bon voyage!

ボディボーダー・ママののんびりオーストラリアライフ

DATSUN MAGIC

2004-08-14 | Weblog
オーストラリアで乗っていた愛車のダットソンちゃん。

車種は名前通り、日産ダットソンのパルサーで、
2ドアのハッチバックタイプ。
1982年型のおじいちゃんカーだ。

めちゃめちゃ古いにも関わらず、外観・内観ともに驚く程キレイだった。
きっとその前の主人は優しいおじいちゃんで、
大切に使われていたんだろうなぁ~って思わせるような
渋い趣きを持っていた。

本当はいかつくフォードファルコンか三菱マグマのワゴンを
買って、音楽をガンガン掛けながら、友達大勢でサーフィンに
行くのを想像していた私。
ディーラーにこの車を紹介された時は、
「私の話、聞いてた?」ってちょっとキレそうになった。
でもいざ乗ってみると、何ともいえない安心感を覚えたのだ。
あの絶妙な狭さと、時代を感じさせるシンプルな機能。
テーププレイヤーはもちろん、FMラジオすらないステレオには
脱帽した。 
ボンネットを開けると、オモチャのような小さなエンジン。
これで本当に走るの??って不安になるような、
可愛らしい部品が並んでた。

今考えると、なんであの車を買ったのか良く分からない。
本来の条件をひとつも満たしていないではないか…!
私はダットソン・マジックに掛かってたのだろうか。

唯一思い当たる理由がひとつ。
実は私はペーパードライバーで、車に関しては全くの初心者だった。
洒落た機能がごちゃごちゃ付いている車よりも、むしろこういう
小型のベーシックな車の方が私には向いている気がしたのだ。

とにかく、散々悩んだ挙句 1500AUドル(約12万円)でお買い上げ。
AMラジオから雑音混じりに聞こえる古い歌謡曲をBGMに、
ゴールドコーストの夜のハイウエイを走っていると、80年代に
タイムスリップしたような錯覚に陥った。
人様を乗せる自信はなかったので、
「ここで死ぬかも知れないんだなぁ…」って独りで命の尊さを
噛み締めながら、小さなハンドルを強く握り締めた。

結局、この車は4ヶ月しか持たなかった。
買った当初は調子良かったダットソンちゃんだが、
ゴールドコーストからバイロンベイに引っ越す際の
長距離移動(…とは言ってもたかが1時間の距離)を
きっかけに、不調を来し始めた。

一時停止する度にエンストしそうになったり、エンジンが
急にかからなくなったり、ドアのロックが壊れたり、排気管に
穴(?)が開いたり… 何回修理に出しても、新たな問題が
生まれる、本当にやっかいな車だった。

しかし、そんなときに救ってくれたのがオージーの優しさ。
私がボンネットの前でボー然と立ち尽くしているのを見て、
必ず誰かが「大丈夫?」と天使の一声を掛けてくれた。
そして古い車を扱うのに慣れているのか、すぐに問題箇所を
見つけては道具箱を取り出し、チャチャっと応急処置を施してくれた。
迷惑とは分かりつつも、その優しさに甘え、限界までこの車を
乗り続けていた私。本当に情けない話だ。

最終的には買値の3分の1でディーラーと手を打ち、
ダットソンちゃんにお別れを告げた。
今も彼はオーストラリアのどこかで、誰かを乗せているのだろうか。
それとも使える部品だけ解体され、廃車になってしまっただろうか。
(果たしてダットソンの部品に需要があるかどうかは疑問だけど)

色々大変だったけれど、おかげで最高に自由で冒険に満ちた
4ヶ月間を過ごさせてもらった。車なしでは絶対に
出会えなかった沢山の美しい風景と、楽しい出来事。
頼りない車だったけど、その存在だけでもなぜかとても心強かった。
かけがえのない時間を共有した、大切な旅友。

ダットソンちゃん、本当にお疲れ様でした☆