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大学の授業で、忘れられない英文学の作品がある。
と言っても、教授の名前も作品名も著者名も記憶の彼方にある。
いくら語学は苦手だったとはいえ、その内容だけを覚えてるのは、インチキではないかと思う。
思うが忘れられない、それは正確な粗筋よりも、その作品に込めた思いがひしひしと伝わる気がするからだ。
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それは大人の恋の話だった。
南海の島で、それぞれ家庭のある男女が出会った。
一目見て好感を持ち合うが自制心を保っている。
故あって二人だけになったホテルの一室、長く降りしきる雨に閉じ込められた二人は、ふとしたきっかけで愛し合ってしまう。
その後の地獄も描かれていた。
温厚な雰囲気の教授の好みは意外にも禁断の愛だった。
学生たちはそんな事を考えもしないで、結構易しい英文かなと思ってたのだ。