お寺で仏像にお会いすると、ほとんどが正面のお姿しか見ることができません。一方近年の展覧会の仏像展示は360度拝観が普通になってきています。背中を見たくなるのもやはり人情です。
こうした拝観者の嗜好の変化に京都の東寺が反応しています。東寺が世界に誇る仏教美術空間の最高峰・講堂の立体曼荼羅(りったいまんだら)の背中が見られるよう拝観方法を工夫しています。秋の特別公開期間中だけですが、立体曼荼羅が安置された須弥壇の周囲をぐるりと回れるようにしています。
仏像の背中やお尻は、女性的/男性的の両方ありますが、優美だったり力強いラインで造形されることが多く、とても綺麗です。後ろ姿もしっかり拝むようにしましょう。
秋色の東寺境内
仏像は従来、本来の安置場所である堂宇の中では、背後からも拝観できるようには考慮されていません。光背が付いている、厨子の中に入っている、周囲に様々な仏具が置かれている、といった環境で後姿は見えません。防災のために収蔵庫に安置されている場合でも同じです。壁沿いに安置されていることがほとんどで後ろからの拝観はできません。
21cになってから、京都・奈良を中心とした寺が所蔵する仏像が、東京を中心に全国の美術館の特別展として”出開帳”することがより多くなりました。ここ数年では決して知名度の高くない寺の特別展でも多くの観客を集め、展覧会のメジャーなコンテンツとしてすっかり定着しています。
- 仏像を単独で展示台に載せ360度拝観を可能にした
- LED技術の進化で仏像に悪影響を与えずに鑑賞者が見やすい照明をあてられるようになった
- 本来安置されている堂宇の修理の機会を活かして展覧会が企画されるようになった
- 寺側が秘仏であっても見てもらうことも大切と考えるようになった
こうした展覧会の企画者と寺側の双方の努力の成果だと思います。江戸時代以来、出開帳が再びブームになっています。
【公式サイトの画像】 立体曼荼羅(配置図)
東寺の立体曼荼羅は、長方形の巨大な須弥壇の上に21体の仏像が並べられています。この須弥壇の周囲を一方通行ですが何周でも廻って拝観できます。展覧会のように一体一体を360度拝観できるわけではありません。初めて見る仏像ファンは、背中とお尻に必ずや衝撃を受けるでしょう。
中でも立像で四隅に安置されているため見やすい四天王です。曼荼羅の守護神としてとてもりりしいボディを支えるお尻が実に力強く表現されています。相撲の力士のお尻が綺麗と感じるフェチと同じ心理です。
平安時代最高のイケメン仏・帝釈天も、正面向かって左隅に安置されているため背中が見やすくなっています。お顔と同じくとても優雅な背中であることがわかります。明王の後ろ向きについた目も見えます。全方向に煩悩をしっかりと焼き尽くしてくれるのです。
人と比べた五重塔の大きさがわかる
立体曼荼羅の周回拝観は2015年から毎年秋に行われるようになっています。空間全体に彩られた密教美術が美しい五重塔の初層が、同じチケットで拝観できます。
別チケットで期間も異なりますが、宝物館もぜひおすすめです。平安京の羅城門を護っていた国宝の兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)のエキゾチックなお顔にお会いすることができます。唐で造られたため、日本とは異なる趣がとても魅力的です。
東寺様、少々看板が多すぎです
東寺の講堂の場合、須弥壇背後にスペースがあるため周回が可能になります。寺や仏像との親近感を増し、拝観者を増やすことができます。可能な寺から周回拝観が行われ始めることを私は願っています。
なお仏像の背後が見られるわけではありませんが、安置場所の背後の壁の裏に描かれた仏画や安置された仏像を公開する例も出始めています。仁和寺もこの秋、金堂裏の空間を初めて公開しています。美しい五大明王の壁画を拝観できます。
【仁和寺公式サイト】 秋の特別拝観
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
平安美仏のトップスターが東寺公認フィギュアで登場
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東寺
2018秋季特別公開
【寺による特別公開案内サイト】
会期1:宝物館 2018年9月20日(木)〜11月25日(日) 9:00~16:30
会期2:五重塔・講堂 2018年10月27日(土)〜12月9日(日) 8:00~16:30
※会期2と同日程で、紅葉ライトアップと金堂・講堂夜間拝観 18:30~21:00も行われます。
原則休館日:なし
※講堂は観光目的で常時公開されていますが、特別公開期間中以外は周回拝観することができません。
※五重塔と宝物館は観光目的では常時公開されていません。公開は毎年春(3~5月頃)と秋(9~11月頃)の特別公開期間に限られます。
※ライトアップと夜間拝観は、毎年秋(10~12月頃)の特別公開期間に限られます。
※公開期間が限られている仏像や建物・美術品があります。
※公開されていない仏像や建物・美術品があります。
◆おすすめ交通機関◆
JR・地下鉄「京都」駅下車、八条口から徒歩15分
近鉄・京都線「東寺」駅下車、徒歩8分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:20分
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には有料の駐車場があります。
※渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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