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【重要記事】【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】種苗法改定をめぐる3つのポイント

2020年05月24日 06時00分28秒 | 真実追求

農業協同組合新聞より転載
2020年5月7日

鈴木宣弘・東京大学教授

【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】種苗法改定をめぐる3つのポイント

https://www.jacom.or.jp/column/2020/05/200507-44177.php?fbclid=IwAR1bp-kONKuQVvyQmmXPfHj5yzpGZpsM-_nH5DdFObXrbR0O_m4wQ6BGCAQ

ーーー転載開始ーーー

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種苗法改定をめぐっては様々な議論がなされているが、筆者が重要と考える論点を3つほど追加的に述べてみたい。

◆論点1 歴史的事実を踏まえて大きな流れ・背景を読む

何事も歴史的事実・経験も踏まえて、背景にある大きな流れを読むことが必要である。

農水省の担当部局を批判するのは的を得ていない。
農水省が掲げる「日本の種苗の無断海外流出に歯止めをかける」必要性は確かにある。
農水省が日本の農家・農業を守るために一生懸命考えていることは間違いなく、その尽力には敬意を表したい。

問題は、農水省の担当部局とは別の次元で、一連の「種子法廃止→農業競争力強化支援法(8条4項)→種苗法改定」を活用して、「公共の種をやめてもらい→それをもらい→その権利を強化してもらう」という流れで、種を独占し、それを買わないと生産・消費ができないようにしようとするグローバル種子企業が南米などで展開してきたのと同じ思惑が、「企業→米国政権→日本政権」への指令の形で「上の声」となっている懸念である。

日本の種苗の海外流出阻止が農水省の主たる目的だが、グローバル種子企業の思惑は違う。
「陰謀論だ。そんなことはない」と言う人たちに申し上げたいのは、これは「世界における歴史的事実で、日本で進んでいることはそれに酷似している」という明快な現実である。

中南米やインドなどでは、今日本で進められようとしている同じことが、「M法」と呼ばれる一連の流れで行われ、農民・国民が怒り、世界的にM排斥運動が広がっている。
そこで、何でも意向を汲んでくれる日本が「ラスト・リゾート」、唯一最大の儲けの砦だ、ということになったら日本の農家や国民はたまらない。


◆論点2 対象となる登録品種は少数だから影響はないか

自家採種の原則禁止の対象となるのは少数(約1割)の登録品種のみで、在来種などの一般品種が種の太宗を占めており、その自家採種は続けられると説明されている。
しかし、このことは、現在登録されていない種を、企業が登録品種にして儲ける誘因が働くことを意味する。

「種を制する者は世界を制する」との言葉があるように、あらゆる種を自らの所有物にして、それを購入せざるを得ない状況を広げたいのは企業の行動原理であることを常に忘れてはならない。

代々自家採種してきた在来種で品種登録されていなかったら種は自分のものではないし、誰のものでもない。
在来種には「新規性」がないのでそのまま登録されることはない。
しかし、在来種を基にして+αの「よさ」をもつ新品種が企業によって育成され「新規性」が認められれば、登録できる。
それが元の在来種に置き換わっていけば、在来種が駆逐され、種を買わざるを得ない状況が広がっていく。
登録品種の自家採種禁止は、買わざるを得ない種(登録品種)を企業が広げていくインセンティブ(誘因)を高めるであろう。

また、在来種がすでに登録された品種と形質的に差がないとして訴えられる危険も指摘されている。
こうして在来種がさらに駆逐され、F1(一代雑種=自家採種しても同じ形質がでないので買い続けないといけない)の種や登録品種の種に置き換わっていくと、青果物だけでなく、コメ・麦・大豆についても、種の値上がりによる生産コストの上昇、品種の多様性の喪失による災害時の被害増大などが懸念される。


◆論点3 登録品種の種も従来通り自家採種できるか

登録品種の自家採種も登録者が許諾すれば続けられ、国の農研機構など公的機関の種が多いのだから、今まで通り、無償で許諾されるであろうとの説明もある。
しかし、種子法の廃止及び「8条4項」は、種の開発・権利者が国・県でなく企業に移行していくことを強く促している(注)のだから、早晩、想定通り、主要穀物の種子開発が国・県からグローバル種子企業に取って代われば、高い種を買わざるを得なくなり、事態は一変してしまう可能性がある(農研機構はすでに企業による浸食が進んでいる)。

以上のように、農水省の担当部局の意思に反して、それとは別次元で、「今だけ、金だけ、自分だけ」の一部企業の利益の増大に貢献し、農家や消費者に損失をもたらす仕組みが一連の流れの中で着実につくられている懸念はぬぐえない。

それは、より大きな流れで整理すれば、特定のグローバル種子企業への「便宜供与」の「7連発」、
(1)種子法廃止(公共の種はやめてもらう)、
(2)種の譲渡(これまで開発した種は企業がもらう)、
(3)種の自家採種の禁止(企業の種を買わないと生産できないように)、
(4)遺伝子組み換えでない(non-GM)表示の実質禁止(2023年4月1日から)、
(5)全農の株式会社化(non-GM穀物の分別輸入は目障りだから買収)、
(6)除草剤の輸入穀物残留基準値の大幅緩和(日本人の命の基準は米国の使用量で決める)、
(7)ゲノム編集の完全な野放し(勝手にやって表示も必要なし、2019年10月1日から)、
という一連の措置の一環と位置付けられる。

(注) 種子法廃止(2018年4月1日)に備えた「通知」(2017年11月)は、「従来通りの都道府県による体制が維持できるように措置する」という附帯決議に反して、早く民間事業者が取って代われるように、移行期間においてのみ都道府県の事業を続け、その知見も民間に提供して、スムーズな民間企業への移行をサポートしろと指示している。
つまり、早くグローバル種子企業が儲けられる下地を農研機構や都道府県が準備することを要請している。

重大なことは、農水省の担当部局と主要県の担当部署が相談して都道府県の従来通りの事業が引き続きできるとの案を工夫して作って合意したのだが、「上」からの一声で、「県が継続して事業を続けるのは企業に引き継ぐまでの期間」と入れられてしまい、出てきた最終版を見て、県が唖然としたという事実だ。

「畜安法」と同様、農水省の担当部局が頑張っても、その意思と反する方向に導かれてしまうことになった。
畜安法では、懸念を表明した担当局長と課長は「異動」になった。
それでも、「省令で『いいとこどり』の二股出荷は拒否できるように規定するから」と担当部局は酪農関係者に説明し、実際、彼らは一生懸命知恵を絞っていた。
しかし、「上」からの「小細工すると、君もわかっているよね」との圧力で、結局、有効な生乳共販弱体化の歯止めはできなかった。

 
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ーーー転載終了ーーー

 

 

 

 

 

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