読書の森

井上寿一 『戦前昭和の社会』最終章



折から、欧州では独裁者ヒットラーが華々しく登場した。
彼の取る電撃戦は悉く成功した。

今語られるヒットラーの姿ではなく、いかにも知性と威厳に満ちた写真が、当時の日本の新聞に載っている。

近衛内閣の目指す日本は一国一党政治である。
つまりファシズムが理想というから怖い。
ファシズムに於いて、自国が一番であり、その下で人民を潤すという。
他民族を排し、属国化する選民的な考えは非常に危険だと思う。


近衛は当時最新のメディアであるラジオでファシズムの宣伝をしたという。

さらに一党政治を実現する為、大政翼賛会を作った。
この党の暴走が日本を敗戦に導くのである。



ヒットラーと手を結べば、必ずや国益になると幻想を抱いた日本は日独伊三国同盟を結ぶ。

実はこの段階で日本はアメリカを敵にするつもりは無かった。
甘いとしか思えない。

アメリカにとってドイツは敵である。
それと同盟を結ぶ日本も当然敵だ。
又、日本が貪欲にアジアの利権を貪るのも許し難い。
南京事件以来、日本が中韓に対する暴虐は許し難いと、アメリカは勿論国際社会は見たのである。

日本にとっては資源の乏しい自国を富ませる為に、形振り構わぬ行動だった。
何故なら神国日本は特別と思い込んでいたからだ。

アメリカは対日戦争を決意した。
日本は経済封鎖を受けたのだ。

近衛は自らの甘い見通しを悟り、退陣した。
政権は軍部出身の東条英機が取った。
経済封鎖に遭い、厳しい資材不足が日本を襲った。
追い詰められた東条政権はついに真珠湾攻撃の奇襲作戦に出た。

後はご存知の様に、敗戦の泥沼に落ちて行くのである。


本著は奇しくも東日本大震災の直前、2011年2月に上梓されている。

現代社会への大きな警告として受け止めたい。
尚、著者は極めて淡々と客観的に史実を述べている。
その解釈はあくまでも私感である。

読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

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