「~ 「まもなく国道と交差する踏切がありますが、そこが一三七五メートル、国鉄の最高地点です。線路の左側に標識が立っております」
最高地点を通過すると、ディーゼルカーは吐息をするかのようにエンジンを停め、惰性で下りはじめる。
「まもなく野辺山に着きます。野辺山は国鉄のもっとも高い所にある駅でありまして、海抜一三四五メートル六七センチです。一三四五六七。二だけ抜けております」
これで車掌の小海線案内は終ったらしく、野辺山を出ると検札をはじめた。酒呑童子を想わせる中年の車掌であった。 ~」
(『最長片道切符の旅』宮脇俊三(新潮文庫))
小淵沢駅を出発した小海線はすぐに進行方向を180度変え、八ヶ岳の東麓をどんどん登って行きます。有名な1,375mの最高地点は、清里を過ぎて山梨県から長野県へ入ったすぐの場所です。
その近くに「野辺山SLランド」がありました。黒部峡谷鉄道と同じ、762ミリの幅「ナローゲージ」の線路を、小さなSLが走っていました。JRの最高地点よりも、さらに高い場所を走っていたはずです。
ユニークな庭園鉄道は、外周をSLが走り、内側にはゴーカート用の道路や「スイスレーティッシュ鉄道」もありました。スイスの方は遊園地サイズの真っ赤な電気機関車で、自分で操縦することができました。
362番のプレートが付いたSLはベルギー製とのこと。ディーゼル発電機で発電した電気を使ってボイラーを動かし、蒸気を作り出すといいます。車体の後ろに大きな囲いがありますが、これは後から改造で付け足されたものです。何となく重油のにおいがしていました。さながら「電気式蒸気機関車」というところです。客車はオープン式のものと温室風のものと、2両つないでいました。運賃は1人300円でした。
小さなSL鉄道には踏切もありました。とても急なカーブを曲がっていたことや、線路沿いに背の高いコスモスが多かったのを思い出します。
牧歌的な雰囲気がとても好きでしたが、残念ながら2018年8月で閉園してしまいました。その跡に行くのはとても寂しい感じがして、まだ行ったことはありません。