香川・金刀比羅宮、通称:こんぴらさんには、前回お伝えした高橋由一作品と並ぶ目玉コレクション、円山応挙の障壁画もとても見応えがあります。
- 三井家からの寄進で円熟期の応挙が描いた代表作の一つ、もちろん重要文化財
- 金刀比羅宮を訪れる大名ら上流階級の客人をもてなした表書院にふさわしい圧巻の表現力
- 表書院は建物も重要文化財、京都の上質な寺のようで別世界のような空間
江戸時代を通じて参拝者で賑わったこんぴらさんの繁栄の証のような空間です。こんぴらさんの懐の深さを感じさせます。
本堂横の高台
表書院は、江戸時代初めの萬治年間(1658-1660)、神仏習合の江戸時代に存在した松尾寺金光院が上流階級の客人をもてなす客殿として建立しました。表書院のあるエリアが神社的でないのはこのためです。現在の表書院と本宮の中間に位置し、本宮からの帰路で参拝する旭社は、松尾寺金光院の金堂だった建物で、こちらも重要文化財です。
表書院には、玄関を含めて8間あり、内5間に応挙による障壁画があります。
【金刀比羅宮公式サイトの画像】 表書院「鶴之間」
玄関を通った後の最初の間は、使者の控室となった「鶴之間」です。身を寄せ合う姿や雄大に空を舞う姿など様々な鶴が表現されており、ここが特別な空間であることをうかがわせます。とてもやさしい趣にしつらえられています。
【金刀比羅宮公式サイトの画像】 表書院「虎之間」
「鶴之間」の隣の「虎之間」は、役人や商人が通された部屋です。こちらも、にらみ合う二匹がいる一方で愛くるしい親子の姿が描かれています。この部屋ではリアルな交渉も行われたのでしょう。緊張感を保つのにふさわしい表現がなされています。
【金刀比羅宮公式サイトの画像】 表書院「七賢之間」から「虎之間」「上段之間」をのぞむ
「虎之間」の隣の「七賢之間」は、松尾寺金光院の別当(べっとう、トップ職)が座った間です。教養や文芸を象徴する七賢は、別当が理想とした姿だったのでしょう。隣接する「虎之間」と「上段之間」との趣の違いがとても印象的です。
【金刀比羅宮公式サイトの画像】 表書院「上段之間」
「上段之間」は来客としては最も身分の高い大名を通す間で、表書院の一番奥にあります。瀑布図は表書院の応挙による障壁画の中でも最も著名な作品です。応挙の最高傑作、国宝「雪松図」をおもわせるような生命感のある水の流れの表現が秀逸です。深山幽谷の幻想的な表現には、時間を忘れて見入ってしまいます。
応挙は琴平に足を運んではおらず、京都で制作して届けています。写真もなかった時代に実際の建物を見ずに、見事に空間にマッチした作品を制作しています。あらためて応挙が巨匠であることを実感できます。
表書院では、幕末の森寛斎や明治の邨田丹陵による障壁画も鑑賞できます。また奥につながる奥書院には伊藤若冲の「花丸図」がありますが、こちらは公開されていません。
宝物館にも狩野探幽らによる三十六歌仙額など数多くの名品があります。こんぴらさんは、美術品の所蔵でも驚きのスケールを誇ります。
大門からのぞむ讃岐平野
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
江戸時代、庶民の代わりに犬がこんぴらさんに詣っていた
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金刀比羅宮
表書院
【神社公式サイト】 表書院
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:8:30~16:30
※この施設は、コレクションの常設展示を行っています。
◆おすすめ交通機関◆
JR土讃線「琴平」駅下車、ことでん琴平線「琴電琴平」駅下車、徒歩20~30分
※約450段の石段を昇る必要があります。クルマで境内には行けません。
※琴電琴平駅の方がJR琴平駅より200mほど金刀比羅宮に近くなります。
JR琴平駅まで、JR岡山駅から在来線特急で60分、JR高松駅から在来線普通で65分、
JR岡山駅まで山陽新幹線で新大阪駅から45分、東京駅から3時間20分
琴電琴平駅まで、高松築港駅から60分
【公式サイト】 アクセス案内
※鉄道は本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることをおすすめします。
※この施設には有料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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