読書の森

幼馴染 (続き)



「私も一方的に自分の事ばかり言ってた」
奈美江は反省した。
パソコン用語をペラペラ喋り、大学時代の男友達の話をした。

小夜子は自分が35の時、母を亡くしている。短命の家系らしい。
実の母を殆ど理想化していて、母を愚痴る奈美江をワガママで贅沢と思うのだろう。

小夜子が見合いで結婚した夫は実直だが、仕事に恵まれなかった。最後の職場の小さな会社を勤め上げ、ホッとしたところに、90歳の姑を預かる話が来た。

義兄嫁が無理やり押し付けたのだった。

奈美江の回想と同じ記憶を小夜子は追っている。
甘い厚切りの羊羹に香ばしいお茶を入れながら。
肥っても身体に悪くても止められない。
こちらこそストレスだらけだと思う。



90歳でありながら、姑はすこぶるくちが達者で気が強かった。
冷房をかけた部屋で窓を開け、「この方が空気が通る」と小憎らしい顔をする。

気が強い小夜子は夫の存在を忘れ、母の世話を怠った。
早く死ねばいいと思った。

半年後、姑は急速に痴呆に向かった。
夜間大きな声で喚き散らす。
「嫁が殺す。殺される!」
そのうち、排泄物を壁になすりつけ出す。
毎日が地獄だった。

夫はただオロオロするだけ。
小夜子は血相変えて、後始末をした。

姑は自分の身体を苛む様に暴れ、力尽きて死んだ。

読んでいただきありがとうございました。

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