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日本最大級の河井寛次郎コレクションが京都国立近代美術館で公開中 6/2まで

2019年05月11日 | 美術館・展覧会

昭和を代表する名陶工・河井寛次郎(かわいかんじろう)の、日本最大級のコレクションを所蔵する京都国立近代美術館で、そのコレクションを大々的に披露する展覧会が行われています。2016年の没後50年を機に、日本各地で行われてきた回顧展のフィナーレを飾るにふさわしい見事な展示が行われています。

  • 日本最大級の寛次郎コレクションは、高島屋重役の川勝堅一(かわかつけんいち)の寄贈
  • 寛次郎と川勝の生涯にわたる友情を軸に展覧会が構成されている。
  • 「民芸」に深く傾倒した寛次郎作品は、芸術と実用のバランスが見事でどれも生き生きとしている


寛次郎の色使いのマジックは、たゆまない科学的な研究の成果に基づいています。そんな努力が作品からはひしひしと伝わっています。上流階級が茶の湯で愛した陶磁器からは感じることができない、素朴な魅力にあふれています。



寛次郎は1890(明治23)年に島根県に生まれ、現在の東京工業大学の前身となる学校で窯業を学びました。師事して教えを乞うのではなく、学校で学んで芸風を確立した新世代の芸術家でもありました。

1921(大正10)年に高島屋で行われた展覧会に出展した際に、寛次郎は生涯の友となる2歳年下の川勝、当時の高島屋東京店の宣伝部長と出会い、意気投合します。寛次郎の陶芸活動初期の大正時代は、中国の古陶磁の名品を理想として、超絶技巧を活かしたような華麗な作品を主に制作していました。

同じ頃、これまた寛次郎の人生を大きく変える人物と出会います。早くから民芸の魅力に注目していた柳宗悦(やなぎむねよし)と濱田庄司(はまだしょうじ)です。朝鮮やイギリスの生命感あふれる陶芸品を紹介され、作風を大きく転換していくことになります。

1926(大正15)年に柳/濱田とともに発表した日本民芸美術館設立趣意書は、1936(昭和11)年になって日の目を見ます。東京・駒場に「日本民藝館」として開設され、日本と世界御民芸の魅力を発信する拠点として現在まで、内外の多く人たちから愛され続けています。


館内より、琵琶湖疎水の新緑が美しい

出展作品ほとんどが京近美の川勝コレクションで構成されており、約270点もあるかなりのボリュームです。一部作品は河井寛治郎記念館の所蔵品です。記念館は寛次郎が永らく工房&自宅として使用していた建物を展示施設にしたもので、京都の清水寺の近く・五条坂にあります。

【公式サイト】 河井寛治郎記念館

展覧会は4つの章で構成されています。序章は「川勝コレクションの名品」で、寛次郎の名品を生涯にわたって俯瞰することができます。

【国立美術館所蔵作品総合目録検索システムの画像】 「黄釉筒描花鳥文扁壺」

1952(昭和27)年「黄釉筒描花鳥文扁」は、古代ギリシアを思わせるデザインが魅力的です。芸術と実用性のバランスがとても優れています。花を生ければさぞかしエキゾチックに映えるだろうと感じられます。

【展覧会公式サイト 鑑賞ガイド.pdf】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

1962(昭和37)年「三色打薬扁壺」は、三色の釉薬を陶器の地肌に打ちつけて色彩を表現しています。洗練された琳派のようなデザインを思わせます。”打ちつけた”結果、偶然現れたものとは思えない名品です。


展示室の様子(写真撮影OK)

続く1章から3章は時代順に展示が進んで行きます。寛次郎の作風の変化をきちんと理解しながら鑑賞することができます。

【国立美術館所蔵作品総合目録検索システムの画像】 「三彩双魚文壺」

民芸に目覚める前の作品は多く印象に残ります。1922(大正11)年「三彩双魚文壺」は、中国の唐三彩に学んだ黄色を中心とした華やかな表現が行われています。若いエネルギーにあふれる頃の作品ですが、華やかな中にも器としての落ち着き感がきちんと表現されています。

【国立美術館所蔵作品総合目録検索システムの画像】 「白地草花文皿」

1925(大正14)年「白地草花文皿」は、朝鮮白磁の影響でしょうか、とてもシンプルなデザインにどこか控えめに草花を描いています。民芸の表現を模索していた時代の作品の典型ですが、控えめな花がとても印象に残ります。素朴さとダイナミックを両立させた表現が特徴的な寛次郎作品の中で、非常に稀有な印象を与えます。

【国立美術館所蔵作品総合目録検索システムの画像】 「流描き鉢」

1930(昭和5)年「流描き鉢」では、ダイナミックなデザインに目覚めたことを感じさせます。力強い流れるような紋様のこの鉢で、黒蜜のところてんを食べると、とてもおいしそうです。

1957(昭和32)年「呉須筒描陶板「手考足思」」は、若い頃から好んだ「書」を陶芸に取り入れた作品です。「手で考えて、足で思う」と書かれています。晩年の寛次郎の陶芸に対する境地を表しているのでしょう。



寛次郎の創作に影響を与えたバーナード・リーチや富本憲吉、浜田庄司の作品も展示されています。寛次郎作品と比較することで、寛次郎の作風の変化の理解を後押ししてくれます。

寛次郎や民芸の魅力をさらに高めてくれる展覧会です。新緑が美しい京都・岡崎へお出かけください。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。


展覧会に出展されなかった名品も確認できます

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<京都市左京区>
京都国立近代美術館
京都新聞創刊140年記念
川勝コレクション 鐘溪窯 陶工・河井寬次郎
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:京都国立近代美術館、京都新聞
会場:3F展示室
会期:2019年4月26日(金)~6月2日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:30~16:30(金土曜~19:30)

※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っています。
※この展覧会は、非営利かつ私的使用目的でのみ、撮影禁止作品以外の会場内の写真撮影が可能です。
 フラッシュ/三脚/自撮り棒/シャッター音と動画撮影は禁止です。



◆おすすめ交通機関◆

地下鉄東西線「東山」駅下車、1番出口から徒歩10分

JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
JR京都駅→地下鉄烏丸線→烏丸御池駅→地下鉄東西線→東山駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。
※渋滞と駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。


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