北岳(3,193m)・間ノ岳(3,190m) (つづき)
標高を上げていくと、鳳凰三山が大きくなってきました。
南アルプスの山の中では、北岳や仙丈、甲斐駒に比べると高さは低いですが、白い花崗岩が稜線一帯に散りばめられ、存在感があります。
北岳の大岩壁、”北岳バットレス”が目前に迫ります。南アルプスを代表する岩場です。ハイマツの紅葉が始まったばかりで、緑色とオレンジ色のコントラストが絶妙でした。穂高や槍ヶ岳のようにギザギザしていないものの、一つの大きな岩の塊の力は凄まじいものがあります。頂上は、直線距離ではすぐそこまで来ているはずなのに、いっこうに近づきません。大きな山です。北岳は果てしない大きさを支えるために、3,193mの高さを必要としたのに違いありません。そのうえ、何千年あるいは何万年先にはさらに高くなり、富士山をも超えるのではという、未完成で未知の迫力すら感じられるのです。これは南アルプスの他の山々、あるいは北アルプスの山々には全くないものでした。
「 ~ ほとんどの建築において、未完成の姿の方がすばらしい。今日われわれの周辺でもさまざまのプロジェクトが進められているが、工事中のイメージには何か無条件の迫力があり、夢が生きている。
考えてみれば、芸術はすべて未完だ。社会的約束に従って、芸術家は一応完成という形をとる。だがそれはある意味で一種の妥協点ではないか。
人間存在自体がそうなのだ。 ~」
(岡本太郎『美の世界旅行』(新潮社))
登山道は、木製の梯子をいくつも越えていくように作られています。「八本歯のコル」まで来ると、明日登る予定の間ノ岳、遠くには富士山が姿を見せました。間ノ岳は大きさでは北岳を上回っています。富士山には、雪はまだないようでした。甲斐駒ヶ岳も見えましたが、距離があるせいか、中央線の電車から見るのよりも迫力は減じていました。
(登頂:2017年9月下旬) (つづく)