日本最古の仏教寺院である元興寺(がんごうじ)が、飛鳥から平城京に移転してきて今年で1300年を迎えます。奈良時代は現在のならまち全域が境内でしたが、歴史の荒波の中で現在は3つの別の寺院として存続しています。元は一つだった3つの寺院が協力し、奈良市中院町に所在する真言律宗の元興寺を会場に元興寺の歴史を振り返る展覧会が開かれています。
2014年の東博での国宝展に出展されて話題を呼んだ高さ5mの国宝・五重小塔(ごじゅうのしょうとう)の他、期間限定で元は一緒だった3つの寺院の国宝・重文の仏様が揃う粋な企画もあります。
国宝の本堂は奈良の大きな青い空にとてもよくマッチしています。本堂の屋根では飛鳥時代の瓦が今も現役で使われています。境内は世界遺産に指定されています。日本最古のお寺をぜひ体験してみてください。
元興寺は、周辺のならまちの住民たちに支え続けられていたこともあり、奇跡的に多くの文化財が残っています。所有する文化財は、境内の収蔵庫・法輪館に収められており、年に数回の企画展の際に公開されています。
平城京移転1300年の今年2018年の秋は、元興寺の歴史を振り返る特別展「大元興寺展」が開かれています。元興寺の歴史を物語る出土遺物や彫刻、絵画、古文書などが会場の法輪館に一堂に揃います。元興寺の長い歴史がとてもよくわかります。
法輪館
1F中央には彩色が美しい国宝・五重小塔が設置されています。高さ5mあり、内部構造まで忠実に造られた細工が見事です。常に室内にあったため保存状態が良く、赤い彩色がとても美しく見えます。奈良時代特有の傾斜の緩い屋根のラインも見どころです。2014年に東京国立博物館の国宝展に出展された際の記憶が新しい方も少なからずいらっしゃると思います。
【公式サイトの画像】 五重小塔
1Fでは9/13~9/27の期間限定で3つの寺院の美仏が揃う「大元興寺諸仏展」が開かれています。芝新屋町・華厳宗・元興寺の国宝・薬師如来立像は、衣のひだが美しい平安時代の作品です。肩幅がありしっかりした体格が重厚感を醸し出します。
【公式サイト】 大元興寺諸仏展
2Fでは浄土信仰で信奉を集めた「板絵智光曼荼羅(いたえちこうまんだら)」が展示されています。智光曼荼羅は元興寺の本尊でもあり、浄土信仰が中世の元興寺を支えていました。重要文化財です。
【公式サイトの画像】 板絵智光曼荼羅
飛鳥時代の瓦
本堂の西側の屋根には飛鳥時代の瓦が今も使われています。屋根の修理の際に使えるものは使ってきた瓦の中に、飛鳥時代のものが含まれていたのです。また上部が細く下部が広い丸瓦と平瓦を重ねて葺く奈良時代の行基葺(ぎょうきぶき)の瓦屋根も、独特の風合いを見せています。異なる瓦の色が積み重ねた時間の長さを感じさせるとても美しい屋根です。
元興寺は東大寺や興福寺に比べ知名度の低さは否めませんが、見どころはたっぷりと揃っています。ぜひ訪れてみてください。
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
渡来人として蘇我氏を分析した論調は興味深い
大元興寺展
【寺による展覧会サイト】
主催:真言律宗元興寺、華厳宗元興寺、真言律宗小塔院、元興寺文化財研究所
会期:2018年9月13日(木)~11月11日(日)
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30
※展示期間が限られている作品があります。
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。
元興寺(真言律宗、奈良市中院町)
【公式サイト】https://gangoji-tera.or.jp/
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30
※公開期間が限られている仏像や建物・美術品があります。
◆マナー教室◆
◇写真撮影の前に確認! 撮影可能か、立入禁止でないか、三脚や一脚が使えるか?
◇カメラのシャッター音は出ないように、特にスマホは注意!
◇カメラのフラッシュがたかれないように設定、光や熱が美術品を傷つけます!
◇室内を見学する場合、持ち物が無意識に壁や置物に触れ傷つけてしまいます。
手荷物は預ける、リュックは前に抱える、レンズの大きい一眼レフカメラは持ち込まない、など配慮しましょう。
◇靴を脱いで室内を見学する場合、床汚れ防止のため、裸足なら靴下を持参しましょう。
◇庭を散策する場合、通路以外は立ち入り禁止!コケや芝生がふまれて死んでしまいます。
◆おすすめ交通機関◆
近鉄奈良線「近鉄奈良」駅下車、東改札口C出口から徒歩20分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間20分
JR大阪駅→JR環状線→鶴橋駅→近鉄奈良線→近鉄奈良駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には無料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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