見出し画像

読書の森

占い師眉子の死 その1 再篇

嘘のような暑さが連日続きます。

せめて想像の中だけ涼しい世界にしたいと、恥ずかしくもクリスマス前の、ずっと以前の創作を添削して載せます。

ご笑覧ください。


クリスマスも近い都心の分譲マンションの一室で、人気占い師、霞眉子が死体で発見された。
死因は青酸カリによる毒死であった。
マンションの扉や窓は鍵がかかり、密室状態だった。
死亡推定時刻は12月8日午後0時から2時だった。
なお、この部屋は眉子の仕事場と居宅を兼ねたものだった。

発見されたのは翌日の午前10時である。
眉子の占いを9時半に予約していた顧客が応答が無いのを不審に思って管理人に届けたのがきっかけである。

客は大手企業の部長で株の動向を占っている。
と言うのは口実で、華やかな美貌の眉子に下心があって通っていた。

霞眉子は、最近、ネットや雑誌に占星術と易学をミックスした独自の占いを載せている。
よく読むとかなり曖昧な予想が多いが、全体にシビアな中に救いを残した点が、激変する時代に不安を覚える読者の人気を得ていた。



眉子はわざとらしい服装や変装をしない代わり、どんな場合でも自分の過去を一切匂わせる事がない、年齢は伏せている。
一見上品な夫人のように振る舞うかと思うと、くだけた少女のような笑顔を見せる時もある。

今の時代、調べようとすれば彼女の経歴を調べるのは容易い。
マスコミ関係の人間が面白半分に探ると、なんのことはない、倒産した証券会社の元社員で、歳は40歳にも満たない事が分かった。
男関係もきれいなもので、職場で知り合った男との結婚歴はあったが失業によってやむを得ず別れたと言うだけ、興味ある記事の対象にもならなかった。

霞眉子が世に出て一年半、美貌と才知を兼ね持つ占い師として、徐々に名をあげていた。


ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「創作」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事