とても上質な空間を持つ塔頭が多い建仁寺にあって、霊源院(れいげんいん)もその例外ではありません。間もなく始まる京の冬の旅で公開され、寺が所蔵する見事な仏像とともに、五山文学の中心と言われた学びの場の名残を体験することができます。
- 室町時代に五山文学が栄え、建仁寺が学問面(がくもんづら)と呼ばれた中核をなした歴史ある寺
- 高僧・中巌円月(ちゅうがんえんげつ)の肖像と、その胎内仏・毘沙門天像は傑作
- 甘露庭は手入れが行き届き、土と石で表現した枯山水に見応えがある
住職はテレビ出演が多く、とても話し上手な方です。コンパクトながらも趣のある空間で、心地よく禅の文化に接することができます。
霊源院への参道
霊源院は、今回の京の冬の旅で同時に公開され、前回レポートした両足院と縁のある寺です。霊源院は両足院より半世紀ほど後、室町時代半ばの創建です。一庵一麟(いちあんいちりん)が、師で両足院を開いた龍山徳見(りゅうさんとくけん)を勧請開山(かんじょうかいざん)として開きました。
創建時は霊泉院と称していましたが、戦国時代の荒廃が安土桃山時代になって再興される際に、現在の霊源院に改めました。明治初めに廃仏毀釈で廃寺となった塔頭・妙喜庵(みょうきあん)を合併し、現在に至ります。
【霊源院公式サイトの画像】 伽藍、中巌円月坐像、毘沙門天立像
妙喜庵は、霊源院にある南北朝時代の肖像彫刻の傑作である中巌円月が開いた寺です。中巌円月は、禅宗寺院で研究された漢文学である五山文学で中心的な役割を担った高僧です。
中巌円月像は、玉眼の目の輝きが印象的です。像の表面は黒光りしていますが、驚くほどリアルな表情に造形されていることがわかります。重要文化財です。
毘沙門天立像は近年の中巌円月像の修理の際に、胎内仏として発見されました。こちらもそのリアルな表現から、一見して鎌倉時代の慶派仏師の作であることを感じさせます。きらりと光る手に持つ水晶が、造立当初の毘沙門天の荘厳さを今に伝えているようです。
本堂との距離が近い甘露庭は、土の使い方が印象的です。枯山水の庭は白砂を水に例えるのが一般的ですが、甘露庭では白砂ではなく土を水に例えています。土はあながち自然のままの地面に見られがちですが、霊源院はきちんと手入れをして、そのように見せません。草木の緑、岩の白ときちんと対比できるよう、土に水を打って生き生き感を保ち、落葉一つ落ちていないようにしています。
境内は決して大きくないですが、温かみがあって上質な空間をきちんと維持されています。住職は、普段は団体向けの座禅・写経・茶席といった禅寺体験に力を入れています。
初夏にはこの寺の名物、アジサイに似た甘茶の木の花が見頃になります。この時期にも一般向けの特別公開が行われることはあるようです。特別公開されることを待ちたいものです。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
京都への100の素朴な疑問を読売新聞が解説
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第53回 京の冬の旅
非公開文化財特別公開 ~秘められた京の美をたずねて~
建仁寺 霊源院
【主催者による特別公開公式サイト】
主催:京都市観光協会
会場:建仁寺 霊源院
会期:2019年1月10日(木)~3月18日(月)
原則休館日:会期中無休
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00
※この特別公開は定期的に行われるものではありません。
※この寺は観光目的では常時公開されていません。次の公開時期は未定です。
建仁寺 霊源院
【公式サイト】 http://www.reigenin.jp
◆おすすめ交通機関◆
京阪本線「祇園四条」駅下車、1番出口から徒歩10分
阪急京都線「河原町」駅下車、1番出口から徒歩15分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
京都駅→地下鉄烏丸線→四条駅(烏丸駅)→阪急京都線→河原町駅
【公式サイト】 アクセス案内
※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄を乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には有料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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