僕は歩いていた
春にしては 少し強めの日射しの中
いにしえの古都の坂道
少し 遅れて 君が ついてくる
ふたりとも 何も喋らない
まだ知り合って 間もないのに
坂道を 修学旅行の生徒達が 駆け下りてくる
そのとき 一陣の風が僕たちを包んで 過ぎていった
その瞬間 僕は幻の中にいた
虹の広場の上で 柔らかな表情の人たちが
なにやら 不思議な機械と取り組んでいる
ひとりの人もいれば グループの人たちもいる
僕は聞いてみた
何をされてるんですか
グループの中のひとりが答えてくれる
人生を決めてるのさ
これから地上に生まれるんだけどさ
どの国にするか
誰の子供になるか
誰と いつ出会うのか
どんな試練に遭うか
そんなことをね
君も加わりなさい もうすぐ 地上に降り立つんだから
でもね 降りた瞬間 すべては記憶から消えているよ
だって 人生 分かってたらつまらないでしょう?
僕は 幻から解放された
君が心配そうに覗き込んでいる
どうしたの ぼうっとして
僕は答える
ん?分かったんだ 僕と君が出逢えた理由がね
ほら 虹の広場で ふたりで 決めたじゃない
いつ どこで どんな風に 出会おうかって
君は 不思議そうに 僕を 見つめる
何の事か さっぱりだわ 変な人
だからさ 決まってたんだよ みーんな
ふふ いつか 君にも 分かる日が来るさ
僕の場合は 今が その時だったんだ
僕は 幻の虹を見ていた
こころの深い とても深いところで