読書の森

分かって欲しい



郊外のクリニックはこじんまりしていて、居心地が良かった。
素朴な感じの受け付けの女性は優しいし、涼子は来て良かったと思った。

涼子はもうじき40歳になる。
大学病院の事務員だった。
何故自分の病院にかからないのか。
それには深い訳があった。

今日訪れたのは心療内科のクリニックである。
涼子は精神病の烙印を押された身であったから。
その病名は、医者を替えて全く変わったが、治療は続けている。

今も涼子は月に一度遠く離れた病院に通い、決まった問答を交わし、薬を貰う。自費である。かなりの額になる。
それでも、勤め先に知られたくないために、払う。
薬が、ごく少量に減ってぐっすり休めるし、穏やかでいられる。



20代に、両親の不和と自分の恋愛問題で悩み、眠れない夜を重ねた挙句、涼子は狂気に陥った。

頭の中が異常に冴えざえとなり、奇妙な発想が起こって、友人の誰彼に電話を掛けまくり、果ては家を飛び出し、あらぬ事を口走って夜の巷を彷徨った。

捕まって診察された病院で、涼子の発した言葉が支離滅裂だったために、最初の病名がついた。

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