読書の森

セカンドハウス その2



御代田は谷口夫妻から、由比が事件当日退去する予定だった事、一度もその部屋を使用しなかった事を聞いた。

「最近体調を崩して、暫く通勤に負担のかからない場所で住みたいとの事でした。
A駅から中央線で一本ですからね。相模原市からだと乗り換えが大変だそうです」

いかにも納得出来る理由である。

「しかし、何故一度も住まなかったのですか?そして2ヶ月も経たずに退去するのか?」

谷口夫妻は全く分からないという表情をした。
慣れないアパート経営をした挙句、青天の霹靂という事件で思考力がストップした様である。

利害関係から言っても夫妻が殺す訳はない。
「大丈夫ですから。報道規制をしてアパート名は極秘にしてあります。報道されません」

と言っても当然浮かぬ顔である。



由比は強姦され形跡もないし、金を盗らてもいない。
犯人は知人の線が強い。
そこで当麻由比の交友関係が徹底的に洗われた。

当麻由比は途中入社である。
技術者として開発部門に配属されていた。
男性の同僚の話によると、技術力は高いが精神的に不安定な所があって、友人は少なかったと言う。

一番職場で仲良かった磐田由美の話は全然これと異なる。
「当麻さんはお人好しと言える程、根が優しい人でした。話し出すととても面白いし」
仕事は真面目だったと言う。
又、男好きのする容貌をしながら、浮いた噂は皆無だった。

御代田はどっか引っかかるものを感じた。
不安定で優しい。
矛盾する性格。
真面目で倹約家なのに、住宅ローンを返済しながらセカンドハウス借りる矛盾である。
由比はそれほど重要ポストにいるわけではない。会社に事情を話して休暇を取ればいいだけの話ではないか?
男性から好かれる容貌をしながら、男性を意識的に避ける行動をしている。

彼女は過去の出来事で手酷いトラウマを持つのではないかと御代田は考えた。
性格に矛盾点が多いのはそのトラウマを隠す為でないだろうか?

彼女が最初に勤めた会社は入社8年目で赤字倒産した事が分かった。
かなり大手で倒産劇はマスコミの好餌となった。
御代田は、この会社で由比に何かがあったと直感的に思った。

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