間もなくに迫った今年の「京の冬の旅」、建仁寺からはいずれも常時公開されていない3塔頭が参加します。その一つ両足院(りょうそくいん)では、禅寺空間の美しさを存分に味わえます。
- 等伯や若冲など、数多く伝わる各時代の著名絵師の作品が公開される
- 建物と庭の空間はとても上質、上流階級からの帰依を受け続けてきたことを感じさせる
- 神秘的な水墨画が注目される方丈の新調障壁画も初公開
庭だけでなく、建物と一体となって感じることで、その美しさがより強く印象付けられます。五感を澄ませて訪れたい寺です。
現在の両足院は、戦国時代に2つの寺が合併してできたと考えられています。南北朝時代の臨済宗の高僧・龍山徳見(りゅうさんとくけん)が開いた知足院(ちそくいん)と、室町時代半ばに開かれた旧:両足院です。
龍山徳見が元から帰国する際に、弟子として随伴してきた林浄因(りんじょういん)が、中国から2系統伝わった饅頭(まんじゅう)の製法の一つを伝えた人物です。林浄因が奈良で始めた饅頭屋が、東京の老舗・塩瀬総本家として現在も続いています。
旧:両足院は林浄因のひ孫で知足院の住職・文林寿郁(ぶんりんじゅいく)が創建しました。林家からはその後も知足院の住職を輩出し、現在の塩瀬総本家に至るまで密接な関係が続いています。両足院では、紅白饅頭を配る「饅頭祭」が毎年10月に続けられています。
現在の両足院の伽藍の多くは、京都から江戸に出て呉服商として成功した白木屋の当主・大村家による寄進で、幕末に整えられたものです。白木屋は越後屋(現:三越)、大丸屋(現:大丸)と並ぶ江戸の三代呉服商と言われましたが、昭和になると商売に陰りが出ます。戦後に東急傘下に入り、東急日本橋店となった本店も1999年に閉店、現在のコレド日本橋になっています。
大村家は江戸時代初めの創業者以来、両足院とは密接な関係が続いていました。現在両足院にある2つの茶室はいずれも、20cになって大村家から寄進されたものです。水月亭は国宝茶室・如庵の写しです。両足院の空間の上質さを見事に演出しています。
【両足院公式サイトの画像】 堂宇伽藍・茶室
京の冬の旅期間中は数多くの所蔵絵画が展示されます。長谷川等伯の「木辺童子図襖」「竹林七賢図屏風」はいずれも、とても穏やかなタッチが印象的です。等伯晩年の作品で、到達した境地の奥深さを感じさせる名品です。
伊藤若冲の「雪梅雄鶏図」は、動植栽絵を思わせます。おそらく最高級の絵具を使っています。今にのこる発色の素晴らしさは動植栽絵と同じです。展示は2/1~2/25のみです。数少ない伝・如拙作品で重文の「三教図」も必見です。展示は1/10~1/31のみです。
【両足院公式サイトの画像】 ご紹介した作品の一部が掲載されています
方丈に新調された障壁画は、中国で雪舟の再来とたたえられた、日本人道釈画家・七類堂天谿(しちるいどうてんけい)に依頼したものです。道釈画とは水墨画で道教や仏教の世界観を表現する絵です。とても神秘的に見えます。
【七類堂天谿公式サイトの画像】 建仁寺両足院本堂襖絵特別公開
両足院は、普段は座禅を中心とした禅寺体験プログラムに重点を置いて活動しています。観光目的では通常は非公開ですが、座禅会に参加すれば庭園を含めた美しい禅寺空間を味わうことができます。
初夏に書院前庭を白く彩る半夏生(はんげしょう)の花も、両足院の空間をより上質に見せてくれます。半夏生の時期にも特別公開が行われることがあります。祇園の真ん中で特別な空間をぜひ体験していてください。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
若冲の魅力を復習、マルチケースのおまけ付
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第53回 京の冬の旅
非公開文化財特別公開 ~秘められた京の美をたずねて~
建仁寺 両足院
【主催者による特別公開公式サイト】
主催:京都市観光協会
会場:建仁寺 両足院
会期:2019年1月10日(木)~3月18日(月)
原則休館日:会期中無休
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00
※会期中に一部展示作品/場面が入れ替えされます。
※京の冬の旅による特別公開は、定期的に行われるものではありません。
※この寺・堂宇は観光目的では常時公開されていません。公開は毎年の初夏(5月下旬~7月上旬頃)、
秋(11月中~下旬頃)、冬(12月中旬~1月末頃)に開催されることのある特別公開期間に限られます。
建仁寺 両足院
【公式サイト】 https://ryosokuin.com
◆おすすめ交通機関◆
京阪本線「祇園四条」駅下車、1番出口から徒歩7分
阪急京都線「河原町」駅下車、1番出口から徒歩12分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
京都駅→地下鉄烏丸線→四条駅(烏丸駅)→阪急京都線→河原町駅
【公式サイト】 アクセス案内
※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄を乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には有料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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