《技研03》鴻心館合気道 2017.1.3.003
・姿勢物語
武術の立ち姿(規定Ⅰの最初に学ぶ)
その正しく美しい姿勢は、基本的には
①骨盤 ②お尻 ③脊柱(脊椎)の3つによってつくられます。
ところで
姿勢、ヒトの姿勢はいつつくられたのか
それは骨盤の作られてきた歴史でもあります。
人間やサル類(1日の生活の84%は脊柱起立歩行姿勢)は、二本足で長い時間
立っていられます。
これは他の哺乳類と比べて
太古に骨盤のデザイン変更が行われてきたからです。
二本足歩行で劇的に変わらなければならない部位が「骨盤」というわけです。
こつ骨盤というのは、
下肢の一部(寛骨[かんこつ])と脊柱の一部とで構成されています。
ヒトは直立歩行するようになり、
骨盤は身体の重心が通る部位となりました。
二足歩行となったヒトは、当然ながら今までにない
バランスをとる必要が生まれてきます。
"横揺れ"です。
フラフラする身体を支える骨のシステムがないため
それを解決することになりました。
それがお尻の大殿筋。
チンパンジーやニホンザルではヒトには程遠いくらい
この大殿筋が未発達であり、横揺れの制御システムが完成されていません。
ヒト以外の動物は、大殿筋のように太く厚く発達していないのです。
骨盤と一般にはよく言われますが、
人間の姿勢には、大殿筋のような筋肉も
直接姿勢制御に関係してきています。
また二足立ち及び二足歩行では、
脊柱のデザインに特徴があります。
四肢性起立動物にはみられない大きな特徴
それがヒトの脊柱の"S字カーブ"です。
脊柱を別の表現で言えば、「身体の軸」です。
この軸を横から撮ったエックス線写真でみると
なだらかにS字を描いています(四つのカーブ)。
生体機構学的にいえば、S字カーブのうち3つのカーブが
上体の体重を10分の1まで軽減しているという事です。
しかし不思議な事ですが
生まれつきヒトはこのS字カーブを持っていなく
生まれたての赤ん坊はサルと同じような脊柱でしかなく
生後3か月を過ぎたら、7つの頸椎(けいつい)に前弯がおこりだし
生後10か月で腰がすわり
二本足で立ちあがるころに五個の腰椎で前弯が出来始めるという。
生後1年を過ぎ、二本足で歩き始めるころで、胸椎と仙尾骨(せんびこつ)の後弯がそのまま残って
6歳頃で、直立二足歩行に適した大人と同じデザインが完成し
S字状の弯曲ができあがります。
だからS字状弯曲ができていないのに幼児をいきなり立たせたら脊柱に無理が
かかるのは当然の結果です。
子どもが合気道や空手、相撲など
運動形態に適した年齢というのは
以上のように6歳くらいです。
これは、片足でケンケン飛びができるようになればがその目安になります。
なぜならば゛
それだけの重力負荷が軽減されている機構をもった証拠といえるためだからです。
以上みてきたように、基本的に姿勢は
骨盤とお尻と脊柱です。
☘ 二本足で立って、歩いている私たち人間ですが
簡単には、前にも倒れないし、後ろにも倒れたりしません。
これはどこが制御して
倒れることを防いでいるのかというと(指令は脳ですが)
その実体は"大腿骨の後ろの大腿二頭筋"などのハムストリングス
それと、前の大腿四頭筋がペアになって拮抗しているからです。
以上が姿勢(立ち姿)を理解する上での基本的な予備知識です。
🍀
直立したヒトの重心
特に重心線はどこを通って接地面(足の裏)に達しているのか
これは、私の経験上からですが
立ち姿(結立ち)で
頭頂部から
頸椎3番~腰椎4番・5番辺りを結んだ直線で
さらに骨盤やや前面を通って伸び
垂直下向きに大腿骨を通過して
ちょうど土踏まずの中央辺りに抜ける
身体の芯を貫くような一本の線。
それが重心線だと捉えています。
ヒトの頭はけっこう重いのですが
丁度、頭蓋骨が脊柱の上にバランスよくのっていている構造だからです。
頭部を動かす(重心線から外れてしまうと)と、バランスを取るために
余分なエネルギー(神経)を使うので
二足姿勢保持のシステムにスイッチがはいり無駄(武術の居着き)を生み出してしまいます。
これが"姿勢"だよ、姿勢と言われる一つの事由です。
参考文献 「ヒトの誕生」葉山杉夫 PHP新書