読書の森

『戦争中の暮らしの記録』(犬を連れて)後編



この主婦は東京山手で比較的裕福な暮らしをしていた。

昭和19年、空襲は内地を次々と襲った。
不安の中で「飼い犬はなるべく供出するように」という上からのお達しだ。

空襲を逃れる為、一家は疎開する事にした。
ところが、犬は東京から連れ出してはいけないという条例がある。

「家族同然の犬を見殺しに出来るか」彼女は一番大きいリュックに成田山のお札をくくり付けた犬を入れて、背負った。

そして最終列車の発車間際に、上野駅の改札口を駆け抜けた。
車掌に見つからないよう列車の連結器に座り込む。
犬を入れたリュックをしっかり持って、トイレへも行かずその場でしたと言うから凄い。



やっと疎開先の古里についた一家は、又も犬の受難に遭う。

食肉になる犬狩が三日間行われたのだ。
飼い犬は必ず供出という御触である。

村人は犬の肉をおかずに酒盛りをしてると言う。
肉は貴重なタンパク源である。

彼女は又知恵を絞る。
人の少ない村の事で三日間が過ぎれば、注意もそらせるだろう。
犬の鳴く声を出させないために、彼に睡眠薬を飲ませて眠らせ、物置きに隠した。

こうして愛犬は命を救われた。

戦後どんな生活が待っていたか知らないが、この奥さんの愛するものの命を守り抜いた根性には驚く。

犬に限らない。
愛するものを守る為に、知恵と工夫と持てるものを使う、こんな根っ子の愛情を失いたくない。

読んでいただき心から感謝いたします。

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