読書の森

大岡信 「新 折々のうた」 続き

あんな歌ばかりか、という感想を持たれた方も多いかもしれない。
恣意的な気持ちで選び過ぎたと反省。

付け加えさせていただきます。

『台湾万葉集』という本があるそうだ。
台湾は日清戦争以後50年間日本の支配下にあった。
この地の人は徹底的に日本語教育を受けた。
結果、堪能な日本語を操る人によって本は編まれた。

「万葉の流れこの地に留めむと生命の限り短歌詠みゆかむ」
これは日本統治を賛美するものでない。
1968年「台北歌壇」を創刊した医師が詠んだ。
短歌という文化を母国にも残すために命をかけるという意味である。

思えば、日本の漢字は当時の中国伝来のものである。
異文化は遠い昔から交流している。

文化に国境はないのである。

「夕顔の咲き匂う庭に父を待つ、少年クラブ発売の日は」
これも作者はかの地の人、1928年生まれである。
なぜか、古き日本が別の世界で匂い立っている。


「触れしバラの針柔らかし、たまゆらを胸にきざしし刺を悔い居り」

『台湾万葉集』に収められている女性の歌である。
針は相手の刺は自分の心にある。
心の繊細な優しさが胸にしみる。

なんで、人種をとやかく言うのか、歌に触れるときに不思議に思う。

読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

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