韓国ドラマは哲学的感性を刺激する

韓国ドラマ、IT・デジタルなこと、AIなどと並んで哲学に関する事柄や、よろずこの世界の出来事について書き綴ります

はやぶさの快挙再び…

2020-12-06 16:23:02 | エッセイ
 はやぶさがまたも快挙を遂げました。はやぶさ2は日本時間今日の早朝に無事小惑星のサンプルを格納したカプセルを地球に投下し、次の11年間のミッションに旅立って行きました。

 この過程をネットの生中継でみていて感じたことがありました。それは、はやぶさ2の雄姿ではなく管制センターのスタッフたちの喜びようでした。ここのところ暗いニュース、いやなニュース、不快なニュースばかり目にすることが多かったのですが、はやぶさ2の快挙でそのいやな気持ちも吹っ飛んで元気まで出てきました。

 科学技術の発展、いや、もっと広く学問全体の発展というのはこういう過程を経て一歩一歩進んでいくものだなということを、喜び合う管制センターのスタッフたちをみていてつくづく思いました。

 数日前にネットで不快な記事を目にしました。それは、今回のはやぶさのミッションと中国の月探査のミッションを比較して、どちらが優秀か述べた中国の記事でした。

 その記事からは、中国の探査機の優位性をそのサイズ(はやぶさの10倍もあるらしい)や、地球に軟着陸する帰還方法を理由に主張しており、現在の日本の技術では小惑星探査くらいがちょうどいいと述べ、はやぶさプロジェクトを小馬鹿にしたような上から目線の論調が感じられました。

 この記事を読んで非常にいやな気分になりました。月に探査船を送り込んで月面の試料を採取して地球に戻るなんて、50年も前に直接人間が行ってやっていることなのに、何をそんな偉そうにするんだという気持ちがわいてきました。

 6年間に52億キロメートルも飛行して正確に地球に戻ってくるはやぶさと、1か月くらいの間に、たかだか38万キロメートルくらいしか離れていない月を往復することを同じ土俵で比べないでほしいと思いました。

 先ほど、学問の進歩は小さなことを一歩一歩積み上げて達成されると言いましたが、まさに今回の日本のはやぶさプロジェクトが行っているのは、これなのです。一般の人間にはどこにあるんだかさっぱりわからない小惑星へ往復することなど、一見派手さはないかもしれませんが、このことにより宇宙飛行や宇宙の成り立ちについてのたくさんの知識や技術が得られるわけです。

 しかし、中国の記事の論調からはそのような地道な努力に対する敬意が全く感じられず、目先の経済的利益や国威発揚の意図しか感じられませんでした。未だ中国が科学技術の分野でノーベル賞を取れない理由がこれなのです。

 おそらく、中国にはノーベル賞級の成果を出せる科学者、技術者はたくさんいるはずですが、そのような人たちが本来の実力を発揮できるような環境こそが一番大切なことだと感じています。

 現代では何事も経済性の面からの評価を免れることはできませんが、明治以来の日本の為政者はおおむね科学技術に対して理解を示し、その結果が現在の日本の科学力に結びついているわけです。

 そのような地道な過程をあなどり、馬鹿にして、結果だけ得られればいいと思うような考え方は学問研究を滅ぼすものだと思います。現在の状況は、日本といえどもその方向に向かいつつあると感じているのは、私だけでしょうか。

 目先の利益・結果を得ることだけを考え、そこに至る過程の価値を認めないこと。今の世の中にそのような空気が蔓延していますが、何とかそのような空気に惑わされないようにして生きていくことが、われわれに一番求められていることだと思います。

 今回のはやぶさ2のミッションにかかわった人すべてが、そのことを誇りに思い、この成果を受け継いだ次の世代の人々から感謝されることを私は心から祈っています。科学技術、ひいては学問の発展の意義はここにしかないのですから。


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