読書の森

殺したい人 その8



6月の晴れた日曜日、英美はウキウキと身支度を整え、出かける用意をした。
綺麗にお化粧して、金のイヤリングをつける。
青いスーツは新品のようだ。

「あなた、ちょっと出かけてきます。お昼は冷凍庫にピザ入ってるから食べてくれる」
久人は大分着古した自分の背広を思う。
亭主にボロ着せて、自分は贅沢な服装をする女だ。
いつものイライラが爆発した。

「ふうん、おしゃれして。何か?浩太って男とデートか?」

「何言うのよ。あなた。浩太なんて」
英美は青ざめた。

「お前の携帯に同窓会の写真が載ってた。嬉しそうに男と肩寄せやがって。
あのトンボみたいな、にやけた男が浩太か?」



「何よ、トンボって」
「トンボみたいに細くって中身がないって事」

英美の目が釣り上がった。
「望月浩太さんは優秀な人です。
自分で起業して30代で社長になったの。
私たちとても仲良しだったけど、若過ぎて一緒になれなかった」

「だからと言って不倫出来るのか?」

「私の携帯を見るなんて。あなた、最低ね!私たちそんな仲じゃないの。
あなたと違って望月さんは中身のある人よ」

読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

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