかし…守備力や走力は計算できない。新球場は左右とも
広くなり、これからは守備力を含めた機動力が重要視される。
そのためには、赤松や天谷などの選手がカギを握れる。
前田をスタメンで計算すると、監督の目指す野球が出来ない。
ましてや将来の構想も立たない。この方針を変えるつもりは
100%ないと語っている・・・」
永田には、その言葉の持つ重要さが理解できた。
しかし…前田に対して、これからどのように伝えていけばいいのか
しばらく考え込むしかなかった。
「意気に感じてプレーする男…ましてや野球選手はスタメンで出て
ナンボじゃ…と口癖のように語る男だけに、監督の言葉はストレートに
伝えることはできん…」
時間を見計らって、前田の激励に、大野グランドへ行ってみた。
「永田さ~ん…元気っすか…」
前田がいつものように声をかけてきた。
「元気そうじゃの~…どうや調子は…」
「相変わらずです…」
「いまは寒いけど、開幕には照準合わせよ…」
前田は無言であった。
永田は…「どうしたんない…開幕は大丈夫よの…」
と、再度確認した。
「永田さん…ワシもうええんですよ…」
「バカ言うな…オマエなにぬかしようるんや…
お前抜きのカープはないんでェ。監督もオマエの復帰を待っとる」
「ワシ…わかるんですよ。マーティーが、ワシをあてにしてないの…
じゃけん…今年はもう試合に出まあと…」
「アホか…オマエがおらんと、どうもならん。タケ(小早川)や内田さんも
そうよってじゃい…とにかく開幕…いや…お前の気力で5月までには
出て来いよ…ワシは待っとるでェ…」
永田は前田の肩をたたき、大野練習場を後にした。
車中で…(監督の言葉は、ワシだけに納めとこう)と思った。
オープン戦が終わり、シーズンは開幕した。
東京ドームの巨人戦には、前田不在を感じさせなかったが
その後…徐々に前田不在が、チーム内に影響を及ぼし始めた。
投手陣は大竹、前田健太、ルイス、斎藤をはじめ、中継ぎ陣の
奮闘もあり、安定した投球内容であった。
しかし…打線が停滞し、僅差で星を落とす展開にファンはもとより
フロントも業を煮やした。
松田オーナーは
「どうなっとるんじゃい…じゃけん去年契約で揉ましたとき
解任じゃ~言うたんよ…」と、まくし立てた。
聞き役のフロントの一人は、「仕方ないですよ…あの時はあれしか
方法がなかったのですから・・・なんせ誰も監督を受けない状況でしたから」
そうは言っても、何とかしなければならない。
フロントは、元西武のマクレーンに再度交渉した。
実は、昨年も動いた経緯があった。
しかし…マクレーンの年齢が36歳だったので、異論も出た。
「昨年オフに、アレックスを解雇したとき、年齢による衰えを
公表しましたよね。それなら、国内トレードで日本人野手の獲得に
動いた方がいいのでは…2軍にも松山や鞘師もいますし…」
しかし、オーナーは大砲を熱望した。
西武在籍時のマクレーンの長打力…これが忘れられなかった。
「エエワイ…すぐにシュールストロム(駐米スカウト)に電話して
マクレーンの身分照会を急げ…ほいで、2000万の出来高で1年よ…」
もうさすがに…どうでもよかった。
前田の存在さえ忘れてしまう状況に
苛立ちは拍車をかけていた。
マクレーンが来日した。
球団事務所にやってきた、マクレーンと対面したオーナーは
腰を抜かしそうになった。
ナゼなら…西武時代の面影が無くなっていたからである。
頭髪は抜けおち…体重は30キロくらい増加し、まるで同姓同名の
別人かと思った。
オーナー室に帰り、すぐに国際電話をした。
「あれはホンマに、西武におったマクレーンか…」と、流ちょうな英語で
シュールストロム駐米スカウトに確認した。
「間違いないです…」
オーナーは渋々、電話を置いた。
「こりやぁ…えらい買い物したかもしれん…」
オーナーの予感は当たった。
これまで大半が外れだったのに、変な予感は当たると
オーナーは内心苦笑いをした。
マクレーンは予想通りの結果になった。
チームも交流戦は健闘したが、リーグ戦再開後
また貧打を繰り返した。
コーチ陣もお手上げ状態であった。 つづく