埼玉県も、小京都の川越には数年前に訪れた事があるが、秩父地方は初めてである。
現在年寄りを抱えており、泊まりの旅行はなかなか出かけられない状況にあるが、この旅行は、1年前から夫に告げておいた。
羊山の芝桜に合わせたこの時期、天候に恵まれ、暖かく晴れ渡った秩父で密度の濃い旅ができた。
どの山も春の装い、山肌は青葉若葉と、広範囲のピンク色の塊になった桜である。

町の道すがらも、民家の庭先や道沿いに桜、桃、山ツツジ、チューリップなど、
花があふれてまるでパレットのよう。
花と心地良い空気に浸りながら、山村の道路を走っていると、世知辛さを忘れる。
秩父の目玉の一つ、羊山公園に足を運ぶ。
駐車場から続いているしだれ桜にも感動しながら、はらはらと風に散る桜の花びらを浴び、歩いた先の丘陵に展開したのは・・・。芝桜の花空間。
目が釘付けになるほどの美しさであった。
8種の花で埋め尽くされたこの斜面のデザインは、秩父夜祭の笠鉾、屋台の山車に乗った囃子手(はやして)が着こんだ紅白襦袢(じゅばん)模様をイメージしたものだそう。

四国に劣らずよく知られているのは秩父巡礼。巡礼者の姿を見かけたのは、子育て観音のある金昌寺というお寺だった。
そのほかも霊場になっているあちこちのお寺に植えられた桜がどこも見ごろだった。

清雲寺の天然記念物と言われる樹齢600年の「エドヒガン」はすでに葉桜だったが、秩父で一番の桜の名所と言われるだけあって30本ものしだれ桜はみごとだった。
長瀞駅周辺の桜のトンネルは、5キロも続いているそう。春風とともに舞う花吹雪を浴びてお喋りしながら、ゆっくり通り抜けた。途中、長瀞渓谷でライン下りを楽しんでいるお客さんの姿を、上から眺められる。緩やかな川であるが、清流がつくりだした岩畳がすばらしい。

瑞岩寺から裏山に登山道?がある。100数十メートルくらいのようだが、かなり急で、侮れない。ここを10~15分ぐらい、息を荒げて登ると・・・。
頂上は一面が赤紫色に染まっていた。三つ葉ツツジの花である。
青い空、見事なつつじと360度のパノラマビューに誰もが絶句してしまった。
埼玉県内にはあちこちに見られる「彩の国」のキャッチフレーズの由来を、友人が「埼玉の”さい”に”ださい”の”さい”も入っているんだよ」と笑っていたが、
そんなことはない。とてもいい所である。
Aさんもすでに埼玉県人になっている。本当に思い出深い旅になった。
ありがとう!