読書の森

流れるボート 前編



サークルのグループで湖に近いバンガローで合宿した。
木々の緑が眩しい5月だったと思う。

研修会は名目、キャンプで自炊して皆でワイワイお喋りすると言う中身だった。

遊んでばかりで、と言っても、トランプとか、花札とか、飯ごうで御飯を炊く講習とか楽しんでた。


最終日、ボートで湖を一周する事になった。
私としてはお目当の相手も来ないし、漕ぎ手は誰でも良かった。

と、一級下のガタイの大きい男の子が名乗りを上げてくれた。
他の女の子はチャッカリ好きな人をパートナーとしてる。

まあ、いいかと私はその子と(子供としか思ってない)一緒にボートに乗った。



小高い山に囲まれた湖は静かで、新緑は小気味良い程若い香りを漂わせていた。

彼は何も言わずに一心にボートを漕ぐ。
私はここに居ないあの人の事をうっとり夢想してた。

突如ボートが揺れた。
「イヒヒ!」
信じられない男の声。

それは私の後輩が出してる声だった。
「ボート流されてるんだ。気が付かないの?」

「嘘!」
相手は笑う。

後輩は「このまま流されて何処へ行くんだろうなあ。いいなぁ。面白いなあ」
能天気な事言ってる。

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