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晴れた休日、涼子は恋人の真人と手作りのランチを楽しんでいた。
涼子の事情とは、真人との結婚が間近に迫っているからだ。
「僕は君がおかしいなんて一度も思ったことがない。それでいいじゃないか?」
「有難う!でもあなたと二人で築く生活のために病気の正体をはっきりさせたいの。
まともな人間として、あなたと暮らせるために」
「君はまともだ。頭が良すぎてそんな病気になったのだ。何も難しく考える事ないさ」
真人の知っている涼子は、昔から明るい
おしゃべりな女の子だった。
巡り会った時もそれは変わらなかった。
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そこは、大木真人のマンションのリビングキッチンだった。
涼子が言い出した話は真人にとって意味のないものに思えた。
小学校時代の友達である二人が偶然会って、一年半経つ。
真人は先日涼子にプロポーズした。
ずっと以前から好きだった女の子と一緒になろうと決心したのだ。
真人は思う。
病名にこだわる必要性はない。
要は病気だったら治せばいいのさ。
保険診療で今の薬を続け、徐々に減らせばいい。要らない様だったら、薬を止めたらどうだろうか。その時自分も一緒に医者に説明を受けよう。
それより涼子が狂うほど恋した男がいた方が心配だけど。
「私、病気になった時の恋は思い出したくないの。一生懸命になって自分が壊れるのが怖かった。その点あなたは安心だわ。とても気持ちが楽になれるもん」
涼子の言葉は、真人をかなりがっかりさせるものがあった。
「そんなもんか?僕って」
「違うのよ!あなたは特別な人なの」
涼子は頬を染めた。
「真人は、私をまともだと言ってくれるとても大切な人なの。狂気を認めるのは死ぬより苦しかった。長い長い間苦しかった」
縋り付く涼子の小さな背中を真人は優しく叩いた。
「大丈夫だよ。僕がずっと付いててやるから」