東京国立博物館で行われていた中国近代絵画の巨匠・斉白石(せいはくせき、Qi Baishi)の展覧会が、京都国立博物館に巡回してきました。
- 東京展より展示スペースが広く通期展示が多い、京都展だけの出品作もある
- 東京展では出品されなかった京博所蔵の須磨コレクションの斉白石作品も展示
- 柔らかさ/雄大さ/緻密さを兼ね備えた斉白石の名前を強く記憶させる充実の内容
江戸時代に描かれた天皇の即位式の屏風も別室で、ほぼ同時期に公開されています。新天皇が即位する年にタイムリーな展示です。2月の京博は必見です。
京博の入口
私が展覧会を訪れたのは、中国の旧正月・春節の週の平日だったこともあり、中国人観光客の姿がとても目立ちました。斉白石は中国人ならだれでも知っている著名な画家で、異国で展示されている自国の巨匠の作品を、みな真剣なまなざしで鑑賞していました。会話する時もマナーをわきまえ、ひそひそ声で行っています。美術館で普段通りの声の大きさで会話するのは日本人だけです。
東京展はほぼ全出品作が前後期で入れ替えされていましたが、京博展は通期展示も多く、一度に鑑賞できる作品数がとても多くなっています。加えて京博展のみの出品作や、須磨コレクションの斉白石もあります。東博展よりもかなり充実した内容になっています。
展覧会の様子は、京博の公式キャラクター・トラリンのブログでも紹介されています。展覧会を担当した京博の呉研究員がトラリンを案内する形で斉白石の魅力を紹介しています。とてもわかりやすいブログになっています。
【展覧会の見どころ 公式ブログ】 「中国近代絵画の巨匠 斉白石」を見に行くリン♪エピソードⅠ
【展覧会公式サイトの画像】 墨梅図
2F-1展示室は「花木」です。「墨梅図」は、墨だけで梅を力強く描いています。冬空に力強く花を咲かせる梅の生命力が伝わってきます。1917年に描かれた初期の作品ですが、幹と花をクローズアップした構図がとてもモダンです。
【展覧会公式サイトの画像】 穀穂蝗虫図
続く2F-2展示室は「鳥獣/昆虫」です。モチーフの観察と写生を徹底して行ってきた斉白石の”超絶技巧”がわかりやすいモチーフです。円山応挙や伊藤若冲の”超絶技巧”も、同じく徹底した観察と写生に基づいています。超絶技巧に王道はなく、たゆまぬ基礎の積み重ねの賜であることがわかります。
「穀穂蝗虫図」は、バッタが穀物の穂にとまっている姿を描いています。一見バッタも穂もさっと流すように簡略化して描いているように見えますが、よく見ると触覚などにとても細かい描写がみられます。精密な描写に見せない方が、絵の印象が重くならないと考えたのでしょう。バッタが今にも飛び放ちそうな躍動感もあり、斉白石の”超絶技巧”にほれ込んでしまう名品です。前期のみ展示です。
「葡萄松鼠図」はいかにもおいしそうな実を付けたブドウの下で、リスが実を取りあう姿を描いています。リスの羽毛のモフモフ感を墨だけで表現した、こちらも”超絶技巧”です。ブドウもリスも子孫繁栄の象徴で、それを現すようにとても明るい雰囲気に仕上がっています。観る者すべてをほのぼのとさせる名品です。前期のみ展示です。
【展覧会公式サイトの画像】 桃花源図
2F-3展示室は「昆虫/魚蝦/山水」です。「桃花源図」は斉白石の表現力の多様性を垣間見ることができます。旅で見た景観や古典の山水を、雄大かつモダンに表現しています。伝統的な文人画のような高尚さよりも、暖かさを重視して表現しています。雄大な山の間に、紅葉している木を控えめに配置しています。構図のバランスも素晴らしい名品です。
2F-5展示室の須磨コレクションの斉白石も、北京画院所蔵作品に負けず劣らずの名品が揃っています。須磨弥吉郎の審美眼がわかる一室です。
平成知新館からながめる夕陽
斉白石の作品が約160億円で、2017年に北京のオークションで落札されたことが話題になりました。近年の日本人アーティストの落札額では、村上隆のフィギュア作品の約16億円が最高額です。中国における斉白石の人気と、中国人の財力には度肝を抜かれます。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
「気」を理解すると、中国絵画が楽しくなる
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京都国立博物館
日中平和友好条約締結40周年記念 特別企画
中国近代絵画の巨匠 斉白石
特別企画 斉白石 【美術館による展覧会公式サイト】
特集展示 初公開!天皇の即位図 【美術館による展覧会公式サイト】
名品ギャラリー 須磨コレクションにみる斉白石の名品 【美術館による展覧会公式サイト】
主催:京都国立博物館、北京画院、朝日新聞社
会場:平成知新館2F-1~4展示室
会期:2019年1月30日(水)~3月17日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:30~16:30(金土曜~19:30)
※2/24までの前期展示、2/26以降の後期展示で一部展示作品/場面が入れ替えされます。
※この展覧会は、2018年12月まで東京国立博物館、から巡回してきたものです。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※コレクションの常設展示も並行して行われています。
◆おすすめ交通機関◆
京都市バス「博物館三十三間堂前」下車、徒歩0分
京阪電車「七条」駅下車、3,4番出口から徒歩7分
JR「京都」駅から徒歩20分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:10分
京都駅烏丸口D1/D2バスのりば→市バス86/88/100/106/110/206/208系統→博物館三十三間堂前
【公式サイト】 アクセス案内
※休日の午前中を中心に、京都駅ではバスが満員になって乗り過ごす場合があります。
※休日の夕方を中心に、渋滞と満員乗り過ごしで、バスは平常時の倍以上時間がかかる場合があります。
※この施設には有料の駐車場があります(公道に停車した入庫待ちは不可)。
※駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。
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