図書館へ行くのは不要不急の外出になるのでしょうか?自分にとっては未知の図書に出会う時のときめきは、乾いた心を蘇らす最大の力になります。
図書館の中は、コロナ禍も師走の慌ただしさも忘れさせる、穏やかな静寂に満ちていました。おそらく、普段以上に一層読書好きの人が集まっているからでしょう。世相のせちがらさでモヤモヤした頭の中にスーっと風が吹き抜けた感じがいたしました。
図書館員の方は普段の年の何倍か(書籍の消毒、コロナ禍防止のために)苦労が多いと思いますが、表面に決して出さずに、大好きな図書館の雰囲気を守ってくれてます。ただ感謝のみ。
さて、借りた本の中の一冊、江戸川乱歩作品集です。収められた全作既読のものですが、別世界に浸るにはもってこいの妖しい?物語ばかりです。
『断崖』、ひなびた温泉宿を離れた切り立った断崖のそばで語り合うで男と女。二人は新婚の夫婦です。一見楽し気なその会話が、実は過去の殺人の話。
江戸川乱歩は心理学にたいそう興味を抱いた人で、この作品はギリギリと迫る心理劇と言ってもいいと思います。谷崎潤一郎の名作『途上』のブロバビリティの犯罪を彷彿とさせます。それも道理で江戸川乱歩はこの作品を称賛していたそうです。
私自身も過去の創作ブログで『断崖』を参考にしたことがあります。あっと驚く展開になるのがとても面白くて、ちょっとマネしたのですが、お粗末な出来になってしまいました。
一気に読めて、かつ読みでがあって、現代でも十分通用するお話ですよ。
巣ごもりの年の瀬、お正月。
ほんのちょっぴり(マスクなどで完全武装して)外の風に当たると気持ちが変わるものです。
「明日いいことあると良いな」と自分に魔法をかけて、今日も暮れていくのです。
この翌年の追記:
『断崖』が青空文庫に載ってました^_^
青空文庫とは著作権切れに書籍をを無料で読めるネット記事です。興味ある方はどうぞ!
今回改めて読み直すと、『断崖』的アイデアを活かしたミステリーは結構多いみたいです。江戸川乱歩は人間心理のアヤをミステリー仕立てにした先駆者だったと思いました。