読書の森

セカンドハウス その1



東京郊外の瀟洒な住宅街に場違いに二階建ての木造アパートがある。
場違いな建物と思えるがオーナーは隣の一軒家。
老後の安心にと建てたものだ。

白い壁と赤い屋根、メルヘンティックなアパートはいかにも女性向きだった。
いかにも平和なこの界隈に、降ってわいた様な殺人事件が起きた。

被害者は30代の独身女性、美人である。
背後から鋭利な刃物で胸部を一突きにされたのが死因と見られる。

一番奇妙なのはこの部屋にはカーテン以外に何もない事である。

しかもガイシャ、当麻由比、32歳はこの淡いグリーンのカーテンを取り外すところで刺殺されていた。



玄関の鍵は施錠されていない。
由比は外出着で外から来ている。
後ろ向きの姿で殺されていた。
それにしても何もない部屋とは。

大家の谷口に聞くと彼女は「セカンドハウスとして借りたい」と言ったそうだ。

由比は大手家電メーカーの社員で、相模原市に2Kの分譲マンションを購入したばかりだ。
保証人は親戚を二人立てて来たし、身分証明はされている。
家賃は半年分前払いされて断る理由がない。

第一、由比はいかにも上品なキャリアウーマンという感じで、歳にしてはウブで生真面目な様子に谷口夫婦は良い人か来たと喜んだ程である。

しかし、自宅がありながらわざわざ借りた
理由は何故だろうか?
又何故家具を移動しなかったのか?
殺された理由はなんなのか?

若手の御代田刑事は仏の顔が忘れられない。
「私が死ぬなんて信じられない」という顔をしていた。
邪気のない綺麗な顔が哀れを誘った。

仏の無念を晴らす為にも真実を徹底的に調査しようと心に決めた。

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