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読書の森

愛しのエリー その1 再篇

以前の創作再篇してます。
よかったらご覧くださいね😊



岡本絵梨は、最近同僚の松平紘の様子が気になってならない。
絋は元々無口な人間だったが、絵梨とは気が合って軽い冗談は言える仲の筈だった。ところがひどくピリピリして表情も硬く変わり、絵梨とも殆ど口を効かなくなってしまったのである。

絵梨も絋も国営機関でAIの開発研究に携わっている新人所員だった。

絵梨は医師免許を持ち、当初は老人医療を志していた。しかし、研修医で働く内に高齢患者の数のあまりの多さに怖気付いてしまった。
これでは不定愁訴か緊急の治療を要するのか、見分けが困難である。
愕然としたのは、治療困難な患者の命を救う為には医療にも「地獄の沙汰も金次第」の現実がある事だ。
患者の惨めな死をまともに受け止められない自分は医者失格ではないか?
絵梨は思い悩んだ末に教授に相談した。

そして、非常に手先が器用な点から教授の推薦を受けて、介護用ロボットの開発に携わる事になったのである。
ロボットのどういう動きが介護に役立つか、人を活かす仕事をしたいと、絵梨は使命感に燃えていた。

紘はSE出身でロボット工学に詳しい。
非常に温和で優しい男だった。
大好きな祖母が施設に入居しているところから、これも介護ロボットに興味を持っている。
ピチピチと健康的な絵梨に比べ、スラリと伸びた体躯と上品な容貌を持っていた。

正反対の容姿と性格を持つ二人は、それゆえに余計に惹かれあったのである。



優秀で若い二人は共同でより効率的で介護機能が優れたロボットの作製に携わっている。主にロボットの動きの機能を実験している。
ただ、高度なAIロボットの開発チームには未だ入れてもらえてない。
上の機関と共に研究結果を毎週報告する事になっている。
自分の持つスキルを100パーセント出す事が常に要求されるシビアな仕事だった。

好感を持ち合う若い二人は目的が同じ事もあって毎日が楽しかった。
しかし、つい最近迄だった。

研究結果を出すまで、具体的に言えば完璧な介護用ロボットの作成までは、職場の恋はご法度になっている。
それが暗黙の規則だった。
慕い合う若い二人には、過酷な事態である。
こっそり何か伝えたくても、情報設備の完備した研究所も宿舎も監視の目と耳のある壁のようで、個人の思いを遮断した。

こんな日常がナイーブな絋の柔らかい心を蝕んだのだろうか?



読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

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