『終わりなき世に生まれつく』ほどのロマンティックな展開もなく、『そして誰もいなくなった』などの名作に比べると、地味な印象を受けます。
しかし、読後「読んで良かったな」としみじみ思える名作でありました。
上質なミステリーであると共に、人間心理の裏表を非常に鋭くついているからです。
この作品の1番特徴的なのは、ある計画殺人の経過から先に描かれている事です。
通常、事件が起こって推理する形のミステリーですね。
事件が起きる瞬間を0時間と言う訳です。
この作品は0時間迄の人間劇が巧みに描かれています。誰が誰を葬る目的でどんな方法を試みるのか?
意図を掴もうとして読んでいると五里霧中でございます
ストーリーはありふれた三角関係に見える幕開けです。
スポーツマンで金持ちでイケメンの男と、聡明だが明るさに欠けた最初の妻と、思慮に欠けるが美しく明るい二度目の妻。
不思議なのは男が二人の妻の仲をとりもとうとしている事です。
この三人が男の伯母にあたる金持ちの老婦人の邸に同宿してから、アクシデントが続出いたします。果たして何が起きるのでしょうか?
正直言って途中で筋書きが読めた感のあるこの小説、「つまらないな、何でこれがベストテン入り」と投げたくなった後、私は物凄い勘違いを犯していた事が分かりました(これがクリスティの仕掛けたトリックです)。
心理学の専門家でないのに、クリスティは学者以上に人間心理の深い闇を知り抜いた人だと思い知らされる作品でした。
書店に並ぶ人気の本、ご時世を痛感するものであります。
書店に並ぶ人気の本、ご時世を痛感するものであります。
過去の50年は大昔、もはや歴史上の事なのだと今の世との価値観の違いを痛感した次第であります。
時があんまり速く過ぎないで欲しいです。
読後、市販のカボチャプリンをお皿にあけていただきました。気持ち高級感がありました。