雲取山(2,017m)・七ツ石山(1,757m)・鷹ノ巣山(1,737m)
「 雲取山は大東京都一円を俯瞰している。逆に都からこの山を眺めることを知っている人は、あまり多くはあるまい。空のきれいに晴れた日、私はよく近くの高所へ山を見に出かけるが、まず眼の行くのはこの東京都の最高峰である。それは殊更顕著な特徴を持たないが、力のあるどっしりした山容を示している。東京からは秩父連嶺を縦に見るために、奥秩父の高峰群は打ち重なって容易に見分けがたいが、雲取だけはハッキリと大きく高く現われる。 ~」(深田久弥『日本百名山』(新潮社版))
日本の最高峰が富士山なら、東京都の最高峰は雲取山です。
雲取山の頂上は、東京・埼玉・山梨の三県境にあたります。同じ東京都でも、都心からは最も離れた場所にそびえています。また、埼玉の両神山のような、分かりやすい形ではありません。
その雲取山が都心から見えるというのを、山村正光氏の『車窓の山旅 中央線から見える山』を読んで知った時は、とても意外な感じがしました。そこには、
「 こんな大展望を手中にしている東京の人は何とめぐまれていることか。 」(『車窓の山旅 中央線から見える山』(山村正光著・実業之日本社))
という一文もあります。
雲取山への登山口となる鴨沢バス停は、東京と山梨の境目を越えて、山梨県に入ったばかりの場所にあります。
奥多摩駅を発車した西東京バスは、平日なのに登山客で満員でしたが、駅から離れるにつれ乗客は少しずつ減っていきました。奥多摩にはいろいろな登山口から登れる、いろいろな山があります。
バスの中で、財布にお札が1枚も入っていないのに気付きました。
地図(「山と高原地図」の2011年版)を見ると、鴨沢バス停と同じ場所に郵便マークが出ています。
そこで引き出せばいいかと考えてバスを降りると、あるはずの郵便局がありません。山小屋の宿泊代が払えないと思うと焦りました。
後で調べると、この郵便局(鴨沢簡易郵便局)は2005年に閉鎖されていたことが分かりました。
高さ3,000mにも迫る北アルプスの穂高岳山荘で、クレジットカードが使えた時はびっくりしましたが、普通山小屋ではカードは使えないし、ATMもありません。
鴨沢までの途中に、もう一つ郵便マークを見つけ、引き返してみました。国道411号線が湖辺を急カーブするところにある郵便局は、今度は実在していました。
時間をロスしてしまいましたが、引き返すにしても、奥多摩駅まで全部引き返さずに済んだのは助かったし、反対方向のバスがすぐ来たのも助かりました。
日村沢バス停の、味のある手書きの標識。郵便局はこのそばにありました。
舗装された急坂から始まります。舗装路が終わり、杉林に入り、バス停から30分登ると、駐車場に出ます。
駐車場も舗装されていませんが、車が7台止まっていました。
ここからは少し傾斜が緩くなります。
登山道の途中に大きな廃屋があります。雨戸の木目が真っ黒になっています。
ここまで(歩いて)郵便配達が来ていた時代もあったのかなと思います。
何とかすれ違えるほどの細さですが、歩きやすい道です。ところどころ眺望もあり、奥多摩の山らしく開放的でした。
(登頂:2012年11月上旬) (つづく)