江戸時代はじめに造られた”キャンパス”がほぼ現存する旧閑谷学校(きゅうしずたにがっこう)は、姫路市と岡山市の中間に位置する、備前焼でも知られる備前市にあります。世界最古の庶民向けの学校として、国宝と特別史跡に指定されています。
山あいのわずかな平地に設けられた校舎は、明るい茶色を基調とした瓦屋根が、いかにも論語を教えるのにふさわしい中国の風情を醸し出しています。300年以上たった現在も、特別な空間であることを感じさせる見事な建築群です。
バス停や駐車場から進むと、明るい茶色の屋根が少しずつ見えてくる光景は感動的でもあります。わざわざ出かける価値のある偉大な歴史遺産です。
受付入口の門も実に美しい
閑谷学校は、岡山藩初代藩主・池田光政(いけだみつまさ)の命により、津田永忠(つだながただ)によって1670(寛文10)年から建設が始められ、1701(元禄14)年に全容が整ったのが現在の姿です。
光政は教育に力を注ぎ、1641(寛文18)年には全国初の藩士を教育する藩校を設けています。江戸幕府による学校、すなわち現在の国立大学に相当する湯島聖堂(ゆしませいどう)の創設は1690(元禄3)年ですので、いかに早かったかがわかります。津田は土木建築に手腕を発揮した岡山藩士で、日本三名園として知られる岡山城の後楽園も彼の手によるものです。
【公式サイトの画像】 講堂
中心的な建物である講堂が国宝です。講堂は1673(延宝元)年の創建時は茅葺(かやぶき)屋根でした。とても美しい屋根瓦は1701(元禄14)年に、現在の瓦葺にあらためられて以降ほぼ使い続けられています。備前焼による丈夫で高級な瓦で、一枚ごとに色合いが異なるのが特徴です。微妙な色違いが荘厳ともいえるような中国風の非日常感を醸し出しています。
講堂の室内
講堂の室内はとても広く、生徒はここに正座して講義を受けていました。火打窓(かとうまど)から入ってくる光がピカピカに磨かれた床に反射する光景は幻想的でもあります。座っていると自然と背筋を伸ばすような、威厳があって凛とするような空間です。
講堂の縁側
室内の広間には立ち入ることはできませんが、縁側に腰を掛けて室内や美しい芝生で覆われた校庭を眺めることができます。おだやかな凪を感じながら300年前と変わらない空間を体感する時間は極上です。
石塀
縁側からは校庭を取り囲む重要文化財の石塀がとても美しく見えます。形が異なる石がすき間なく組まれており、上端の角が丸く削られています。その丸みがキャンパスの空間をとても穏やかかつオープンに見せています。
閑谷学校は、希望する子供は身分にかかわらず誰でも教育を受けることができました。他藩の藩士の師弟にも門戸を開いていたほどです。そんな姿勢を象徴するような、日本有数の美しい石塀です。
孔子をまつった聖廟
キャンパスの奥のやや高台に、学校として最も尊敬する儒学の祖・孔子をまつる聖廟(せいびょう)と、校祖・光正をまつる閑谷神社があります。いずれも重要文化財です。こちらも講堂と同様に美しい荘厳さがあります。
【公式サイトの画像】 資料館
閑谷学校は明治になっていったん閉鎖されますが、市民たちの熱意もあり旧制中学校として復活します。1905(明治38)年建築の旧制中学校の校舎が、現在資料館として使われています。開校から明治時代までの閑谷学校の人物や教育に関する史料が展示されています。幕末の歴史学者・頼山陽が来校していたこと、明治初めに備中松山藩(現在の岡山県高梁市)の藩政改革で知られる山田方谷(やまだほうこく)が一時教鞭をとっていたことなど、興味深く知ることができます。
備前焼の瓦
本当に見事な空間がのこされています。地元では運動も始まっているようですが、世界遺産になってもおかしくはない荘厳さを今もたたえています。ぜひ訪れてみてください。
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
日本の伝統建築ってすごい。
特別史跡旧閑谷学校
【公式サイト】http://shizutani.jp/
原則休館日:12/29-31
入館(拝観)受付時間:9:00~17:00
◆マナー教室◆
◇写真撮影の前に確認! 撮影可能か、立入禁止でないか、三脚や一脚が使えるか?
◇カメラのシャッター音は出ないように、特にスマホは注意!
◇カメラのフラッシュがたかれないように設定、光や熱が美術品を傷つけます!
◇室内を見学する場合、持ち物が無意識に壁や置物に触れ傷つけてしまいます。
手荷物は預ける、リュックは前に抱える、レンズの大きい一眼レフカメラは持ち込まない、など配慮しましょう。
◇靴を脱いで室内を見学する場合、床汚れ防止のため、裸足なら靴下を持参しましょう。
◇庭を散策する場合、通路以外は立ち入り禁止!コケや芝生がふまれて死んでしまいます。
◆おすすめ交通機関◆
山陽道「和気」ICから車で5分、「備前」ICから車で15分
JR山陽線「吉永」駅下車、タクシーで10分、備前市営バスで15分
JR赤穂線「備前片上」駅下車、タクシーで13分、備前市営バスで15分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:2時間30分
大阪駅→JR神戸線新快速→姫路駅→JR山陽線→吉永駅→備前市営バス→閑谷学校
【公式サイト】 アクセス案内
※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約を強くおすすめします。
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