読書の森

角田光代 『おかえりなさい』 前編



このアンソロジーは前にも取り上げた事がある。
心に残る作品ばかりなので、その時は敢えて異色の作品を選んだ。
同性を愛する切なさを描いた松尾由美の作品をブログにしたのだ。

全編を通して「最後の恋」とは人生史上一番大切な恋を意味している。
文字通りに人生の終わりに打ち上げ花火の様に咲く恋ではない。
成る程と思っていたのは一年半前である。
若者もそれ以上の年代も心の何処かで、素敵な恋に憧れている。
そんなふうに受け止められた。

今は違う。
「これが最後のの恋、もう誰も好きになりたくない」
と思っていても、不可思議な心の魔術は待った無しで襲ってくる。
会う時の胸のときめき、言葉を交わす時の歓び、それは又この人こそ本当に待ってた人だと思わせる。
ところが、人生の落とし穴は多い。
酷く惨めで、全ての自分の恋の夢が覚め果てた気分になる事もあるだろう。
愛の神様は優しいだけでない、皮肉たっぷりの形相を見せる事もある。





今の私は、少なくとも刹那的なときめき以上のものが「最後の恋」だと思う。

角田光代の『おかえりなさい』は夫婦の最後に残る思いを印象的な形で描いている。

離婚を決意した二人。
男は込み上げる侘しさの中で、彼女と知り合う前の思い出を独白する。

それは学生時代のアルバイトの思い出である。
殆ど誰もが経験する、貧乏だが漠然とした期待に満ちた時代である。

そこで彼はある愛の形を知るのである。

読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

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