ただ、彼の作品の殆どは常識から外れた意外性のあるものです。後年の色道ものなど、「この人それしか興味ないのかしら?」と思わせるものがあります。
しかし、初期の創作は人間心理のアヤを鋭くついた意外性のあるサスペンスが多い。
これに若かった私は惹かれたのです。
どちらの作品にしても奇想天外、かつ豊かな独創性に満ちてます。普通を嫌っているごとくです。
この『夜よりほかに聴くものはなし』は連作短編集で全編に八坂という人情味溢れた老刑事が登場します。
山田風太郎は医者の卵でした。
口はばったい言い方ですが、山田風太郎先生とは非常に「へそ曲がり」な作家だと私に思えてしまいます。
この『夜よりほかに聴くものはなし』は連作短編集で全編に八坂という人情味溢れた老刑事が登場します。
一見訳がわからない不思議な刑事事件(殆どが殺人)の「動機」の意外性がこの作品集のミソです。
人を殺すという許されない行為の裏に何があるか?
犯人の自白に愕然とした刑事は躊躇いながら
「それでも私はあんたに手錠をかけねばならん」と職務を遂行します。
この自白も刑事の独白も、犯人と刑事の他誰も聞く人はいない、理解してくれるものもない。
だから
「夜よりほかに聴くものはなし」なのだと思いました。
昭和37年に上梓された作品の背景は、当然とても古びていますが、そこで描く人間心理はいつの時代にも共通したものです。
愛と憎しみ、地位や金に対する飽くなき欲望、執着心と諦め、偏った道徳。
かなり痛みを感じながら読み終わりました。
山田風太郎は医者の卵でした。
しかし、その職業の持つエリート性とは全くかけ離れた履歴を持ってます。
彼は医者の家に生まれましたが、両親を次々と亡くし思春期には継父継母に育てられてます。学業優秀とは言えないけれど、ともあれ家は継がねばなりません。そこで医学校に入りましたが、戦局は厳しい。
受けた徴兵検査で丙種で不合格(虚弱体質だったから)。
当時の検査結果は甲乙丙丁でランク付けされ、甲と乙が兵役につき丙種は標準以下の体力で兵役につけない。
彼は兵役を逃れられたと喜ぶより、非常な屈辱感を味わったそうです。
おそらく、このような苦しい体験が彼の作家としての素地を作ったのでしょうか。
作家の命は作品にあり、そのプライバシーを見るのは筋違いです。
どうも最近の私の趣味は悪くなったようです。
朝食にコーン缶と牛乳でコーンスープを作りました。
朝食にコーン缶と牛乳でコーンスープを作りました。
充分満足出来ました。
山田風太郎先生はずっとスマート(悪く言えばガリガリ)でしたが、食事に興味なかったのかな?とふと思いました。あまり作品に食物の話が出てこないからです。
本を読んでも最近ろくな事考えないな、といささかガッカリします😮💨