美の五色 bino_gosiki ~ 美しい空間,モノ,コトをリスペクト

展覧会,美術,お寺,行事,遺産,観光スポット 美しい理由を背景,歴史,人間模様からブログします

浄土真宗の原点は津・専修寺にあり_国宝の御影堂・如来堂にも驚き

2018年12月13日 | お寺・神社・特別公開

三重県の津の一身田(いっしんでん)に、京都の東西本願寺を彷彿とさせるような巨大な浄土真宗の寺があります。2017年に御影堂(みえいどう)と如来堂(にょらいどう)が国宝指定された専修寺(せんじゅじ)です。

  • 親鸞自身が開いた唯一の寺をルーツとする、浄土真宗では本願寺よりも古い伝統がある
  • 御影堂/如来堂は大きさもさることながら、美しい意匠に驚かされる
  • 周囲には江戸時代の巨大な寺内町の趣が随所にのこる


三重県では初めての建造物の国宝になりました。日本史に絶大な影響を及ぼした浄土真宗の原点のような空間が、京都ではなく三重県にのこされています。



専修寺は、真宗高田派の中心寺院として「高田本山」という通称でも親しまれており、近鉄の最寄りの駅名にもなっています。高田とは、専修寺のルーツとなった寺があるところの地名で、栃木県の真岡市にあります。

親鸞(しんらん)は、越後への流刑が赦された後、京都には戻らず関東地方へ布教に直接出向いたと考えられています。1224(元仁元)年に茨城県笠間市に開かれた稲田(いなだ)の草庵で、聖典「教行信(きょうぎょうしんしょう)の草稿をまとめます。浄土真宗全体としてこの年を開宗年としています。稲田の草庵は後に寺(現:西念寺)となり、浄土真宗のいずれの宗派にも属さない聖地としてあがめられています。

親鸞は布教のため翌1225(嘉禄元)年に高田を訪れ、「信濃善光寺から一光三尊仏を迎え、寺を開け」との夢のお告げを聞きます。これが津の専修寺のルーツで、高田の領主の帰依を受け開かれます。寺名は津と同じ専修寺で、現在も存続しています。

【公式サイト】 専修寺(真岡)


如来堂

真宗高田派は、真岡を「本寺」、津を「本山」と呼んで両方をあがめています。真岡の本寺は関東で急速に発展し、高田門徒と呼ばれる大教団になります。京都に戻った親鸞から頻繁に、本寺を託された弟子の真仏(しんぶつ)宛に手紙が届いています。結果的に国宝2点を含む親鸞直筆の書は東西両本願寺よりも多くのこされています。

戦国時代になると東海・北陸での布教が盛んになります。活動に便利な津の本山がある現在地に、高田派中興の祖・真慧(しんね)が1465年頃に無量寿院(むりょうじゅいん)を開き、拠点とします。この寺が後に改称され現在の本山となります。

真慧は本願寺派の勢力拡大に押されていた高田派を津の本山を中心に立て直します。真岡の本寺が戦火で焼失した後は、津が高田派の中心となり現在に至ります。


御影堂

【専修寺公式サイトの画像】 御影堂
【専修寺公式サイトの画像】 如来堂

国宝の御影堂は1666(寛文6)年、如来堂は1744(延享元)年の建立です。いずれも南面して並んでおり、通常は東面する真宗寺院の中では異色です。本尊を安置するのは阿弥陀堂ではなく如来堂と言います。御影堂は浄土宗のように「みえいどう」と読み、「ごえいどう」と読む他の真宗寺院とは異なります。

御影堂/如来堂ともに室内には彩色がよくのこっており、東西両本願寺に比べ創建当初の絢爛な様子を今に伝えています。畳725枚もある御影堂の巨大な室内空間は天井絵で埋め尽くされています。如来堂の、禅宗様にデザインされたとても美しい瓦ぶきの屋根も見事です。一流の大工や絵師を総動員することができた高田派の資金力は、東西本願寺に匹敵する規模だったことが想像できます。

如来堂に安置される本尊は「証拠の如来」と呼ばれ、高田派の真宗内での立ち位置を物語るエピソードが伝わっています。1465(寛正6)年、延暦寺が本願寺を破却し蓮如が越前吉崎に退くと、延暦寺は高田派にも疑いの目を向けてきます。

真慧は延暦寺を訪れ、本願寺とは全く異なる教団であることを説明し、浄土真宗の正当な一派として延暦寺に認められます。承認の”証拠”として延暦寺側から贈られたのが、本尊の阿弥陀如来です。


唐門の内部の意匠

浄土真宗は本願寺のイメージがとても強力なだけに、宗派の原点が京都にあるように思われがちです。専修寺を訪れると、決して京都だけではないことがよくわかります。親鸞自らによる建立、のこされた親鸞直筆の多さ、延暦寺との関係など、専修寺には本願寺にはない親鸞の足跡がのこされています。

本願寺は、親鸞のひ孫・覚如(かくにょ)が親鸞の墓を1321(元亨元)年に寺院化したもので、専修寺より100年ほど後になります。また京都で本願寺派より先に勢力を拡大した仏光寺派も、高田派から分かれた一派です。

境内を取り巻く寺内町(じないまち)にも江戸時代の面影がのこされています。専修寺のすぐそばに観光情報施設「一身田寺内町の館」があり、町並の概要をつかむことができます。上方や江戸からの伊勢参りの際に一身田に立ち寄る旅人も多かったようです。専修寺が昔から人々に愛されてきた寺であることがわかります。

【公式サイト】 一身田寺内町の館


唐門

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



浄土真宗の心の掛軸

________________________________

高田専修寺
【公式サイト】 http://www.senjuji.or.jp/

原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:山門5:00~17:30、御影堂6:00~15:30

※宝物館・庭園・御廟は、事前申し込みした団体のみ拝観できます。
※公開されていない仏像や建物・美術品があります。



◆おすすめ交通機関◆

JR紀勢線「一身田」駅下車、徒歩5分
近鉄名古屋線「高田本山」駅下車、徒歩20分
JR・近鉄「津」駅西口から車で10分
伊勢道「芸濃」ICから車で15分

津駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:10分
津駅→JR紀勢線→一身田駅
津駅まで近鉄特急で 大阪難波から1時間20分、近鉄名古屋から50分

【公式サイト】 アクセス案内

※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。


________________________________

→ 「美の五色」とは ~特徴と主催者について
→ 「美の五色」 サイトポリシー
→ 「美の五色」ジャンル別ページ 索引 Portal


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 三重県立美術館は企画展・常... | トップ | 三重で「浮世絵モダーン」展... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

お寺・神社・特別公開」カテゴリの最新記事